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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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禁止された覚えはない 3

 あの夜以降も当然のように、駿は雫の家に来て夕食を食べている。


「ただいまぁ~」


 まるで自宅に帰ってきたかのように、勝手に上がり込んで手を洗い、食卓に座っているのだ。


 帰り際に「朝も迎えに来てもいい?」と、調子に乗って口から出そうになるが、「夕食も食べに来てほしくない」と言われるのが一番怖くて、すんでのところで言葉を飲み込んで家路に就くのだ。


 「雫の家で夕食を食べる権利」だけは、失うわけにいかない。


 雫のほうも、駿と食べる夕食の時間を楽しみにしているのだが、今の彼には雫の気持ちを読むスキルがなかった。



 そして、湊高校との試合の話はあれ以来、夕食の場でも出なかったので、「応援には来てくれてないだろう」と諦めていた。

 それで試合前はよくよく周りを見ることもしなかったのだ。


 まさか、応援席の後方にある木の陰から見ていただなんて…。



 試合は4対1で東川北学園の勝利。


 湊高校のキーパーが交代するまでは、1対1で競ったのだが、後半15分であの「シュウ」に代わった。


 駿はシュウを見た途端に燻っていた闘志に火が点き、追加の3点のうちの2点を決めたのだ。


ー雫に見せたかったな。


 もちろん見ていた。

 しっかり見て、握り締めた両手を上げて、飛び跳ねて喜んだ。


 ベンチから「ナイス駿!」とチームメイトが叫ぶ中、ひときわ黄色い声で彼の名を呼ぶ美玲が見える。

 マネージャーが喜ぶレベルを明らかに越えている。

 誰が見ても、彼氏に送る声援だ。

 おまけに両手を上げて駿のタオルを大きく振り回しているのだ。


 ゴールを決めた駿が、そんな美玲に向かって投げキスをしたように見えた。

 (実際はチームメイトにしたのだが…)

 ここに応援に来た時点で、この光景を見ることになるだろう、とは思っていたが、実際見るとキツイ。


 その後追加された1点は、コーナーキックからのボールを無回転でゴールネットを揺らした芸術的なもの。

 その瞬間を丁度スマホで撮ることができた。


「奇跡だ!」


 思わず声に出してしまった。


「来て良かった。来た甲斐があったわ」


 木陰から距離があるので少々小さいが、しっかり駿が映っている。

 満足げに頷いて、早速、保存用「駿」のファイルに入れた。


 試合は数分のアディショナルタイムが過ぎると、80分間の戦いの終了を告げるホイッスルが吹かれた。


 雫は美玲や知世子、そして駿に見つからないように、そそくさと湊高校から姿を消したのだった。


 両校の挨拶が終わると、駿はグラウンドを見まわして雫の姿を探したが、彼女は既に駅への道を歩いていた。


ーやっぱり来なかったのか。


 試合のたびに応援に駆け付けてくれるわけではないが、今回は来て欲しかった。

 大介とつき合っていると聞いても、幼馴染みの「応援に来て」という頼みを無下にされるとは思わなかったのだ。


 「はあー」と深い溜め息がひとつ。


 気を取り直して汗を拭いているところにシュウがやって来た。


「あのシュート、凄かったですね」

「はあ?」


 憧れの眼差しで駿を見ている。


ーコイツ、オレが誰だかわからないのか?

「いやあ、今日は調子が良かったから…」


 シュウより10㎝は目の位置が高い駿は優越感を覚えた。


「久賀くん。また試合できるのを楽しみにしています」

ーおいおい、オレの名前、知ってるのに気付かないのか?忘れてるのか?


 そう、忘れているのだ。

 仮に思い出したとしても、まさか、あのチビの「久賀俊」が目の前にいる自分より体躯が良いイケメンと同一人物だとは思わなかったのだ。


ーオレは、シュウにとって記憶にも残らない程度の存在か?


 ペコリと頭を下げてシュウは自分のベンチに行ってしまった。


 てっきり、「お前、メッチャかっこ良くなったなぁ」って言われるに違いないと思っていたのに。


「ねえ、駿もラーメン食べに行くでしょ?」


 一旦学校に戻った後、ラーメン屋に行く人数を確認する美玲。

 手にはクリップボードを抱えて名前を記入している。


「いや、オレは帰る」


 今夜は雫の家で晩御飯を食べることにしていた。

 応援には来てもらえなかったが、雫に今日のゴールを報告したい。

 それに、雫だって聞きたいだろう。


「ええーっ!3点も決めたヒーローがいない祝勝会って考えられないんですけどぉ?」


 明ら様な不満の表情で駿の腕を掴む。


「ねぇ、行こうよぉ」


 美玲お得意の上目遣いアンド甘えた声。


「今日はゴメン」


 美玲の手を優しく払って微笑んだ。


 ラーメン屋に行くのは祝勝会のためではない。

 これから対外試合が何度もあるのに、勝つたびに祝勝会で食事に行っていたら、それだけで部員は小遣いがなくなってしまう。

 どうせ負ければ、反省会と題目を変えて食事に行こうとするだろう。

 底なしの財布を持つ美玲に合わせていたら、駿だってたまったもんじゃない。


 だから、誰かがはっきり「行かない」と言うのが良いし、その役目は最多ゴールを決めた駿が最適なのだ。


 案の定、駿が「行かない」と言ったら、ほとんどの部員が「今日は帰る」と言い、結局ラーメン屋に行くのは数名しかいなかった。


 駿が行かないとわかった時点ですっかりテンションが下がった美玲であったが、言い出しっぺであるため、渋々行くことになってしまったのだった。


          *          *



次回、雫と大介の行動に、駿はふたたび…。

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