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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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決して淡くない思い出 1

小学4年生での「事件」が全ての始まりだった。

 小学4年生のクラス替えで雫と別のクラスになった駿は、1年で最も憂鬱な1日を迎えていた。


 身体測定。


 10歳くらいだと、女子と男子の背丈はほとんど変わらない。


 生まれた時から雫のほうが背が高いことが、駿の唯一のコンプレックスである。

 走るのが速いとか、絵が上手いとか、面白い事が言えるとか、そんなことは駿にとってはどうでも良いのだ。


ーせめてオレが4月生まれで、雫が3月生まれなら、きっとオレのほうが背が高かったのに…。いくらオレのほうが先に生まれたと言っても、30日しか変わらないなんて…。


 2クラスしかない4年生は、体育館で男女一緒に測定することになっている。


 女子は体重を気にするので、担当の先生は小さな声で本人に数値を告げてくれる。

 それに引き換え、駿が気にする身長は遠慮なしに普通の声量で告知されるため、周りに丸聞えなのだ。


「132.5センチ」


 どうせ各々が持っている個人カードに記入するのだから、黙って書けば良いものを、いちいち声に出されるから気が滅入った。


ー去年の数値より5.1センチ伸びてる…。


 駿が記入された個人カードを見ていると、突然後ろで「スゲェ!」と騒ぎが起こった。


「149.2センチ」


 駿が振り返ると、測定器で得意げに鼻を擦るシュウがいる。


「3年の時から()()()6センチしか伸びてないや」

ー嫌なヤツ!・・・オレは知ってるんだ。オマエの体重の欄に「軽度肥満」って書かれていることを。


 そうなのである。

 シュウは背が学年で一番高いが、少々ポッチャリ体型なのだ。

 ただ、その所為で威圧感があり、誰も反発できないのだった。


 体重測定を終えた雫が身長測定の列に並びに来た。

 すれ違う際、彼女と視線が合った駿はとっさに視線を逸らす。

 雫にはそんな駿の態度で、「ああ、身長のこと聞かれたくないんだね」と敏感に察知した。

 彼が自分より背が低いことを気にしていると知っているので、絶対に話題にしない。


「142.9センチ」

ーああ、やっぱりオレより10.4センチも高い。


 雫の身長だけは聞き逃すまいと全神経を集中させて拾った音は、無常にも昨年の身長差より更に開いた数値だった。


 身長順に並んだ時、ほぼ最前の駿と後方の雫。

 それだけでプライドがズタズタにされるのに、あのシュウが雫に「俺、149.1センチ」と自慢げに伝えるものだから、ズタズタになったプライドを跡形もなく焼き尽くされた気分になった。


「ふうん。そうなんだ。でも、ちょっと痩せたほうが良いんじゃない?」


 シュウのことが怖くて、絶対に誰も口にしないその台詞を雫はさらりと言う。

 いつも大人しく、口ごもるともぞもぞする性格なのに、こういう時ははっきり言えるのだ。


 雫以外の人間に同じことを言われるとキレるだろうに、彼女に言われると、「エヘヘ、やっぱりぃ?」と鼻の下を伸ばしていた。


 要するに、シュウは雫が好きなのだ。


 だから、何を言われても腹が立たない。

 きっとわざと足を踏まれても笑っているだろう。


 駿は、雫がシュウに言ったそのひと言で、この場で感じていたモヤモヤが吹き飛ぶほど爽やかになった。


 ただ、備考欄に「もう少し体重を増やしましょう」と書かれたことは少々不満ではあった。


          *          *


 クラス替えがあってひと月もすると、新しい友達で新しいグループが出来ていた。

 雫もマユミやキョウコと行動を共にしている。


 昼休みの掃除の時間、3人でゴミ捨てに歩いていると、女子が大好物の「恋バナ」が始まった。


「ねえ、雫は好きな男子いるの?」


 この手の話題に上手く返せるほど口達者でない雫は、もじもじしてしまう。


「えっと・・・うん」


 この時、さらりと「いないよ」と言っておけば、後々ややこしい事態にならずに済んだのに、それが出来ないほど雫は大人しい性格だった。


「「えっ!!誰??」」


 当然、マユミもキョウコも食いついてくる。

 それぞれ持っているゴミ箱を地面に置いて、雫の顔を覗き込んできた。


「誰にも言わないから教えて!」

「私たちだけの秘密だから!」


 この年代に限らず、この手の話題で「誰にも言わない」「私たちの秘密」が全く信用できないことは、世の中全ての人類が知っている。

 それなのに、雫はその言葉を信じて想う人物の名を口にしてしまった。


「しゅ・・・」


 その1音を耳にしたマユミが「シュウ?・・・えっ!シュウくんが好きなんだ!」と早とちりして騒ぎ始め、キョウコと2人でキャッキャ言い出した。


「あ、じゃなくて・・・しゅん・・・」


 もはや雫の訂正は彼女たちには届かない。


 誰から見ても、雫が自分より背が低くて痩せた男子を好きになるとは思えなかったのだ。


 雫はモテた。



「大河内屋の美人おかみさん」と言われる母とよく似た彼女は、少し垂れ気味な大きな瞳と、すっきり通った鼻筋。

 小振りな口が、いかにも「やまとなでしこ」を思わせる美人である。

 幼稚園の頃から和服でお茶会に出席していたので所作も美しい。

 この年で大人の集いに参加している美少女は、皆の憧れとなるのは当然のことだった。


 そんな彼女が駿を選ぶなど、おそらく学校中の誰も、駿本人も想像していないだろう。


 「雫はシュウが好き」と言う話は「本人が言った」と言質付きで、翌日には皆が知っている状態になってしまった。


 やはり、「誰にも言わない」「私たちの秘密」はあっさり裏切られたのであった。


 既に「違う」と否定できる雰囲気でもなく、「人のうわさも75日」を信じて、その日を待つことにした。


 ところが、「雫が好きなのはシュウ」を耳にして、心中穏やかでない人物が2名いたのだ。

 好きだと言われた「シュウ」と、雫のことが好きな「駿」である。


 幸い、シュウも駿も隣のクラスなので、雫は休み時間以外に学校で顔を合わさずに済んだ。

この後21時10分に第3話が公開されます。


読んだ後に、「あ~あ」と思ってやってください。


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