17話 農家の三銃士
◆ラホ村を支える三兄弟◆
ラホ村には有名な三人の兄がいる、彼らは人呼んで「農家の三銃士」と呼ばれていた。
長男ダビド — 力仕事が得意で村の周囲に広がる雑草だらけの土地や石の多い地面を、鍬一本で耕し、畑として新しい畑を切り開いていく。
次男セシリオ — 水路や道具の整備に長けており、器用で頭の回転も速い。畑のインフラ周りや、村人の道具なんかを開発して日々農作業を充実させている
三男フェルナ — 作っている農作物の品質改良や、より収穫量の多い作物を目指して、種の選別や交配を試していた。
ダビドが畑を作り、セシリオが畑を整え、フェルナが畑を育てる。
この三つが揃って初めて、ラホ村の豊かな農業が成り立っていた。三人は互いの仕事を尊敬し合い、村人からも頼りにされていた。
ある日の夕暮れ、三人は畑の端に腰を下ろし、今日の作業について語り合っていた。
ダビドが鍬を肩に担ぎながら、いつもの調子で言った。
「今年も土の具合は悪くねぇな。よし、もうちょい畑広げるか! まだまだいけるだろ、ラホ村はよ!」
「おう、任せとけ。水路もバッチリ調整したからな。どの畑も水が行き渡ってるはずだ。俺の計算に狂いはない!」
二人がやたら元気に盛り上がる中、フェルナは少し離れたところで苗を見つめたまま、ため息をひとつ。
「……うん、まぁ……そうだね……」
ダビドが眉をひそめる。
「おいフェルナ、なんだその“元気ありません”みたいな声は。腹でも痛ぇのか?」
「お前が静かだと逆に不安になるんだよな。何かあったのか?」
フェルナは慌てて手を振る。
「いや、なんでもないよ。ただ……ちょっと考えごと……」
「考えごとなんて畑耕してりゃ吹っ飛ぶだろ! ほら、元気出せ!」
「そうそう。困ったら言えよ? 俺ら三銃士だろ。細けぇことは気にすんなって。」
フェルナは苦笑いしながらも、どこか言いづらそうに視線をそらした。
兄たちは自分の畑作業に絶対の自信を持っており、「ギフト」を授けて貰わなくてもなんの問題もないと思っていた。
「おいセシリオ、さっきから静かだな。何かあったのか?」
セシリオは少し迷った末に、ぽつりと打ち明けた。
「……最近、作物の病気を見抜けなくて。僕のせいで畑をダメにしかけた、兄さんたちみたいに自信が持てないんだ。」
ダビドが豪快に笑い、フェルナも肩を叩く。
「細けぇこと気にすんな!」
「困ったら俺たちが助けてやる。三銃士だろ?」
二人は本気で励ましてくれた。
だがセシリオの胸の奥の不安は消えなかった。
兄貴たちは「ギフト」に頼らない主義だ。
三人とも生まれ持った力で村を盛り立てて行くべきだと信じている。
◆ギフトを求めてフローネのもとへ◆
フェルナは、収穫を終えたばかりの畑の前で肩を落としていた。
せっかく手塩にかけて育てた作物が病気にやられ、収穫量が大きく落ちてしまったのだ。
「……病気に強い作物を作れるようなギフトがあれば……」
思いつめたフェルナは、フローネの元にギフトを授かるために行った。
フェルナは作物が病減菌で収穫量が下がった事を嘆き、病減菌に強い作物を作るようなギフトが欲しいとフローネの所に来たことを話した。
「フェルナさん。それでは女神さまに病減菌を死滅させるギフトを授けていただけるよう、お祈りしておきますね。病減菌を死滅させる…ね」
彼女はにっこりと微笑む――しかしその笑顔をみたフェルナは背筋が寒くなった。
「いっ、いや……お手柔らかに……!」
…フローネの【星紡ぎの巫女】 でフェルナがギフトを授かった。
「フェルナさんが授かったギフトは、滅菌断界です」
「滅菌断界?」
フローネが、滅菌断界について頭に浮かんだまま、女神さまの言葉をフェルナに伝えた。
「このギフトは病原菌を消すだけでなく作物の成長がすごくよくなります」
フローネの言葉を聞いたフェルナは、すぐに畑へ向かい、育てている作物に向かってギフトを発動した。
「滅菌断界!! これで……もっと収穫量が増える作物ができるといいな……」
白い光が作物の周囲に広がり、土がふわりと柔らかくなった。フェルナは胸を高鳴らせながら、その変化を見つめていた。
するとフェルナの背後から、聞き慣れた声が飛んできた。
「……おいフェルナ。お前、ギフトに頼ったのか?」」
セシリオも続ける。
「畑仕事は、自分の力で作物を育てるもんだ。ギフトなんかに頼るんじゃねぇ!」
フェルナは言葉を失い、手の中に残る光の余韻を見つめた。
◆奇跡の作物◆
数年に一度の豪雨がラホ村を襲い、川があふれて畑に濁流が流れ込んだ。
翌朝、ダビドとセシリオは水浸しになった畑を見て、言葉を失った。
「……あああ、畑が……作物が全部……もうすぐ収穫だったのに……」
「水路も壊れた。作り直すまで、どうやって食いつなぐんだよ……」
二人は泥に沈んだ作物を前に、ただ立ち尽くすしかなかった。
するとその時、フェルナのだみ声が畑一面に轟いた…
「滅菌断界!!」
白い光が畑一面に広がり、濁った水が引くように消えていく。
水に浸かって萎れていた作物は、みるみるうちに瑞々しさを取り戻し、さらに――信じられないほど大きく、力強く成長していった。
「……おお……これなら、食べ物の心配もしなくて済む……!」
ダビドもセシリオも、ただ呆然とその光景を見つめるしかなかった。
ずっと「ギフトになんか頼るんじゃねえ」と否定していた二人は、気まずそうに視線を泳がせる。
「……あー、その……フェルナ。酷い事を言って悪かった」
ダビドが頭をかきながら、ぼそっと言う。
「わ、私もだ。まさか本当にこんな……すごいことができるなんて……」
セシリオも頬を赤くして、そっぽをむいてお礼の言葉を口にする。
二人はちらりとフェルナの顔をうかがい、同時に深く頭を下げた。
「「……ありがとな」」
その声は小さかったが、確かに感謝がこもっていた。
その後もフェルナのギフトで育てた作物は、驚くべき性質を見せた。
病気にかからないのはもちろん、収穫量が常識外れに多く、食べた人が病気知らずになり、さらに、怪我をしても治りが異様に早くなる
近い未来、このラホ村の作物は「奇跡の作物」と呼ばれることになる。
しかし、滅菌断界にはまだ知らない力が潜んでいた。
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