プロローグ 最強の暗殺者 • 幽鬼
まさか、こんなバカげたことが自分の身に降りかかるなんて、今でも信じられない。
──俺が……少女に転生した、だと!?
「世界最強の暗殺者」と呼ばれた俺だが、時代の流れと共にこの業界に足を踏み入れる者は増え続け、俺たちベテランが請け負える仕事は次第に減っていった。
生活のため、俺はアルバイトを掛け持ちしながら日々を過ごしていたが、それなりに充実していた。だが、まさかこの日、予想外の出来事に巻き込まれるとは……
最近、組織に新人が入ってきた。上の話によると、そいつは俺の熱狂的なファンで、俺を目標に努力し、ついにこの世界に足を踏み入れたらしい。
──俺にファンなんていたのか?
てっきり俺の周りには、復讐に燃える仇敵しかいないものだと思っていたが……
新人ということで、今回の任務はごく簡単なものだった。にもかかわらず、上の連中は俺にその新人の指導役を押しつけ、一緒に任務を遂行するよう命じてきた。
もちろん、報酬が出る以上、断る理由はない。こうして俺はその依頼を引き受けることにした。
だが──まさか、無敗を誇る俺が、この任務で痛恨のミスを犯すことになろうとは。
今回の依頼は、たかがDランク任務。俺にとっては仕事とも呼べない、単なる”依頼人を母国へ送り届けるだけ”の簡単なものだった。
しかし、いざ実行に移した瞬間、それが”超S級”に匹敵する極めて危険な任務であることが判明する。
慌てて依頼人に問い詰めると、信じられない返答が返ってきた。
「だって、超S級の依頼料、高すぎるんだもん……」
──ふざけるな!!
Dランクと超S級では、天と地ほどの差がある。
俺ですら超S級任務を遂行する際は、最低でも一日は準備に費やすのに……!
難易度が依頼内容とまったく釣り合っていなかったせいで、俺は十分な準備ができなかった。
それでも、俺は死力を尽くし、新人に依頼人を無事に送り届けさせ、敵も殲滅した。
だが、その代償として──俺は瀕死の重傷を負った。
やがて視界は闇に包まれ、身体は深い海の底へと沈んでいく。
そして意識が完全に途絶えた、その瞬間──
俺の”第二の人生”が始まったのだった……