5話 誘拐の影と強化されるギフト
◆リリアナの誘拐、村の動揺◆
「大変だーー!!、リリアナが野盗に触られた! いや攫われた」
門番のハロルドが大慌てで村長の家に飛び込んできた。
現在僕は家が出来るまでは一時的に村長の家に間借りしている。早く家が欲しいが、ラピスが「坊ちゃまは領主なのですから半端なものだといけません」と言って絶賛豪邸を建築中だ。村長の冷たい視線が日に日に鋭くなっているのは気のせいじゃない。
「落ち着けハロルド、領主様の前だぞ。でリリアナが……どこを触られたって?」
スパーーン!!
村長の頭に、奥さんの箒が炸裂した。ツッコミのキレが良すぎる。
「あんた!リリちゃんが危ないって時に何言ってるのさ」
「いっいや、こういう時こそ笑いが必要かと……」
「何か言ったかい!?」
「いえ、なにも…」
奥さんの剣幕に村長は床に正座して、完全に沈黙。とりあえず放っておいて、ハロルドに話を聞く。
「で?リリアナって子が誘拐されたって?」
「そっそうです、草原で薬草を採っていたら、突然やらしい…じゃないあやしい男2人がリリアナを攫って行ったんだ、です」
「その男たちに心当たりは?」
「最近街道沿いの砦跡に住み着いた野盗が怪しいと睨んでいる。…ます」
その時、石壁の向こうから野盗の下っ端らしき男が大声で叫んできた。
「リリアナってガキの命が惜しいなら、貯め込んだ魔晶石を寄越しやがれ」
「リリアナは無事なのか!」
「俺たちも鬼じゃねえ、魔晶石さえ出せば、ガキは返してやる。明日また来るから、それまでに用意しとけ!」
そう言い残して、野盗は森へと消えていった。
◆揺れる村、揺るがぬ決意◆
野盗の狙いは魔晶石で間違いない。だが、村長は村の子供1人より魔晶石の方が大事だと言い出した。
僕の感覚だと人の命の方が重いが、平民には子供の命よりも魔晶石の方が価値が高いのだろう。
「村長、あなたはリリアナを見殺しにすると言うのか」
「冷静に考えろ。魔晶石を渡したからってリリアナを無事に帰すとは限らんぞ。むしろ奴らは味を占めて更に要求してくるに決まっている」
「渡さなきゃ、確実に殺される! あんた、魔晶石が惜しいだけだろ!」
「ちっ違う、魔晶石が惜しいんじゃない…」
「じゃあ、渡せばいいだろ!」
「…わかった、取ってくる」
村人たちに詰め寄られ、村長はしぶしぶ立ち上がった。
部屋の中には重苦しい空気が漂っている。今はリリアナが無事に帰って来る事を祈るだけだ。
「ところで村長はどこに魔晶石を取りに行ったの?」
「それが誰も知らないんです。村の外に1人で行くことはないからどこかに隠していると思うけど…」
そんな事を話していると、木の箱を大事に抱えた村長が帰って来た。
「領主様、まだ売ってない魔晶石はこれで全部です」
「ご苦労様、とりあえず女の子を無事に取り戻さないとね」
「リリアナの事、ヨロシクお願いします」
箱を開けると、青紫に光る魔晶石がひとつ混ざっていた。この魔晶石は危険だと説明してはずだけど、…僕が村長を見ると、彼は目を逸らした。
「村長、これ……どういうこと?」
「ひいぃ、ほっ本当です、捨てるのは勿体ないとか、あとで売ってお金にしようとかそんな事は…祠に隠していれば安全かな?と思って…とっとにかく魔晶石はこれだけです」
「…祠?あの、亡者が出るって噂の場所?」
「はい、村人が亡者を見たと言った所にある祠です。ちょうど亡者の噂で誰も近づかなかったので隠すにはちょうど良かったので…へへ」
亡者騒ぎで誰も近づかないから魔晶石を隠した?いやむしろ逆で青紫の魔晶石に亡者が寄ってきたんじゃなかな?それならあそこだけに亡者が寄って来る理由も説明がつく。
「この魔晶石も一緒に渡そう。もし亡者が野盗に反応してくれたら、混乱に乗じてリリアナを助けられるかもしれない」
◆ラピスの決意とギフトの強化◆
「リックさん、実は野盗との戦いで助けてほしいんだけど」
「…すまん坊ちゃん、俺たちはプロだ。だからギルドを通さない依頼は受けない事にしてる」
「ギルド…そっかぁ、それなら無理だよね…」
ギルドを通さない依頼は確かに良くない。思いついた作戦が暗礁に乗り上げてしまった。しかし他の所から立候補があった。
「あの坊っちゃま、女の子の救出、私にお任せ頂けますか?」
「ラピスに?まあ野盗なんかに負けないと思うけど、心配だなぁ」
「坊っちゃまが私のことを心配してくださるなんて…(感動)、…では1つお願いを聞いてくれますか?」
ラピスのいつに無く真剣な顔に緊張する。お給料とか僕にできる事かな?覚悟を決めるとそのお願いを聞いてみる。
「何かあれば何でも言ってくれない?」
「あっあの、1回添い寝…じゃなくて! これなんですが」
ラピスがギフトを発動して、双剣を構えた。刃が淡く光り、切れ味が増しているのが分かる。
「この前、盾持ちパーティの何とかと一緒になんかしてましたよね」
「あれはノーリスさんのギフトの魔力を御神木から繋がる様にしただけだよ…」
「狡いです! 坊っちゃまにギフトをさわって貰うのは私が1番にと思っていたのに」
ラピスの目がノーリスさんを凄い目つきで射貫いていた。まるで生涯の仇をやっと見つけたかのようだった。
◆魔力視の進化◆
「実はこの間のノーリスさんと御神木の魔力を操作した時に僕のギフトが進化したんだ」
「坊ちゃまのギフトが進化…ですか?」
「うん、進化したギフトは上位スキル ギフト再構築だ。了承した相手のギフトを作り変える事が出来るんだ 」
「ギフトを作り変える…」
ギフトは人の一生を左右するほどのものだ、それを作りかえるのはその人の一生を変えるともいえる。
「坊ちゃま、ギフト再構築の初めては是非、私にお願いします」
「…はぁ、わかったよ。じゃぁラピスのギフト【宵闇切断】を作り直すね」
ラピスの正面に座って最後にもう一度確認しておくことにした。ノーリスさんの時はくすぐった
かったと言ってたが痛みもなかったというし大丈夫だろう。
それに断ったら何を言われるか…、それ以前にノーリスさんが”絶対やってあげて”、と目で訴えかけてきた。
「前もって言っておくけど、僕の事を全面的に信用してくれないと激痛が走るよ」
「坊っちゃまの事を疑うなんて天地がひっくり返ってもあり得ません。心から親愛…いえ信頼してます」
【魔力視】を発動する。ラピスの魔力に混ざっていく自分の魔力を意識して細く長くしていく。ラピスの魔力はいうなれば細いが、強靭な鋭利な剣のようだ、それを僕の魔力で更に細く、より強靭に作り変えていく。
「……」
「坊っちゃまの魔力が……私の中に…あ、そんな奥まで……」
(いや、そんな反応されたらこっちが恥ずかしいんだけど)
「…あ!もっもう…ああっ…」
終わった頃には部屋の中には気まずい空気が流れていた。だれも一言も発しない。
ギフトの作り変えを見ていた盾の守護者の皆んなもラピスを凝視していた。そこ!こっちに聞こえないようにひそひそ話さないで、気になるじゃないか。
ラピスのギフト【宵闇切断】はより鋭利に切れ味が増して【絶対切断】と生まれ変わっていた。
「ふう、終わったよ。試しに切れ味を試して…」
「試し切りなら俺がやろう!」
リックさんが場の空気を変えようと剣を構えてラピスの前に立った。さすがリーダー!このいたたまれない空気をなんとかして。
双剣を構え、ラピスが生まれ変わったギフト【絶対切断】を発動する。漆黒の刃が出現して双剣に重なる。数合打ち合うつもりでリックはラピスが構えた双剣に打ちおろすと、手応えもなくあっけなく剣を振り抜いてしまった。
「ラピスさん、避けたら切れ味が増したか分からないじゃないか」
「…リック、自分の剣を見てみろ」
ディアーズが驚いた顔でリックに剣を見て見ろと言った。
リックが自分の剣を見ると剣身が半ばからスッパリと切れており、あまりの切れ味から剣がぶつかった感覚がなかったのだ。
「すっ凄え!どうなってるんだ?切れ味がいいとかそういうレベルじゃねえぞ」
「どうだ、坊っちゃまのギフトの素晴らしさが分かったか」
ラピスが我が事のように自慢した。
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