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闘神ヤニカス戦記  作者: 店や喫茶
ロイヤル編 第二章 ー 破 ー
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喫茶店

 吹かしたたばこは美味かった。


 いま、闘神は鈴のマンションから歩いて10分程のところにある喫茶店に来ていた。


 闘神がこの地に居ついてから、しばらくの時が経っていた。


 喫茶店の名は喫茶店ヤニ―である。


 もちろんここも、日本に居た頃も知っていたお店である。


 鈴により再現された地元の街。この喫茶店もその一つである。


 その喫茶店は外観、加えて、内装も、姿そのものが見事に再現されていた。


 そして、ここは日本に居た頃と変わらず、昨今、喫煙に対し、風当たりが強い中で生き残っている、たばこ吸いのための喫茶店だった。


 だから、もちろん、店内で、たばこを吸えた。


 分煙でもない。


 心地よかった。


 喫茶店の入り口の(すず)が、リーンと、なった。


 顔を上げる。


 そこには、(りん)がいた。


「待ってたよ」


 闘神が微笑む。


「頼んだの?」


 そう、鈴が聞きながら対面のイスに座った。


「ロイヤルを」


「ああ、またロイヤル頼んだのね。おいしいものね」


 ロイヤルとは、この喫茶店名物のコーヒーである。


 高級豆にお酒が入ったコーヒーで、鮮やかな香りにお酒が混じって、たばことちょうど合う、特に、このロイヤルのたばことあう一品だった。


 一杯1500円である。


「私も、同じの」


「はい、分かりました」


 と、喫茶店のマスターが鈴の注文をうけたまわった。




 やって来た、ロイヤルコーヒーに対し、二人して、味を嗜む。


「やっぱりうまいな」


「そうね」


 静かな時が続いた。


 二人はこのようにして、静かな時を過ごすこともあれば、(にぎ)やかにおしゃべりする時もあるものだった。


 そのうち、鈴が口を開く。


「じゃあ、約束してた神の権能とやらについて教えてよ」


 それは、闘神がこの世界へとやってくる前、とつじょ書斎に現れた黒色の石板に書かれた神の権能についてのことであった。


 ああ、分かったと、闘神がその記憶を頼りに、神の権能について述べていく。


 この話題は、ずいぶん前から二人の間で交わされていたものだったが、鈴が落ち着いた時にその話を聞きたいというものであったので、今日、この日まで、闘神はそれについて詳しく話さなかったものである。


 海神の能力から詳しく一つ一つ話していく。


 途中待って! と、声がかかり、鈴が、後でまた、見直したいからと、紙とペンを用意し、これに書いてくれと、要求した。


 であるから、闘神はゆっくり話しながら、その紙にペンで、一つ一つ口から紡いだ言葉を書いていった。


 このような形で、ペンを持つのは、久方ぶりの闘神だった。


 作家であった以前は、よくペンを手にしていたものだな、という思いにふけるのも無理もないことだった。


 一方、鈴はというと、ずいぶんと、わくわくしながらこの話の内容を聞いていたものである。


 それは、これまで、この話を聞くのを我慢していた鈴がいたからである。


 というのも、鈴は、楽しみは最後に持ってくるタイプで、例えば、食事の時、自分の好物は最後に食べるものである。


 それと同じように、この神の権能の話は、鈴にとっては大好物、ご褒美の類のお話であった。


 だから、鈴にとって面倒な仕事を片っ端から片づけて、それからそれを堪能しようという彼女の魂胆であった。


 結局、数か月はかかってしまったが。


 そして、今日は、それについて話してもらうために、この喫茶店ヤニーにて集まったのである。


 店は闘神と、鈴以外、誰もいなかった。


 店のマスターは、ちょっと、野暮用という具合で、店の二階。そこは、マスター夫妻の住居空間。そこに引きこもっていた。


 だから鈴以外、誰が聞くともない、この話だった。




 海神、空神、地神……と、ポイントの数値ふくめ、権能を紹介してゆく。


 そして、戦神を紹介している時、鈴がうなった。


「これ、いいわね~浮沈空母創造? かっこいいじゃない。シュミュレーションシステム? も、なんだか面白そうね。まさに戦いの神って能力じゃない。最後の一人になるまでってところも熱いわね、あたし、これがいい!」


「おいおい、これがいいって……まあ、なれたらいいな」


「なるもん。不沈空母乗るもん! だから、あなた、世界の中心にたどり着いてね!」


「無理ゆうな、どこにあるかもわからんのに」


「でも、星読みの光景見たんでしょ? ぐーと大地が端からそそり立つやつ。私もみたよ。完全言語理解持ってる人しか見れない景色! 行けそうだったじゃん! ゆいゆいなら行けるって! ガラスの天井ぶっ壊したこともあるんでしょ?」


「まあ、そうだがな……はぁ……まだ、途中だから」


 と、神の権能の紹介に戻る闘神だった。


 紹介は、戦神の次に、剣神、魔神、仙神と続いた。


「海神、空神、地神は、同じ感じだったけど、剣神、魔神と来ると、色が出てくるわね。剣神は、存在自体がお宝ね~、魔神は幻種ってなんだろう。伝説の生物とか誕生しちゃうのかしら? 仙神はヤバいわね、これ、世界が変わっちゃう感じじゃない。大天意石の上位五席の不死の確約ってヤバくない? たぶんこの席求めて、大戦争が勃発するわよ、それも神の!」


「ああ、そうだな、俺は、これと、闘神。どちらを選ぶか迷ったんだ」


「闘神はどんな能力なの?」


 そして、闘神の説明をする。


「天上天下唯我独尊? また、訳の分からない能力ね。で、これだけ?」


「これだけだ」


「どうして、これを選んだのよ!!!」


 ばん、と机をたたいた鈴の勢いに押される。


「ぽ、ポイントが一番高かったのが、この能力なんだ」


「何ポイントなの?」


「240ポイントだ」


「仙神と4ポイントしか変わらないじゃないの! 仙神だったら、色んな事できそうな感じだったのに!」


「ずっと、修行するってのもな……でも選ぶなら一番強そうな闘神だろ。そこは譲れんな」


「う~ん」


 と、うなってしまった鈴だった。


 そして、残りの人神、情報神を説明する。


「人神はすごい信者数になりそうね。ほら、この弱き者のために天軍が随時派兵される。ってやつ? ほんとうにこれに制限がないんだったら、この果てなき大地のあっちゃこっちゃに派兵されて、なおかつ、そこで信者を生み出せるじゃない。すごいことになりそうだわ。で、情報神ね。これスマホ君じゃない! スマホ君が情報神よ! たぶんそう! いや、絶対スマホ君が情報神で決まりね!」


「え? ぼくが?」


 と、寝ぼけまなこのスマホ君が鈴の呼びかけに出て来たものだった。


「スマホ君」


「なんだい?」


「あなた神になる気はある?」


「う~ん……わかんない」


 煮え切らない答えのスマホ君であった。


 と、そこで、すかさず闘神もスマホ君に対し、


「スマホ君。君が情報神にならなければ、よその知らない誰かに、すべてのデータをアクセスされる可能性があるんだよ」


 と、伝える。


 この一言は決定的だった。


 己のデータの全てを(のぞ)かれ、己の上位者として君臨する他の生命。


 それはスマホ君にとって、恐怖でしかなかった。


 そして、自己の存在意義の喪失にも等しかった。


 情報神が己のハイスペックバージョンであるからだ。


 きっと、空間スクリーンが配布されたあかつきには主人は、そちらの方を使うことだろう。ゆ、許せない!!!


 だったものだったから、


「僕は、情報の神になる!」


 と、即座に宣言するスマホ君がいたものだった。


「じゃ、ぼくは、何すればいいの?」


 と、続けざまにスマホ君が問う。


 熱く宣言したはいいが、すぐに冷静になったスマホ君だった。


「そうね~経済の勉強でもしたら? なんか、そんな感じの権能だし」


「なるほどね! それは任せてよ! よ~し、やるぞ~!!! 僕勉強モード入ります!」


 すると、そこへすかさず、タキシード君が


「え、ゲームは?」


 と、入り込む。


「ん? そうだ、ゲームもやる! 勉強もする! どっちも全力投球だ!」


 と、なるスマホ君だった。


 やれやれと、ジッポーちゃんが首を横に振っていた。




「それで? 鈴。俺が神だと信じるかい?」


「信じてみたくなったかも……これが本当だったらいいな~不沈空母、欲しい~。ね、ちょうだい」


 駄々っ子のようにうんうん言う鈴がいた。


 そして、


「そんな日が来るといいな」


 と、微笑む闘神がいた。










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