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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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痛いのはお互いサマ 5

「駿、起きてる?」


 軽くコンコンとノックをして声をかける。 

 ドアを開けたのは駿だ。


「入れよ」


 表情のない顔で雫を招き入れ、いつものように駿がベッドに、雫がデスクチェアに座った。


ーあれ?もしかして機嫌悪いのかな?それとも、まだ具合が良くない?


 表情は暗いが、包帯を巻いたりしていないので、怪我の具合は判断できない。


「頭にボールが当たったんだって?意識を失って救急車で運ばれたって聞いたから、心配したんだよ。もう大丈夫なの?」

「ああ。多分、大丈夫。昨日、心配して来てくれたんだろ?なのに、何で帰った?」


 やはり、美玲は自分が追い返したことを話してないのだ。

 だから駿は、病院に来たものの、大したことがないと聞いたので帰ったのだろう、くらいに思っているようである。


ーアナタの彼女さんが会わせてくれませんでした。


 喉まで出かかったが、そんな嫉妬めいたことはプライドが許さない。

 胸に異物が詰まったような感じがするが、平静を装う。


「薬で寝てるって聞いたから」

「で、帰ったわけ?寝てても傍にいてやろう、とは思わなかった?」


 呆れて駿の顔を「はあ?」という思いで見る。


ー美玲が傍にいるのに、わたしがいられるわけないじゃない。


 それでもまだ、辛うじて冷静を保つ。


「あら、寝顔なら子どもの頃から見てるし。別に珍しくないもん」

「救急車で運ばれたんだぞ」

「そうだってね」


 雫には、なぜ駿が不機嫌なのかがわからない。

 腹が立つなら追い返された自分のほうだろう、と思うのに。

 それでも、やはり駿が救急車で運ばれるほどの怪我をしたのだから、心配ではある。


「脳震盪を起こしたって聞いたけど、倒れた時に身体のどこかをぶつけたり、怪我したりしなかった?」


 雫が本心から心配している表情は、駿の怒りのボルテージを一気に下げた。


「うん。膝を擦りむいたくらいで、上手く倒れたみたい」


 そう言って、パジャマのズボンの裾を上げると、血が滲んで赤くなった膝頭が現れた。


「こういう傷って痛いよね。明日あたり、青タンになってそう」


 雫が膝に顔を近づけてしげしげと眺める。


「せめて電話くらいしてくれても良かったんじゃないか?メッセージで『具合どう?』もないなんて、冷たすぎないか?」


 ここで美玲の話を持ち出したくない雫は、膝の傷に目を向けたまま「ゴメン、そうすべきだったね」と答えた。


 ヴー。ヴー。


 ベッドに置かれた駿のスマホから通話の着信音が鳴った。

 その画面には「遠山美玲」。

 駿は雫を気にすることなく、当然のようにスマホを手に取った。


「うん。退院してきた。昨日は遅くまで付き添ってくれてありがとう。

 母さんからも礼を言うように言われてる。・・・うん。明日、もう1日学校は休むよ。部活は来週から。・・・うん」


 この場に自分がいることを美玲に知られたくない。

 それに何よりも、2人の会話など聞きたくないのだ。


 無言で「じゃあ」と軽く手を振って、逃げるようにドアに向かった。


「おい、ちょっとー」


 そんな雫を呼び止めようとしたが、振り返りもせずドアを閉めた。

 恋人同士だと分かっていても、駿が美玲と仲良く話している所なんか絶対に見たくない。


 今顔を合わせれば、美玲との電話の内容を聞かされるかも知れないと思って、急いで応接間にいる母の所に行った。


「お母さん、帰ろ」

「そうね。駿くんも退院してきたところだから、長居しちゃ悪いわね。帰る前に、これを台所にいる駿くんのお母さんに渡してきてくれる?」


 そう言って母が、持って来た紙袋から弁当箱を取り出して雫に渡した。

 その弁当箱には駿の好物である「山菜おこわ」がたっぷり詰められているのだ。

 ちょうど台所から出てきた駿の母親に渡そうとしたが、彼女の手には別の袋がぶら下がっていた。

 きっと、見舞いに来た礼に持って帰らせようとしているものだろう。


 「これ、テーブルに置いとくね」と言って、入れ違いに台所に入る。


 慌てて階段を降りてくる足音が聞えた。


「駿くん。大丈夫?心配したのよ」

「あ、ありがとうございます。でも大したことないんで…。雫は?」


 どうやら雫を追いかけて応接間に来たのだろう。

 雫の母と話している。

 「雫ちゃんなら、台所にいるよ」と言う駿の母親の声。


 これ以上、彼に用はない。

 それなのに、台所に来た駿に出口を塞がれてしまった。


「雫。ちょっと座れよ」


 その言葉をスルーする雫。


「じゃあ、お大事にね」


 そう言って駿の脇を通り過ぎようとすると、ドンッと筋肉質の腕が壁に突かれたのである。


いよいよ冒頭のシーンです。

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