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プロローグ
あまりにも眠れない夜だった。
この不快な蒸し暑さは、ようやく微睡むたびに私を現実へと呼び戻し、脳を覚醒させる。
寝苦しさに何度寝返りを打ったことか。
寝台のどこに居てもこの暑さからの逃げ場はなく、じっとりと汗ばんでしまう。
私は眠ることを諦め、ゆっくりと起き上がり、ふらふらと庭へ出た。
明るい月の照らす夜だった。
やわらかい草を踏みしめると、いくらか気持ちが良かった。
私は、そこで馴染みのある人影に出会った。
その人物も、眠れないようで「やぁ」と片手を上げて、近くへ来るよううながした。
私は木のベンチに座った。
その人物はそれを待って、水の出ない噴水の縁に腰かけた。
私は夢見心地のまま、日常の些細なことを口にし、いつしか昔語りを始めた。
語りのなかの自分は、あまりに夢を語り、そのくせ悲観的で皮肉っぽく、結局話しているうち、現状との乖離にだんだんと情けなくなってきて、核心部分に至るまでに話題は霧散した。
しかし、それこそが私だった。
さぁ、次はあなたの番だ。
物語をうまく綴じられない私に代わって、紡いでほしい。
この眠れない夜が明けるまで。




