18話 ラホ村 旅館
◆村のギフト遊び◆
フローネが村人にギフトを授けてからというもの、村では「今日はどんなギフトを発動した?」が挨拶代わりになった。
互いのギフトを組み合わせて遊ぶ子どもたちも多く、時には大人が驚くような効果が生まれることもある。
その日、村の外れでは三人の女の子が集まって“ギフト遊び”をしていた。
外から見れば、どう見てもままごとだが、当人たちは真剣そのものだ。
-セメリオ-
幼い頃に両親を亡くし、叔父夫婦の家に身を寄せていたが、実子が生まれてからは家の中で肩身が狭くなった。
そのせいか、彼女はいつも「自分の居場所」を欲していた。
そんな想いから授かったギフトが―― 小さな世界
小さくても“自分だけの家”を作れるギフト。
セメリオにとっては宝物のような力だった。
-エビ―バ-
小さい頃から「自分の周りの物は自分で作る!」が口癖。
机もベッドも、子どもが作ったとは思えないほどの完成度で、家族はよく驚かされた。
そんな彼女が授かったギフトは―― 調度品創造
思い描いた家具をそのまま具現化する、完全に趣味全開のギフト。
-バネーラ-
超がつく潔癖症。真冬でも川で体を洗うほどで、村の男の子たちが覗きに来るため、家族が衝立を立ててやるのが日課だった。
そんな彼女が授かったギフトは―― 浄化の小船
一人用の浴槽を作り、そこに注がれるお湯は体調が良くなる“特別なお湯”。
潔癖症が極まって授かったギフトだった。
そんな三人が集まって“性格全開”でギフトを使っての遊び―
「ねえねえ、エビ―バちゃん、バネーラちゃん!」
セメリオが目を輝かせて言う。
「私がお家つくるから、中に入れるお風呂とかテーブルとか作って!」
「ふふん、部屋の中は私に任せてちょうだい。二人が驚くようなベッドにテーブルに……あ、ついでにドレッサーも置いちゃおうかしら」
エビ―バはすでに脳内で家具の配置を始めている。
「私は豪華なお風呂!絶対必要だよね!男の子が覗けないように、一家に一つはお風呂は絶対条件!」
バネーラは真剣そのものだ。
三人は声を揃えてギフトを発動する――三人は胸の前で手を重ね、くるりと回ってスカートをふわりと揺らし決めポーズを取った。
「小さな世界!」
「調度品創造!」
「浄化の小船!」
すると―― 小さいながらも、驚くほど立派な家が完成した。
外壁は木目まで丁寧に再現され、窓枠には小さな彫刻が施されている。屋根瓦は一枚一枚がきちんと重なり玄関の扉には小さな取っ手がつき、押せばちゃんと開く。
木製のベッドは脚の曲線まで美しく、布団にはふわふわの綿が詰まっている。テーブルは小さいのに天板が滑らかで、脚には繊細な装飾が彫られていた。
そしてお風呂場は、まさに小さな癒しの空間だった。浴槽は、白く輝き、触れるとほんのり温かい。
注がれる湯は淡く光り、湯気からは心地よい香りが漂う。
ただし、小さかった。小さすぎた。
子どもならギリギリ入れるが、大人は頭がつっかえては入れない。
しかし、大人たちはその完成度に目を丸くした。
装飾も機能も十分、いや一流だった。
まさに“ミニチュアの傑作”だった。
◆セメリオの心の傷◆
だが――
「なんだよこれ、ちっさ!入れねーじゃん!」
「“ごっこ遊び”の家だって変なの」
村の男の子たちが笑いながら言い放った。
それを聞いた瞬間、セメリオの顔が曇る。
「もう……絶対に作らない」
まるで“自分の居場所を否定されたと言わんばかりに、そう言った。
エビ―バとバネーラが慌てて止める。
「セメリオちゃん、そんなこと言わないでよ!」
「そうだよ!馬鹿な男の子たちなんか気にする必要ないって!」
だがセメリオは首を振る。
「だれも住めない小さいお家なんて意味ない……もう作らない」
その日以来、セメリオはすっかり元気をなくしてしまった。声をかけられても返事はかろうじて聞こえるくらい小さかった。
なんとかセメリオを元気にしたいと、エビ―バとバネーラが、僕のところへ相談に来た。
「なら、僕が君たちのギフトを作り変えて――ひぅ!」」
そう言いかけた瞬間、ラピスの殺気が部屋を満たした。
「ひっ……!」
「やっ……!」
ラピスはにっこりと微笑んでいた。
けれど、顔は笑っているけど目はまったく笑っていない。
「………坊ちゃま、子ども相手に何かおっしゃいましたか?」
それを見た僕は慌てて手を振る。
「じょ、冗談だよ!冗談!」
◆アランの作戦◆
そこで僕は、作戦を立てた。まずエビ―バとバネーラのギフトを“能力模倣”して部屋の調度品と、お風呂場を作る。そこで、それらを入れる”家”がないと騒ぎセメリオにもギフトを貸してとお願いする。
まずはエビ―バとバネーラのギフトで調度品と、お風呂場を作り出した。
子どもの魔力では小さな家具しか作れなかったが、僕の魔力なら――
「調度品創造&浄化の小船!」
キャビネットは磨き上げられた表面には一点の曇りもなく、扉には細かな金の象嵌が施されていた。ソファや椅子は深い色の布地で包まれ、座れば身体を優しく受け止める。縫い目はひとつひとつ丁寧で、布の模様は職人が何日もかけて作ったと思うほどだ。
浴場いや、サイズ的に大浴場の扉を開けた瞬間、ふわりと湯気が頬を撫でた。大きな湯船は、まるで湖かと思うほどに広い。湯面には天井の灯りが揺らめきながら映り込み、お湯は乳白色で腰痛、肩こりに効果がありそうだ。
僕は、わざと肩をすくめてみせながら言った。
「ああ、しまった。こんな立派なもの作ったのに……肝心の“建物”がどこにもないなんて!
その言葉を聞いて、セメリオは何か言いたげに唇を噛む。
しかしあと一歩が踏み出せないようだ。
そこにエビ―バとバネーラが畳みかけた。
「セメリオちゃん、このままだとベッドもテーブルも外に置きっぱなしになってダメになっちゃうよ!」
「お風呂もお湯が冷めちゃうし、なにより!外に置いたら男の子がまた覗きに来るよ!!私、もう覗かれるのは嫌よ!!」
「お願い、領主さまにセメリオちゃんのギフト貸してあげて!」
「そうだよセメリオちゃんの力が必要なの!」
二人の必死の訴えに、セメリオはついに頷いた。
◆老舗旅館 爆誕◆
「……わかった。エビ―バちゃんとバネーラちゃんにお願いされたら断れないね」
セメリオのギフトを能力模倣して僕は小さな世界を発動した。
「小さな世界」
すると――
そこに現れたのは、まるで百年の歴史を背負ってきたかのような堂々たる老舗旅館だった。
深い木目の外壁は落ち着いた艶を放ち、長い年月を経たような重厚感がある。
瓦屋根は緩やかな曲線を描き、夕陽を受けて鈍い金色に輝いていた。
玄関には立派な梁と太い柱が構え、暖簾が風に揺れている。
まるで昔からそこにあったかのように、旅館は村の景色に自然に溶け込んでいた。
こうして、三人のギフト(を借りて僕)から生まれた建物は、ラホ村初の旅館となった。
…視界の端には”能力模倣 3/5” の文字が光っていた。
「おかしいな…」
アランはこれまでの検証で”能力模倣”は他の人のギフトを借りるものだと思っていた。借りる時間は一時間、マリンやラピスに借りた時は2つカウントが増えていた。
しかし、今回はセメリオたちから3つ借りたのにカウントは0→3に変わったのだ。
「マリンやラピスのギフトは2つづつカウントが増えたけど今回は1つづつ増えた?それに/5って5までしかダメってことなのかな?」
その上限が何を基準に決まっているのか、成長で増えるのか、あるいは別の条件があるのかは、まだ解っていない。
アランにとって魔力視は、まだ謎の多いギフトだった。
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