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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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痛いのはお互いサマ 6

 いわゆる壁ドンである。


「雫。北原先輩とつき合うって本当かよ」

ー壁ドンって愛の告白の時にされて、女子がときめくヤツじゃなかったっけ?


 幼馴染みのすっかり逞しくなった腕を眺める。


ー小学生頃までは痩せてて、わたしより小さかったのになぁ。

「こんなことで嘘ついたりしないよ」


 あまり追及されたくない雫は、さらりと返してとっとと台所から出ようとするが、駿は腕をどかす気がないらしい。


「ねえ、もう用事は済んだんだから、腕をどけてくれない?」


 雫が顎を上げて挑発するように睨むが、20センチ上から見下ろす駿のほうが少し有利だ。


「ああ、用事って弁当を届けてくれたこと?・・・ありがと」


 テーブルに置かれた弁当箱をちらっと横目で見るが、体勢を変えないものだから、雫も動けない。

 再び見下ろされている。


ーこれは尋問よね?

「雫の用事は済んだかもしれないけど、オレのほうはまだ聞きたいことがあるから、このまま帰すわけにはいかない」


 長いつき合いだからわかる。

 こうなったら自分が納得する返事を聞くまでまで、雫が解放されることはないのだ。

 「ふうっ」と半ば観念したような溜め息をひとつ吐いた。


「聞きたいことって、北原先輩のこと?」


 冷たく良い放った時、たまたま駿の唇に目が釘付けになってしまった。


ーこの唇で美玲とキスしたクセに!キスしたクセに!!


 お腹の底がグツグツ煮えてくるのがわかる。


「そう。なんで?いつから?どういう経緯で?そもそも本気なのか?」

「いつから?・・・映画に行った少し前くらい。どういう経緯?・・・部活終わりに和菓子を食べながら話してるうちに告白された。

 それで…ああ、本気なのか?当たり前じゃん!高2にもなって、好きじゃなきゃ、つき合わないでしょ?」


 雫は片方の口角を上げて睨み返した。

 駿は目を細めて眉間に皺を寄せる。


ーああ、怒ってるんだ。

「幼馴染みってことで直々に報告してあげたんだから、もういいでしょ?」


 下唇を噛む駿。

 次の言葉を探しているのだろう。


ーこれ、相当怒ってるなぁ。


 彼の「怒りのスイッチ」がどこにあるかを知り尽くしている雫は、思ったとおりに駿が怒ってくれて「してやったり」の気分だった。


「なあ、雫…」


 その駿の言葉に被さるように「雫、帰るよー」という母の声が玄関から聞こえて来た。


「わかったぁ。・・・ということで、明日の朝から迎えに来ないでね」


 きっぱり突き放すように言うと、その台詞に驚いた駿の一瞬の隙を突いて、逞しく伸びている腕の下潜って「壁ドン」から逃れることに成功した。


「雫。つき合うの、やめとけよ」


 台所を出る直前に投げかけられたその言葉に、雫もカチン、そしてプッチンとキレた。


「報告してあげたんだから、筋は通したでしょ?()()()はね!駿はわたしに報告してないんだから!」


 本当はもっと言いたいことはあったが、睨みつけてそれだけ言うと、プイッと玄関で待つ母のもとへ急いだ。


 もう駿は追って来なかった。


「オレの報告って何だよ…」


 全く意味がわからない言葉を残されて戸惑うしかなかった。



 冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターのペットボトルを取り出しているところに、雫たちを見送った母が戻って来た。


「駿、あなた、彼女できたんだって?」


 いきなり突拍子もないことを言ってきた母を見る。


「はあ~?」


 息子のその一瞬の反応で全てを理解した母が、深い溜め息を吐いた。


「そんなんだから、生徒会長…前生徒会長に雫ちゃんを取られるのよ」

ー今、そんなこと言うかなぁ。


 たった今、雫から「恋人宣言」されたところに、追い討ちをかけるような母に苛立つ。


「取られたら、取り返すさ!ただ、先輩は大学受験を控えてるから、今は…傍で様子見てるだけ」


 どんどん音量が尻つぼみになる。


「わかってると思うけど、母さん、援護射撃はしないわよ。ここで雫ちゃんを取り返せないような、情けない息子に育てた覚え、ないんだからね」

「んなこと、わかってるって!!」


 何のアイデアも浮かばない駿は、怒鳴り返すことしかできなかった。



 帰りの車内、駿の母に貰ったイチゴが良い香りを漂わせている。


「駿くん、元気そうで良かったね」

「うん。明後日から学校行けるんだって」

「そう。じゃあ、雫が1人で学校行くのもあと1日だけってことね。良かったじゃない」

「ううん。駿はもう、迎えに来ないよ。来ないで、って言ったから」


 正面を見たまま、母は目を見開く。


「それは、もしかして駿くんに彼女ができたから?それとも、雫に彼氏ができたから?」


 母の耳に大介とのことが入っていることに驚いた。


「おばさんに聞いたの?」

「前の生徒会長さんだって?北原歯科の息子さんよね?」

「そう」

「でも、凄いイケメンでモテるのに、彼女を作らないことで有名だ、って言ってなかった?」

ーよく覚えてるなぁ。


 去年、雫がクラス委員をしていた時の生徒会長だった大介には、「絶対に彼女を作らない」という噂があった。

 陸上部長距離のエースで、他校にファンクラブが作られるほど人気があり、何人もの女子から「つき合ってください」と言われていたのに、だ。


 その理由は誰も知らなかった。

 「特定の女子とつき合ったら、その子がいじめられるからじゃない?」と言うのが、大多数が出した結論だった。


 その話を1度、母にしたことがある。


「そうだよ。先輩は推薦を狙ってて、勉強に集中したいから『彼女役』をして欲しい、って言ってきたの。陸上部を引退したから、もう女子から騒がれることは減るだろうけど、念のために、ってね」

「それで引き受けた…つまり、本当の彼氏彼女じゃないってこと?」

「うん。でも、これはナイショね!駿にもおばさんにもよ。駿には彼女もいるんだから、絶対よ」


 何度も「ナイショ」を繰り返して母に口止めを約束させた。


ーこりゃあ、駿くん、大変だろうなあ。


 こちらの母も「口出ししない」という駿の母親との約束を守ることを決めている。


 ただ、大介とつき合うことになった、本当の理由は別にあるのだ。


 それを明かすつもりは毛頭ない。

 

次回、駿のいない朝に堪えられない雫が取った行動は?

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