豚骨ラーメン
羅王の大陸
かつて、人々から、そう畏敬の念を込めて呼ばれたその大陸群。
ただ、今やその範囲は、全盛期の頃と比べると話にならぬ程小さい。
もうここにしか、羅王の大陸がないからである。
征服者、羅王林。
当時、彼女が支配した大陸は、数多である。
億を優に超える大陸群を統括していたとも言われれば、また、それすら話にならぬ程、膨大な大陸を支配していたとも言われていたが、誰もその全容を知らない。
あまりにも数が多すぎるのだ。
羅王自身、その管理に頓着しなかったため、彼女ですら、それを把握していないのではないかと、そう言われていたほどである。
その原因は、羅王が大陸の勝負を仕掛けまくっていたからである。
1、2、ステップで、気軽にポンポン、気になる大陸を見つけては、旅してまわったその所業。
羅王に対して、どんな大陸の格もその防衛は意味を為さなかった。
普通、大陸の勝負は、相手の大陸の運行の規則なるものの解析から始まる。
この運行の規則たる法則、それをどう読み取るかで、相手の大陸に対して、アクセスできるか否かが決まるのだ。
運行の規則。それは、一見意味不明なコードの羅列で、大陸ネットワークに表示される相手のWebサイト。それなるものを構築しているプログラムに現れる。
あるWebサイトがX言語なるもので構築されており、そのX言語がいかなる働きをしてるか、それをまず理解するのが、重要で、その上で、バラバラに浮かび上がってくる、特殊なコードが、運行規則だった。
だから、それは素人目には、意味不明な記号の羅列でしかない。
だが、それを考古学者が、古代の言語を読み取るように解析してゆくと、そこには、相手の大陸のルールや運営、他にも、経済の情報。また、文明や文化、軍事力といった、それら詳細な情報が書かれいることが分かる。
そのようなコードだった。
それは、ハッキングによりもたらされた数々の情報ともいえる。
そして、それを精査してゆくわけなのだが、例えば、ドジを踏むと、こちらが、ウイルスに感染したりもする。
そんな具合の仕掛けがわんさかあるもので、読み取った運行規則も、どこかしらが意図的に改変されていたりもする。
だから、全ての正確な情報というものを読み取るのは、至難の業である。
力技を好む国家となると、その情報空間に戦闘領域を創造し、そこで、アバターとなった戦士が相手の防衛システムやウイルスをその力こぶしで破壊してゆくという事例もある。
そして、そういったやり取りのその最後。重大情報として、相手の大陸の位置の情報なるものにたどり着くことが出来るのである。
運行の規則のその最後に刻まれた相手の位置情報。それにたどり着くかどうかが、とりあえずの全てだった。
そして、それをもって、攻め入るかどうかであるが、それは、また考えなければ、ならないことでもあり、
また、そこまでたどり着いたからこそ、構築できるこちらの防衛システムもある。
防衛システムを構築する時、その根幹は、大陸の運行の規則にどう手を加えるかである。
手の加わった情報は、虚実ないまぜ、ところどころ歯抜けの情報。
そして、敵の運行の規則なるものが分かれば、それを対象にしたトラップをいくつも仕掛けることができる。
例えば、脅すこともできる。
他の大陸にその情報をばらまくぞ? といった形でである。
また、その規則が分かっていると、その分だけ、大陸ネットワーク上で、いわば、バフのような形で、こちらのシステムを、その相手専用で、強化することもできた。
故に、大陸ネットワーク上でその勝負は、攻め手も守り手も、その運行規則を中心とした勝負が繰り広げられるのだった。
そして、その運行規則をすらすらと読み取ってしまっていたのが、羅王だった。
「一冊の本を読めば、それが、向こうの大陸のガイドブックとなり、そのまま、移動の為のゲートが開かれてしまう」
実際に羅王がやったことと言ったら、この言葉のままである。
相手の大陸のその運行の規則が散りばめられ、隠された、Webサイト。
それは、空間に投影されたスクリーンに現れ、そのスクリーンに羅王は、手を突っ込むのだ。
そして、その手をスクリーンから引き出して見れば、そこに一冊の、相手の全てが書かれた本が、現れるのである。
そこには激しい、駆け引きや、緻密な戦略、戦術なるものはない。
ただ、ぬいっと、スクリーンに手を突っ込んで、本を引っ張り出す。それだけである。
そして、羅王が旅した、その大陸たちだが、それはそれで、また、巨大な大陸たちであった。
つまり、羅王が旅したその大陸は、数多もの他の大陸を、統括する大陸たちであったから、羅王が大陸の格の勝負に勝つたびに、相手が治めていたその全てを総どりしていったという訳で、その為に、羅王の大陸はその規模が異様に膨れ上がっていったのである。
また、羅王の大陸が強大になればなるほど、相手の強さも、勝負のステージも上がるので、当然、勝負に勝ったその時の報酬というのは、いうまでもないが、指数関数的に増えるものである。
その後、羅王に対し、その大陸の格の、元首の座に挑戦する者たちも数多いたが、総じて、沈んだ。
それが、結果である。
彼女に勝つのは、無理だったのだ。
ちなみにだが、大陸の元首に至るための勝負というのは、何らかの取り決めがなかった場合、力比べの戦争となる。
つまり、相手を屈服させれば、自動的に大陸の格が、その勢力を元首勢力であると、その勢力のトップを元首であると、そう認定するのである。
特異なルールを設けた場合、それは例えば、経済力や、技術力といった観点で元首を決めるというルールだが、そのような大陸もあるというのは常識的な話であった。
が、羅王の場合、それを何も設けなかったため、常にその決定は、戦争である。
故に、1対多数。
いや、無限に近しい、その規模の連合勢力と、争うことも多々あった。
が、その全ては容易く退けられてきた。
だから、大陸ネットワークにて、羅王の大陸を観測する他者、つまり、まだ羅王に侵攻されていない大陸の元首たちは、その羅王の好奇がこちらに向かぬ事を祈るしかなかった。
だから、羅王の大陸に攻め入ろうとする者も、つまりは、大陸のその勝負にあえて打って出ようとする者も、滅多にいるものではなかった。
その勝負に勝てば、信じられぬ程の支配と富を得ることが出来ると、熱く口説かれようとも、負けることが分かっていれば、勝負に出ないものである。
しかし、饒舌に、洗脳的に熱く口説く者もまたいたのも事実で、その甘言に乗せられてしまった権力者たちもまたいたのも事実。
つまり、愚かにも、羅王の大陸に対し、自ら、大陸の勝負を挑んでしまった者どももいたのだった。
そして、それは、羅王の大陸に攻め込むことが、極めて容易であったから、起きてしまう愚かさだった。
羅王は、大陸ネットワークの、防衛の、一切をしなかった。
運行の規則。
大陸ネットワークにて、何もしなければ、そのままさらされてしまう、その規則に対して、何の防衛システムも、羅王は構築しなかった。
運行の規則に対し、複雑な手を加えて、解読不能にしたという訳でも、羅王の大陸の、その格が、その防衛を担うこともなかった。
何もしなかった。
一切の手も加えなかった。
それだけである。
そして、それだからこそ羅王の大陸へ侵攻するというのは極めて容易なものであった。
それは、大陸ネットワークにて、羅王の大陸を覗こうとすると、その運行の規則が、丸裸で、分かりやすく、でかでかと、掲げられているような、そんな状態であった。
いうなれば、そのサイトの運営者の、アカウントIDとパスワードが、そのまま、サイトのトップ画面に表示されているようなものである。
だから、羅王の大陸へ攻め入りたければ、ただ、そのIDとパスワードを入力し、ログインするだけで済んだ。
そしたら、そこへ通ずる空間ゲートが、開く。というか、開きますか?という選択画面が現れるものだから、そこで「はい」のボタンをポチっと押せば、いいだけだった。
ただし、現実に起こるそれは、少々、異なる様相をとる。
運行の規則には波がある。
ポチっと押せば、そこへ行けると述べたが、ポチっと押せないそんな期間があるのだ。
次に、ポチっと押せる期間は、1347日後に訪れます。
そのような文言が、画面に表示され、「はい」というボタンは、1347日後。その日が来るまで、現れないのである。
これは、運行の規則のそのものの性質から起こる現象で、つまり、大陸ネットワークの防衛システムに、なんの手も加えなくとも発生する、いうなれば侵攻不可能期間。その規則というものであった。
これは羅王の大陸に限らず、他の、各大陸にもある期間である。
だから、空間ゲートを開く、その選択ボタンを押せる期間と、押せぬ期間。その波を見極め、それを踏まえて勝負を仕掛け、また、駆け引きを行うのが、大陸の格の勝負の常であった。
ただし、やりようによっては、侵攻不可能な期間であっても、その難易度は高いが、相手方へ侵攻するのは可能であったから、その期間、絶対の安全が保障されているという訳でもなかった。
例えば、高度なハッキングで、その不可能を、無理やりこじ開けることもできなくはなかったし、これは、テクニカルな例だが、スパイウイルスを相手に感染させ、向こうから、そのゲートを開かせる。
いわば、鉄壁の城に対して、内側から門を開かせるような、そんなやり方もあった。
(想像の為に大陸ネットワークのウイルスなるものがどのようなものであるか、その一例を挙げておくが、例えば、相手のサイトにハッキングを仕掛けている最中、当たりだと思われる、そんなコードを発見したとする。
そして、そのコードを解析するには、大陸ネットワークのとある解析システム、または解凍システムを使わざる負えない。そのようなコードだったから、そのシステムを使って、分析を試みるのだが、しかし、それをしてしまった時、事態は急転する。
それは開いてはならぬメール、クリックしてはならないサイトを開いてしまった時に起こる悲劇と同じで、全ての情報が抜かれてしまったり、そのコードなるものが、破壊のプロトコルを実行し、勝手に、己のサイトのシステムというのを操作し、無断で、ゲートを開いてしまう。
つまり、こちらの大陸の運行の規則は、ゲートが開かれない、侵攻不可能な期間で、安全であったとしても、敵の大陸が、ゲートを開くことのできる侵攻可能な期間であれば、敵は、こちらの大陸ネットワークに侵入し、内側からの、無血開城を試みる。
そんなウイルスの仕組みである。
また、そこまで、ウイルスを感染させた上で、逆にゲートを開かず、あえて、その道を断絶させてしまうという手もあり、
つまり、そういったネットワーク上の戦いは、全てが、侵攻の為にあるのではなく、己の防衛システムをより堅牢にする為に、
また、当然だが、このような仕事というのは、大陸の格のその力を飛躍させるものであったから、その為にも行われる戦いでもあるのだった。
そして、ウイルスというものは、何も、プログラム上のコードの羅列。それだけではない。
実態としてのウイルス。
つまり、人の体を直接、蝕む、病原体のような形で、それに類するウイルスを、大陸ネットワーク上にばらまくこともできた。
表現するならば、そのような形態のウイルスは、コードという情報が体の基盤なのではなく、電気が肉体である。
だから、例えば、そういったウイルスに対して、もし対応するのならば、同じ手立てを講じなければならず、大陸ネットワークに生み出される仮想空間にて、直接それを駆逐する。つまり、ワクチンや抗生物質をもって、物理的にそれを排除するのに等しい戦いを行わなければならないものであった。
ちなみにだが、そこで大活躍するのは、ゲームをたしなむ者たちの、不可知なる力である。例えば、己が育てて来た、キャラクターをその仮想空間に持っていき、そこで、敵を排除することもできれば、また、敵の防衛システムに対して、そのキャラクターで破壊を試みることもできた。
加え、それが格持ちのゲーマーともなれば、そのキャラクター達を現実空間に持ってこれる程の力もあるものだったから、そんな者が、大陸ネットワークにて、その防衛システムに関わるとなれば、そのシステムはとんでもない強度を誇ることになるものだった。
だから、そういった者の前では、肉体を持たないコードだけのウイルスなど、とるに足らないものであったし、また、キャラクターを現実空間に持ってくる力があるというのは、この世界では、特殊な経路にて、相手の大陸に一足早く、秘密裏にキャラクターを飛ばし、現地でスパイ活動を行わせることもできる。それを意味した。
ネットワークと現実世界を交互に行き交うことが出来る、そんな体を持つキャラクターたちだからこそ、できる芸当である。
まあ、これだから、そのゲーマーの為に、ゲーム制作会社もゲーム制作会社で、素晴らしき作品を作り出さなければならないのだが、つまり、全ての者たちは、必ず何らかの価値を持つ。その大前提がなければ、たちまちの内に負ける。そんな世界である)
大陸に対するアクセスが容易な時期と、難しい時期。
ただし、その突破の糸口は軍師の案だけ存在する。
だがしかし、羅王の大陸の場合、その規則というのは、非常に強固で、アクセスが難しい時期に、無理やりアクセスするというのは、不可能だった。
どんな手を持っても不可能である。
そして、それは、今も尚である。
「羅王の大陸にアクセスできる時期というのは、かねてから明確に決まっており、何人もそれを覆せない」
「これは、何人も羅王に勝てなかった、それと同じことである」
ただし、その一方で、羅王林が他の大陸に侵攻する際、相手の大陸の運行の規則。それにより生ずる、侵攻不可能期間。または、侵攻の難易度が高い期間の壁。
それは、全くないものだったから、ある意味でこれは、不公平な話だった。
加えて、羅王のその運行の規則、それは極めて不規則で、侵攻可能な時期の波が、例えば、100年、400年、1000年、または、50年おきにと、来るものだったから、時期を待てば、手軽に侵攻できるという、そんな単純な話でもなかった。
今現在、直近で言うと、羅王の大陸が、各大陸からの侵攻を受けた期間というのは、およそ1000年前の話である。
そして、その次に侵攻が可能となるタイミングだが、それは、4年後であった。
もちろん、今の羅王の大陸に、元首なる者はいないので、それの為の防衛も当然なければ、たとえ侵攻したとしても、心臓のロイヤルを二つ奪わなければ、羅王の大陸を制覇することはできないので、
そして、それは無理な話だったから、
1000年前の侵攻というのは、そこまでの威力ではなかった。
たとえ、羅王の力が1/3に分かれようと、誰も勝つことなどできないのだ。それよりか、別れてしまったからこそ、よりその力は鋭利なものと化し、一つ一つが、当時、羅王林が見せた力、それに並ぶほどのものとなっている。
ただし、羅王林が誰にも見せなかった、大陸の格を優に超えてしまう、その力には、決して敵わない。
がしかし、当時、誰も勝てなかった羅王林の、その皆に披露された力。
それと、1/3に分かれたその力が、同じ威力であるというのであれば、
今、羅王の大陸には実質、羅王が三人いるようなもので、だから、羅王の大陸を制覇するなど、その意味でも不可能な話であった。
しかし、現在は違う。
事情が違う。
格の核たる鉱石が羅王の大陸にあるのだ。
羅王の大陸が、大陸の格の核を保有している。それは、詳らかにされた情報であり、そして、各大陸に、瞬時にもたらされたニュースであり、羅王の大陸のその制覇などどうでもいいものとしてしまう。
つまり、その鉱石さえ奪えれば、いや、買うことが出来れば、己の大陸を進化、または独立ネットワークと化かすことが出来る、その可能性があった。だから、それだけを獲得しに、それだけを目的に、侵攻すればいい。そのような話が広がるものだった。
故に、全大陸が、次のその期間に、羅王の大陸に侵攻すること、それを試みようとする野望というのは、当然で、しかし、それは、それであまりの数であったから、羅王の格が、その入場に規制をかけるのは、羅王のルールに照らせば、それは言わずもがな。
つまり、無限に近しい大軍が、有限の大地に侵攻するとなれば、それは、羅王の大陸にて暮らす民に危害を加えてしまう。
早い話、単純に人口密度が、パンクする。
だからルールが働き、つまり、羅王の大陸のその格。羅王の格が、勝手に動き出し、その入場の規制は、数に限りのある、そんな前売りチケットを発売するかのような体で、
そして、羅王の大陸のその住人たちが知らないところで、いま、熱心に執り行われているのだが・・・
なんだか、なんであろうか・・・
そのチケットの売主である羅王の大陸のその格は、ただの格でしかないはずなのだったが、まるでそのチケットのたたき売りを、その事態を、楽しんでいる。そんなような売り方をするものだったのだった。
それは、誰の許可も得ずに勝手に売りさばかれているチケットである。
まあ、元首のいない羅王の大陸に対し、誰がそれを制御するというものでもないのだが、
そのせいで、今、そのチケット市場というのは、各大陸の激しい争いというのを、生んでいて、その大騒動は、加熱に加熱を加えた沸騰、いいや、もはや大爆発。そんな規模に膨れ上がっていたのだった。
それは、そのチケットがお金を払えば買える。といったものではなかったが為である。
例えば、
私は、幽霊となって、物質と重なり合い、移動することが出来るので、人口密度はパンクしません。入場させてください。とか、おらは珍しい種族だから、珍しいだろ! とか、私は、皆に恩恵を与えることが出来るので、是非とも私に、一枚を。パワ~
とかいった、そんなアピールをして羅王の大陸のその格の興味を引き、チケットをゲットしてしまう。
といった、そんな具合で、チケットの売り買いが、現在進行形で行われているのであった。
どれくらい金を積めるかの話じゃないのだ。
他にも、
羅王の格が、ふと、力比べをして勝った者に、これこれの枚数のチケットをあげる! と突如提案し、瞬く間にワールドトーナメントが組まれたり、また、その勝負が力比べではなく、何かのスポーツの競争であったりもした。
もちろん、それは、広く広まる、この世界にある。そんなスポーツが採用されるものだったから、各大陸のそのスポーツ選手。つまり、スター軍団は、自分の大陸の皆の期待を背負って、意気込むものであった。
そして、その観戦者は、羅王の格だけでなく、それぞれの大陸の、それを見たい者たち。その全てが、それを観れるものであったから、または、羅王の格が用意する、大陸ネットワーク上の特殊な特設スタジアムに行けるものであったから、もはや、民には、格の核など、どうでもよく、それを観る楽しみというのがそこにあったし、羅王の格は、それぞれの大陸の民間のメディアや、それらに関連する企業といった者たちに、勝手に交渉し、そして連携し、
つまり、好き放題、やり散らかしていた。
もちろん力比べやスポーツだけではなく、おしゃべりグランプリや、タレントコンテスト。そして、芸術のコンクールといった、芸術文化、娯楽の方面の競争も多々用意され、
つまりは、
これ、羅王の格が、楽しみたいからやってるんじゃね?
え? 人格あるの?
というような懐疑心を抱かせてしまう。そんなものばかりだったのだ。
そんな事態に、元首勢力は、大混乱である。
その全ては、チケットの需要に対して追い付かぬ供給。
売り手市場の横暴な原理が働いてしまったが為ともいえる。
「ふーーん。チケット欲しいんだ。じゃあ、これやってみ?」
そんな羅王の高笑いが聞こえてくるような市場だった。
また、その前売りチケットの市場は羅王が作り出すものだけではなかった。
それは、二次、三次と広がっていく市場であったのだった。
つまり、転売の市場や、強奪の市場。果ては、贋作の市場といったものが、羅王の格のあずかり知らぬところで広がっていったのである。
全ては羅王が発行するそのチケットなるものが、実際の紙ぺらであったせいである。
そして、それも、その品質は、バラバラだった。
幼稚園児が作ったかのような、そんなチケットもあれば、なんだこれはと唸ってしまう、芸術的チケットもあった。
まあ、それらを、本物だと証明するのは簡単で、チケットの所有者が、大陸ネットワークにて、羅王の格に確認をとればいいだけだったから、どんなヘンテコなチケットでも、まあ、いいか。と受け入れられるものだった。
しかし、話はそうやすやすと済むものではない。
羅王の格は暴れ出す。
例えば、そのチケットが贋作。つまり偽物であったとしても、それを見た羅王の格が、それを気に入ってしまえば、それは本物のチケットになってしまう。
そんな事態があったからだ。
そのせいで、唖然とする者たち、その心労は果てしなかった。
贋作チケットという手口があるのか!
と希望を抱き、そして、とんでもなく素晴らしい、贋作チケットを、時間と人材、そして金をかけにかけまくって、作った。
それなのにも関わらず、それがさらっと、却下され、その一方で、
なんでだ! と叫びたくなるようなチケットが本物と化してしまうことがあったからである。
また、そうやって、工夫する者がいる一方で、当然だが、実力行使に出る者たちもいた。
例えば、そのチケットを入手した者たちの大陸に、大陸の勝負を仕掛け、その力で直接奪う者たちや、
逆に、そのチケットを転売しようかどうか迷う者、それに対し、有無を言わせぬ金を積む者もいた。
ちなみにだが、大陸ネットワークの活用方法は、大陸の勝負が主だが、交易というのももちろん可能で、それには、侵攻の為に開かれるゲートとは違うゲートが通路が、開かれるものである。
だから、その交易の為に開かれるゲートを通して、相手の大陸を攻略する、それにつながる何かの策を試みることもできる。
故に、ただ単に交易をしているだけのつもりであった、純粋な正直者が、痛い目を見ることもあるものだった。
ただし、純粋な者に対し、こいつは馬鹿だと侮った側が、その力を見誤って、ミイラ取りがミイラになるようなこともままある。
だから、ある一定の慎重さは、誰しもが抱えなければならないものだった。
その交易ゲートを通しての、攻略の策。
その例をいくつか挙げておくと、例えば、交易を通し、仲良くなったその面で、スパイを潜ませる。または、相手の大陸の位置情報を、何食わぬ顔で、勝手に算出するという手というものがあった。
ただ、ここで、一つ述べなければならないことがある。
交易のゲートを通して、大陸の元首がその大陸を踏もうとも意味はない。
これは、大陸の勝負の制約である。
つまり、正規のゲートを利用しなければ、大陸の元首が例え、どんな形で、その大地を踏もうと、それは、なんの意味もなさないのである。
だから、例え、相手の大陸に商人の皮を被った、軍人を潜り込ませ、超高度な測定器にて(それは果てなき大地において、非常に難しいレベルの技術が求められる)相手の大陸のその位置を算出し、そこに空間ワープゲートを繋げようとも、その大地を元首が踏んだところで、何も起こらないのだった。
もしそれが意味を持つのならば、大陸の勝負を行う前に、力を持って、相手を破壊する。つまり、直接、戦争を仕掛けるくらいである。
だから、正規のゲートを開くまでの様々な策謀の、または準備といったレベルで、こういった交易のルートは利用されるのだが、ただ、その一方で、この交易システムは、それはそれで、大陸の勝負を抜きに、莫大な利益を生むものである。
最後に羅王の大陸の国家群について、それに関わる、いくつかの事を述べておく。
まず、大陸の格を有する大地。そこに成立する国家がたった一つだけ。
それだけである。という事例は少ない。
それは羅王の大陸にも当てはまり、以前も、そして、今も、羅王の大陸に成立する国家は、多い。
つまり、一つだけじゃない。
ここでの、単一国家の成立。
それは、ロイヤルの誘惑により、この一帯の大陸の国家群が一度に滅亡した直後に、唯一、その可能性があった。そういえる。
しかし、歴史は、あちこちに国家を生んだ。そして、結局、この一帯の大陸。最後の羅王の大陸は、中央大陸を含め、多数の国家により成り立つものとなっている。
その政治体制は様々であるが、国家を国家たらしめる暴力装置たる軍を国家は保有でぬ点が、国家の運営を複雑なものにさせていた。
その暴力の装置たるものには、軍ではなく警察が当たることになるが、しかし、それも、羅王のルールによりその権力は、抑圧され、国家が、理不尽な暴力を民にふるうことはできないものであった。
そうすると、この一帯の大陸における国家の役割というのは、縮小せざる負えなくなる。
例えば、税の徴収や、富の分配、経済の補助というのは、難しい。
ただ、民が、そういった国家からの抑圧を拒絶できるかというと、できぬものである。
国家はその機能を果たすために、法律を課すものであるし、羅王のルールは、それが極端なものでなければ、許すものである。
羅王のルールが許さぬもの。それは、軍事行為に当たる類のもので、それは、官民問わず許されるものではない。
だから、いうなれば、今の羅王の大陸は、平和的な国際秩序のある普通の社会と言える。
しかし、私にとっての憲法、そして法律は、羅王のルールである。と、主張する者に対して、国家の制圧というのは、弱さをさらす。
例えば、年間で治める税があった時に、その支払いのない者を国家が制圧する。
つまり、その者の元に、国税庁なる存在がどっと、押し寄せてくる。
そして、それは、国家権力の核のような仕事である。
が、しかし、その支払いのない者に対し、つまり、税の滞納者に対し、羅王の格が、それを良しとしてしまうことがあるとするならば、いくら、国家権力が、滞納者を抑えようと試みても、逆に、権力側が、羅王の格に拘束される事態になってしまう。
この線引きは非常に難しく、故に、国家が成立させる法律の性質は、民に寄り添うものとなるのは必然で、
ここまで、法を軽視したら、実力行使に出てもいいだろう。法を執行してもいいだろう。しかし、それでも、その執行の内容は、段階的に、民に寄り添うような具合で用意しなければ、その執行が軍事行為として認定されてしまうかもしれないから、慎重にいかなければならない。
といった形で、強引な資産の差し押さえや、懲罰的な意味合いの罰金。さらには、懲罰的な社会的名誉の毀損というのは、相当な悪人に対して、行われるものであった。
つまり、情状酌量の余地。執行猶予の余地がある。
といった文言が、どんな時にも、つきまとうのだ。
そして、これは、国家という権力機関だからこそ、ここまで、注意が払われるものである。
だから、一度のその裁判で、刑期を決めて、その期間、刑務所に放り込んでしまえば、後は、何も考えなくていいや。
という具合の、楽を、国家はすることが出来なかった。
また、その軟弱な国家の法律を悪用する者というのもいない訳ではなかったが、しかし、それはそれで、羅王のルールの運営がそれを許さなかったので、つまり、
「それをやってしまえば、卑怯すぎるよ、だから軍事行為ね」
という悪行であれば、悪人は羅王の格に拘束されるものであった。
だから、ある意味で言えば、国家は誠実な態度をとれば、それが報われるという安心が暗黙の内にあるものだった。
まあ、このような運営があるから、重大犯罪はまず起こらない。
しかし、重大でなければ、犯罪は起こるとも言えた。
だから、警察権力は、どうしても国家の必要とするところである。
羅王の格は全てを管理するものではないからだ。
そして、その重大犯罪も、羅王が腹を抱えて笑ってしまうような、もしくは感心してしまうようなものであれば、許されてしまう次第であった。
腹を抱えて笑ってしまうような犯罪は、重大犯罪とは言えないかも知れないが、感心してしまうような犯罪の中には、重大犯罪に値するものがあってもおかしくはない。
それが起こるとすれば、それは巧みで、知的な犯罪のような、例えば、国家の特級情報を個人のハッカーが全て世の中にさらしあげてしまう。
それは、重大犯罪に当たるが、しかし、それが、カッコイイ仕事だったと、羅王の格に思われてしまったのならば、その者を警察権力が捕えようとしても、たちどころに羅王の格に拘束されてしまう、警察権力であった。
また、不慮の事故にて重大犯罪が起こる可能性もある。
例えば、ずさんな管理体制により引き起こされた、人命被害などである。
そして、それは羅王の格が阻止するものではなかった。
そこまでの面倒は見ない。
それが羅王の格である。
まあ、人というのはなんでもできてしまうので、犯罪の数、そして質、形態というのは、いくらでもあるのだが、羅王の格は軍事行為の有無を判断する。それが仕事である。
だから、その運営が、人の活動の複雑なところを制限してしまうということもなかった。
それはある意味で残酷で、救いのない場面というのも多々あった。
例えば、詐欺にあった者を羅王のルールが救うということもなければ、それを止めるということもない。
それは詐欺にあった者が悪いという訳では断じてなく。人間社会に必ず生じる悪に対し、その精神を断じて許さないという態度を、羅王がとっていないというだけである。
そして、そういった悪を制圧するのが、警察であるから、彼らも彼らで、役割というのがしっかりとあるのだ。
羅王の格は便利ではない。いたずらなお化けである。
これらのことから羅王の心を読むというのは、非常に厄介であるといえるが、しかし、その羅王の心を一言で整理する言葉がある。
それは、「遊びのルールを守っているか、否か」である。
これが、羅王が許す、許さぬ、そして、面白いか、否かといった、そのラインである。
例えば、子どもたちが鬼ごっこをしようといった時に、その鬼が、バイクに乗り出した。
「それは遊びがつまらなくなるから、ダメでしょ!」
といった具合だが、しかし、羅王の格はそれを超えて、
「ば、ばいく!?」
お、おもしろ・・・
と、
つまり、逃げる側も、何らかの乗り物に乗って逃げれば、めちゃくちゃ楽しい鬼ごっこが始まるじゃないですか! という具合でそれを許してしまうのだ。
しかし、それは面白いのだろうが、大人の目の届く範囲ではないと、非常に危険。
ましてや、本物の、馬力のあるバイク、乗り物であれば、事故が起こるなど当たり前。
いや、そもそもだが、子供がそんなもの運転していいものでもないし、鬼ごっこのルールを変えずにそれをやれば、保護者の車は即、廃車。
だから、それらの意味で、ダメだといわれるのだ。
しかし、その乗り物に乗った鬼ごっこが、極めて安全な環境で行われるのなら、羅王の格はそれをよしとしてしまう。
また、例えば、街中で、子供たちが軍の真似をして、エアーガンを構え、引き起こす市街戦。
なんて遊びがあった時に、でも、そのビービー弾が、目に当たったら、人に当たったら、ベビーカーにのった赤ちゃんに当たったら、危ないでしょ?
と、
ましてや、そのエアーガンが本物の銃であればなおの事、それはだめでしょ?
といった、まあ、そのような規制が入るが、その安全が保障されていれば、周囲に少々迷惑をかけようとも、そういった遊びは許されるものだった。
例えば、市街戦ごっこに熱中し、その弾が、ベビーカーの赤ちゃんを襲うような事態になった時、その被害を予測した羅王のルールは、直ぐに、その、子供が握るエアーガンの引き金をロックする。
そんな形もあれば、
しかし、大の大人にその弾が多少当たったところで、それがあまり大したものでなければ、
こら! こんなところで悪ガキどもが! お、おい! おい! おい! おれ、っを打つんじゃない!!!
といった、つまり、大人に当たってしまったその弾が、大人の怒りを買い、その上で、怪獣となったその大人に対し、子供たちが、バシバシとまた打ち返す。
そんな日常も許された。
これはもちろんだが、この世界の大人は不可知なる力により強靭な肉体というのを持っているので、ビービー弾の攻撃などちょっと、かゆい程度。つまり、へでもないが、ちょっぴりストレス。そんな具合。
だが、しかし、子供も子供で、全てが許されるわけでもなく。その子供の正義の乱暴に対して、耐えられるよね? と、そう羅王の格に判断された、いわば、悪役の仮面をかぶる素質ある大人。
彼らだけが、このような目に会うのであった。
だから、子供も子供で、あのおっちゃんは、やっつけていい。という目星というのをつけるもので、そういった事例から、その悪役を、羅王より、任せられた大人たちというのは、「羅王はなんという仕事をさせるのだ」とため息をつくものであった。
まあ、そんな彼らにも、子供たちから逃れられる。羅王が与える安息日。プライバシーの時間なるものはちゃんとあり、つまり、今日も、あのおじさんに会いに行こうと思った子供たちだったが、とたん、体が動かなくなる。
そんな日がちゃんとあるのだ。
今日は絡みに行ってはダメだよ。という訳で、無邪気な軍事行為。つまり粗野な性質を持ってしまう、子供の好奇心をそうやって監督する羅王であった。
子供に対しては特別待遇の羅王の運営である。
まあ、未来の話をしてしまえば、このような子供の文化がこの地域に広がっているその事から、ある一つの悲劇が起こる。
それはつまり、羅王の格に全く守られない、神。
その神が、子供たちに目をつけられた時、それは、どこまで、子供の好奇心をそそってしまうものになるのだろうか。
つまり、どんないたずらも仕掛けてもいいよと、そう言われているような大人が目の前にいて、それに気付いてしまった時、子供は残酷になるのかも知れない。
頼りになるのは、元所持品ズくらいだ。
しかし、実は、頼りになりそうな者たちが、もう一勢力、いる。
それは、奇跡中の奇跡にて、この羅王の大陸に到達することのできた者たち。
オフ会。
そう! オフ会なるものを開く! その条件を全て達成した! 達成できた! 小動物たち! つまり、ヤニヤニ共和国とその仲間たちである!
しかし、今の彼らは頼りにならない。
それは、彼らも彼らで踏んだり蹴ったりの状態に陥っているからだ。
なぜか?
それは、オフ会を開いたその場所が悪かったからだ。
そのオフ会が、今、闘神がいる中央大陸で開かれたのならば、よかったのだが、
彼らがそれを開いたその場所、そこは、闘神が、かの鉱石を売った、換金所。その最寄りの場所だった。
つまり、闘神はそこから、列車にて、長距離を移動し、中央大陸へと向かったのだから、金も力も持たぬ小動物たちが、どうして、その後を追えようかという話である。
手立ては、何かの仕事を頑張って、お金を貯めるか、いや、中央大陸に、フォロワー系スキルを持つ者がいるかも知れない! その希望に頼るか。
または、翼を持つ者たちが、何とか頑張って、中央大陸までの長い長い、そして広い広い、その海を渡る挑戦をするか、
・・・・・・多分無理である。
だが、どうなるかは分からない。
まあ、それは置いといて、遊びについてもう少し述べておく。
例えば、このようなおふざけは、子供だから許されるのである。
大人が、大人に対して、エアーガンを向ければ、それは軍事行為。もしくは、恐喝の類で、現行犯逮捕。
つまり、合意の上で行われたサバイバルゲームにて、それが、叶うだけだ。
まあ、実際のところ、エアーガンを向けたくらいでは、それは重大犯罪には当たらないので、軍事行為に抵触するその可能はないともいえるが、しかし、精神的な方面で、その者が、軍事行為に値するそのレベルで危害を受けるのならば、つまり、後戻り不可能なトラウマを与えるのならば、それはその行為が行われるその前に、拘束されるものである。
子供の場合は、コラー!!! で済まされない事を、羅王は監督する。
大人の場合は、取り返しのつかぬ事態を未然に防ぐ。
この違いが大体のその性質を大雑把に述べるとある。
ちなみにだが、ここでの大人と子供のそのラインは、現実の戦争と、遊びの戦争のその違いを感じてしまった時、起こる感情の不一致。
それに類する何らかの感覚が、ある一定のラインを超えた時、その者は子供認定を羅王の格から外される。
例えば、そのエアーガンを今まで打つことのできた、その人に向けて打とうとしたとき、羅王の格のその制圧がなくとも、思いとどまってしまうのなら、そして、そういった思いとどまる心が何かと思い悩んだら、羅王の格は、その者を子供とみなさなくなる。
そして、その時は、その子にかけられていた、年齢規制がなくなるもので、例えば、誰かに被害を与える。しょうがないじゃすまされないこと。それは、当時、羅王の格によって拘束されたが、しかし、子供ではなくなるというその意味は、その拘束をもう受けないということである。
だから、重大犯罪でなければ、大人に対し、嫌がらせをし続けることもできるのだ。
それ故に、ある意味で、大人たちの安息日もなくなるもので、その子達は、そのまま行けば、学校のガラスを割りまくる、そんな不良少年になることだってできるものである。
つまり自由だ。
萎縮すべき者と、すべきでない者。
子供は、萎縮するべきかどうか?
それは、人により様々な意見があるのかも知れぬが、
その棲み分けは、地球では、文化やマナー、として現れ、それが社会の空気を形成するもので、例えば、ある社会は、子供は、自由であるべきだと、そういう空気があれば、子供が何をしようと許されるものである。
しかし、一方で、自粛するべきものと、すべきでないもの。
つまり、大人が子供の世界に関わらせたくないものがあれば、それは、自粛という形で、子供の世界を犯さないし、大人の世界を分かれという説教を、子供にとうとうとしても、それは、自粛ではなく、萎縮させてしまうだけである。
だから、羅王の格は、萎縮すべきでない子供たち、しかし、自粛できない子供たちだからこそ、それを守っているだけであるといえる。
ただ、その事情は地球のそれと、少々、いや、だいぶ違う。
なぜならば、この世界の子供たちは、いきなり火の玉を打ち込んでくるからである。
エアーガンなんていう生易しいものではない。
この世界は不可知なる力に溢れているのだ。
つまり、子供たちにとっての悪役。その大人たちというのは、それを余裕で受け止められる大人たちである。
新しく開発した技をみんなの前で、披露したいのが子供というもので、何も考えず、友達に打ち込むその攻撃は、死んでしまうものであるから、それを羅王の格は拘束し、しかし、その鬱憤というのを子供はため込むものだから、大人にぶつけるのを良しとするのである。
なぜ、羅王の格がそういう態度をとるのかは分からない。しかし、例えば、なにも思い悩まぬそんな子供が、大人になってしまった時、その者が起こしてしまった、その犯罪は、無邪気で、それは、情状酌量の余地があると言えてしまうのではなかろうか。
つまり、軍事行為というのは、それは原始的で、シンプルな欲望、もしくは純粋なる正義、また、負の感情。加えて、ぽけーっとした何か、または恐れ、といった、心の基盤のその原理というのが働いた、その結果であると、もし、羅王の格のその遊びの心を、固く分析するのならば、上記の言葉が、当てはまる可能性がある。
しかし、それは人にあるべきものだから、軍という存在を、つまり、殺傷の論理というのを、羅王は認めるのではなかろうか。
―事務次官 トリプル・レッド―
また、遊びに熱中すると、不慮の事故というのもある。
例えば、道路に飛び出してしまった子供!
止まることのできぬ車!
それを羅王のルールが救うことはない。
それを救うは、警察の仕事である。
羅王のルールがそこに手を出すことはないのだ。
その事態のどこにも軍事行為はないからである。
遊びのルール破り。それもない。
羅王のルールは不条理を救わないのである。
そして、こういった、子供の遊びの例が、大人の社会にも、形を変えて、適応されるのだ。
つまり、大人たちにも大人たちの遊びのルールがあって、それを最悪な方法で破るような奴は、羅王の格に拘束されるのだ。
だから、遊び心の理解というのが、重要で、しかし、それは分かっていても、つかむのは難しく、また、民間の活動のほとんどは許されるものだったから、
つまり、それは絶対だめでしょ! と皆が深く思うようなことが拘束の対象に値するもので、その他は、大人が苦労しなくてはならないものであった。
だから、ある者たちにとっては、それは遊びじゃないよと、言いたくなる事態が起こっても、羅王の格は何もせず。そして、それは、大人の仕事の領分である。
ちなみにだが、闘神がこの中央大陸へ来るときに利用した一等車両。そこで巻き起こった大食い大会。
あれは羅王が心底楽しむ、その類のものであるので、不正は即、軍事行為認定である。
みんなの楽しみを奪っちゃいけない。そんな具合である。
一方で、求人広告を張り出していた、劉備の軍に属する、あの事務所で起こった、遺伝子検査の騒動は、
いくらその者に不正があろうとも、そして仕事の迷惑になろうとも、何とかしてみろと、何もしない羅王の格である。
つまり、なんかやってよ! どうにかして見せてよ! という具合である。
だから、あの時あの事務所の者たちは、その声が聞こえたからか、どうか、それは分からないが、しかし、むきになって、大型の精密機械までもを、病院から運んできた。その心には、そんなところがあったのではないだろうか。
その時のその光景を、声でもって応援する通行人。病院のスタッフもまたいたのも事実である。
事情を察する者たちは、
いってやれ! 負かして来い! と、
そう声をかけたものだった。
だから、あの時、それで奮起する者もいれば、
あんたたち野次馬に、私たちの大変さの何が分かるのよ!
と、残業確定。それでいて、デートの予定とかがその後にあった者。とかは、もうめちゃくちゃむかついているものだった。
今後の混乱を抑える為に、軍に対する、民間の拘束を述べておく。
軍服を着ている者に対し、民は、一切の邪魔をできない。
もし、それを行うのならば、即、軍事行為。
つまり、即、拘束される。
一方、軍服を着ていない者に対しては、これまで述べてきた大人のルールが同様に働く。
つまり、重大犯罪は起こせない。そして、軍事行為も起こせない。
その上で、軍の仕事に就く者は、全て、羅王のルール。大陸のルールの下にある。
つまり、ずさんな仕事を民間に提出しようと思っても、その書類が提出できない。
それは、拘束される形ではなく、例えば、その書類を民間に渡そうとしたその時に、その書類をつかめない。といった形である。
そして、その上で、羅王の拘束を受けるのであれば、それは、軍事行為に抵触しているという訳である。
ただし、一切、その拘束を受けぬ者たちがいる。
それは、軍服を着ている者である。
つまり、軍服を着ている者は、むかつく民に対して、思いっきり殴りかかることができる。
が、意味を為さない。
服が重要なのだ。
そして闘神は全て見えている。
大人たちも、大人でない。そんなときだってあるものである。
つまり、大人にも子供の心というのがあるのだ。
故に、本気の殴り合いのケンカだって起こるし、それも許されてしまう。それで病院送りになる父さんもいる。でも、それが、ああ、それはダメでしょとなるラインを超えたら、拘束が発動するのである。
もちろん、羅王の拘束のその前に、そもそもケンカを国家の法が、警察が、阻止するのは当然だが、羅王の大陸の場合、面白そうなケンカは、警官も観戦してしまうものである。
それは、いよいよヤバくなったら羅王が止めてくれるという安心と、加えて、面白そうならば、強力な警察権の行使ができないものだからだ。
もっと言ってしまえば、この世界の医療の技術はそもそも高く、第一に、不可知なる力を医師が行使できるのだから、結構大丈夫なのである。
ただ、まあ、そういうような社会だとはいっても、言ってしまえば、遊び心がそこになくとも、全く問題なく社会の活動は行えるし、何の支障もない。
だから、あくまでも、羅王の大陸に成り立つ社会は、普通の社会。つまり自由な社会である。
そもそも、遊び心がそこにあるからといって何か、利益が生ずるわけもないのだ。
その遊び心に対して、深く考えなければならないのは、軍部と国家と悪人、それくらいで、日常の民がそれを考える必要は、特段ないものである。
しかし、その精神は、社会の文化に影響を与えるもので、人々の心の中には、遊び心が根ずくものであった。
羅王のルールは極端なルール破り、遊びが途端につまらなくなってしまう行為を許さない。
そして、それに似た、その精神をこの羅王の大陸の人々の多くが持っている。
もちろんそうでない者もいるし、それを持つ者も、そうでない時もままあるものである。
しかし、これは羅王の格に拘束されるだろうと、思われる、際どい遊びを成立させたら、自慢できたりするものだったから、頭を抱えざる負えない時もある。
全治半年のケンカの怪我も、そこまでの怪我なら、さぞ面白いケンカだったのだな! と、そして、それがもし、一度も羅王の拘束を受けていないケンカだったのなら、お前すごいな! と、称賛するバカが沢山いる世界なのだ。
ちなみにだが、もし、そういう自慢話で、話者が嘘をつくと、羅王の格の拘束を受ける。
つまり、あ、こいつ嘘ついた。と、いうのが丸わかり。
そして、その姿はそれはそれで面白かった。
つまりは、羅王の拘束はこういった、いたずらもあるから、自由過ぎた。
例外というやつである。が、しかし、ちゃんと羅王の格も、ルールを守る。
いたずらはいたずらの域を出ない。
また、羅王の格は、
これは際どい遊びを成立させたぞ!
と勘違いしたバカを勘違いさせたその時に拘束することも、あるものだったから、バカ者たちも、慎重にならざる負えないものであった。
つまり、学校のガラスというガラスを割りまくり、その上で、おおおおお!!! 羅王に認められたぞ!!!!! と、盛り上がったその頂点で、丸3日間。羅王の格に硬直させられた不良たちのその処遇は、その3日間、駅の広場に飾られるものである。
まあ、羅王の拘束は、色んな形があるものである。大体の法則はあるが、面白さが優先される。
しかし、羅王の拘束により、致命的な心の傷を、負う者はいない。心底ムカつき激怒する者はいるが。しかし考える時間は皆にある。
それは大人になっても十分与えらる。重大犯罪のその一歩手前が故に。
そして、どちらが傷を負うのか、誰が傷を負うのか、それは知らされない。
みんなが一斉に拘束される場合もある。
つまり誰が重大犯罪を起こしそうな者だったかも、それは、分からないのである。
まあ、皆の心には、いつも、羅王がそのそばにいるかのような、そんな感覚があるものであった。
けれども、孤独の者に対しては、何もしない。
孤独は危険だ。羅王林の、力の本質に繋がる。
ちなみにだが、あえて今ここで、魔物について述べて置く。
人は魔物を目にしたとき、殺意を覚える。
その魔物だが、文化と文明のレベルが上がると、その力を増す。
高度な文明は、高度であればあるほど、ダンジョンの操作を必要とする。
それが、魔物が嫌うところである。
つまり、コントロールを極端に嫌うのだ。
しかし、その面で言えば、それは、人も同じだ。
そして、その上で、魔物が決定的に人と異なることを述べておく。
魔物は、夢を見ない。つまり、睡眠をとらない。
魔物は、妄想もしない。つまり、遊びもしない。
魔物は、怠けもしない。つまり、疲れない。
故に、恥じるものもない。
だから、思考したことは、実現しようとする。
そして、恐れはない。
故に、人は魔物に殺意を覚えるのか?
しかし、殺意を覚えない。そんな魔物もまたしっかりといる。
もし、魔物が魔物らしくない振る舞いをするのであれば、その魔物は、人の真似をする魔物である。
どういう形でそれが行われるか、それは分からないが、人を真似る、魔物の、その芸が極まれば、人はそれを見ても、殺意が生じない。
つまり、普通に人と接する。それと同じだ。
しかし、同じであるということは、その魔物には、人に対しての敵対心。つまり、殺意があっても、人はそれを知れないことになる。
これも、普通に人と接する。それと同じだ。
そして、各々の魔物がいかなる心情を抱いているか、それも分からない。
これも、普通に人と接する。それと同じだ。
あえて問うが、魔物とひとの区別はどこだ?
どこにもない。
ありゃしない。
もし、その人まねの魔物を魔物だからと言って、こちらから、殺意を向けるようであれば、もはや我々が魔物ではないか?
―魔物使い トシ・ドンドン―
また、魔物が最も力をつける条件を述べておこう。
文化の質が良くなった時。それとダンジョンのコントロール。
この二つがそろった時、魔物の力は最も、強く、発達する。
しかし、文明は高度であればあるほど、ダンジョンが必要である。
―総帥 双猛宗―
☆初心者ダンジョン☆
その看板は大きくカラフルにそして、ポップに飾られた、そんなダンジョンだった。
「はぁ・・・今日もガキどもの御守りという訳か・・・」
そんなため息を吐きながら、出社するゴブリン君は、魔物である。
ダンジョンにて突然変異したゴブリン君は、そこからさまざまな経歴を経たが、今、彼は初心ダンジョンの運営の一人として、人間たちと協力している。
このように、ダンジョンの運営に特殊な魔物が協力することで、ダンジョンのコントロールを緩和させるという手立てもある。
初心者ダンジョン。それは、ダンジョンを歪に、コントロールした結果、生まれるもので、その特徴を述べるのならば、
全ての子供に見せることのできる安全な場所。
というものである。
そこは、スライムや、コウモリ(バットン)、カブトムシ(カブトン)といった、それも、見目かわいらしい魔物たちが、たくさん生息するダンジョンである。
それを子供たちはやっつけるわけなのだが、やっつけた時、その魔物たちは、光の粒になって、消えてゆく。そして、数十分後、彼らは転生して、つまり蘇って、やって来るのである。
また、彼らが、光になって消えた時、そこには、魔石というものしか、落ちていない。
その魔石を集めて、子供たちはおこずかいを得るわけである。
そしてゴブリン君は、その様子を、同僚の人間たちと、仲良く、モニター越しに監視という訳である。
まあ、そのダンジョンは、極めて安全なダンジョンであるので、正直なところ、監視という業務はいらないのだが、しかし、魔物の一人がその業務を担うということは、ダンジョンにとって、大きな意味を為す。
そして、初心者ダンジョンというのは、魔物の危険だけではなく、子供同士のケンカや事故というのもあるもので、いつもどこかで、それはモニター越しでも、そして現地でも、目を光らせるお兄さん、お姉さんたちがいなければならなかった。
もちろん、その子供の保護者として、付き添う大人たちもいる。
その中で、子供たちは我々は自由だ! と、そこで大暴れするのである。
その中の内の一人。
我が子が、炎のエレメントの能力を獲得した。
という、申請のもと、やって来たそんな2人の親子がいた。
それをゴブリン君がモニター越しに見た時、特に、その子供の保護者である、お父さん。
その者を目にしてしまったゴブリン君は、どっと、汗を、意味も分からず、かいてしまった。
な、なんだ、あいつは・・・
言葉が続かない。
圧倒的。
いや、そんな話どころじゃない。
早くさってくれ・・・
仕事をしながら、帰ったら何しようかなと、あれやこれや考える。そんな楽しい時間というのは、そこにはもうなかった。
その巨大な嵐が何の嵐なのかは分からないが、しかし、恐ろしいという事だけは分かるゴブリン君。
そして、その先を考えたくもなければ、考えられるはずもないし、誰かに言えるわけでもない。
言えるとすれば、お前、分かっているよなと、分かっている者同士、目と目で、分かり合うことが出来るだけで、その男の異常さを、それを分かっている者同士であっても、絶対に言の葉に乗せてしゃべってはいけない。という、そんな次元のルールを己にかしてしまう程に異常な嵐であった。
このゴブリン君の心というのは、闘神を見て、何かを悟ってしまった多くの者に言えることで、羊飼いや、星読みの国の人々、また、闘神と交わらぬが彼を見てしまった者たちの多くに共通する感覚であった。
ただ、小動物たち。彼らは違う。彼らはその力のすごさを悟っても、純粋なるその心でおしゃべりしてしまうものである。
だから、闘神のその力を悟り、愕然とし、それでも自らやって来る者たちは、純な心を持つものである。
帰ってくれ!
そうでない者たち。特にゴブリン君のその心はそんなものである。
今や生きた心地がしない。
炎のエレメントと化した子供? いやいや・・・
そんな子供も今や末恐ろしく思えてくるゴブリン君だった。
つまり、そんな不思議な能力を誰かが手にしてもおかしくはないが、この親にして、この子ありである。そう、絶対に何かあるのだ! ひ、人でも生命でもないとか・・・?
そうゴブリン君は考えてしまったが、その先は危険だと。思いとどめる。
絶対に、その後も、それが何かも、追ってはいけないと、
ゴブリン君の魔石がその警鐘をガンガンと、鳴らしているのだ。
そして、その日、その親子は、丁度1000円分稼いで帰ったのである。
そして、その次の日。
「今日も来たのかよ!!!」
その叫び声は、声にはならなかったが、それからしばらく、この親子は、毎日、足しげく、ダンジョンに現れたものだったから、ゴブリン君はみるみる内に、げっそりしてしまったものである? もちろん、同僚たちに、激しく心配されるところであったが、そのゴブリン君は、
「やったぜ・・・今日も俺は、乗り切ったんだ。乗り切ったんだ・・・」
とぼやくだけで意味がわかりゃしない同僚たちだった。
どんだけ仕事したくないんだよ・・・という具合である。
子供に金を稼がせる、パチくずニートの馬鹿おとこ。
もし、ある者が、客観的に彼らの日々を評すのならば、この言葉が当てはまるだろう。
彼らの一日は、雲の上から始まる。
そして活動する時間となると、今日の作戦を会議する。
そのテーマは、だいたい一つである。
パチンコ店に行くか否かである。
彼らが稼げるその上限は一日1000円と決まっている。
その上で、その1000円を、食い物に使うか、それとも、それをギャンブルに使い、増やして、その上で、もっと、食い物に使うか。
そんな会議である。
もちろん、その1000円が増えるのならば、パチンコ店に行くが、負ければその日は一文無しだ。
姿形を変えて、初心者ダンジョンに何度も挑戦する手口も考えた。
そして、初心者ダンジョンは何も一つだけではなく、この大陸に、他にもたくさんあるのだ。
故に姿形を変えなくとも、それらを巡れば、一日に1000円以上に稼げる話だった。
これは、大いなる議論を呼んだ。
しかし、皆、その心に何か、嫌な感覚というものがあったから、つまり、あまりそんな事やりたくないな・・・という感情があった。
しかし、その上で、それをやってみた彼らであった。
さすがに一つの初心者ダンジョンを何回も出たり入ったりすると、ばれる可能性があるので、いくつかの初心者ダンジョンを回ってみることにした彼らである。
ちなみにだが、その彼らの親たる闘神は、彼らに合わせるだけである。
そして、その結果だが、最初は楽しかった。初心者ダンジョンというのは、この大陸に点在するが、その両者の範囲は、子供が一人で行き来できない程度に離れていて、そして、一日に稼ぐことのできる額は1000円までというそのルールは、法律ではなく、マナーなるものであったから、まあ、そういったものを破る。破れる。その楽しさはあった。
しかし、その上で、やっぱり、そんな卑怯な手口はいやだ・・・となった、元所持品ズであった。
例えば、子供の姿の役目を担うジッポーちゃんは、その役を担うというのは、それはそれで、彼女は大興奮!
やった! 大活躍の時が来た!
となったものだったが、いくつもの初心者ダンジョンを巡るうちに、なんだか、やりきれない気持ちになるものであった。
そこには色々な感情があったものだったが、みんなに共通した思いというのは、ジッポーちゃんをなんだかいいように利用してしまっていやだな・・・という気持ちだった。
また、タキシード君は、主人がそんな、あさましい行為をするそのカッコ悪さに気付いたもので、つまり、彼の心の基準の一つ。面白さを途端に面白くないものにするそんなカッコ悪さがそこにあったから、だめだこれは! となるものだった。
そして、スマホ君は、なんだか、それは、ずるいなという感覚をもっていたが、初心者ダンジョンを回りまくってハチャメチャに稼ぐ。(それでもその額は大して多くないが)その事に、ある程度の面白さをもっていたものであったが、しかし、それでは、熱いギャンブルができないではないか! とはたと、気付いた時にいやになるものだった。
しかし、そのスマホ君だが、彼は一度、大きなやらかしをしている。
彼ら、主人と、元所持品ズが、いつものようにパチンコ店に行った、そんなある日。
スマホ君に、あるひらめきが訪れた。
お? これ、ぼくが、この機械の確率いじれば、めちゃんこ稼げるんじゃね?
というひらめきである。
そして、その時は、ちょうど、ハラハラとした展開で、ここで勝てれば、熱い! というその時だったから、良し! と、スマホ君は一肌脱いで、皆を大勝に導いたのであった。
もちろん、みんな大盛り上がりだった。
これまでにないくらい奇跡的な展開であったからだ。
ちなみにだが、その光景は、独りの大男が、椅子に座り、台を打ち、勝手に盛り上がっているものであるから、はたから見れば、なんだあいつ? うるさいな・・・となる光景である。
しかし、彼らは、皆、念話や、また、元所持品ズは、彼らの公共空間たる、タキシード君のそのポケットの中で、それを鑑賞しているので、(また、主人の代わりに打つこともある)その当たった時というのは、人知れぬ、お祭り騒ぎがそこで、開かれていたものである。
しかし、その時は、スマホ君だけ、そのお祭り騒ぎに加わっても、みんなと同じだけ、盛り上がることが出来ないものだった。
そして、それが何かと、ぶつぶつと、考え、落ち込み、終には、その日の夜に、主人に、聞いて欲しいと、全てを白状するスマホ君だった。
その日から、スマホ君はギャンブルの際、闘神が作り出す、神域解凍に包まれて、一切の力の行使ができないものとなっている。
だから本気で叫ぶことが出来るのだ。
いけー!!! 当たれー!!! ぶちかませー!!!
と、
もちろん、パチンコ店のほかに、ギャンブルはたくさんあった、競馬のようなレース。カジノ。また、その他の金銭をかけた遊び。
様々なものがあった。
しかし、その遊び方は、パチンコのそれと同じである。
つまり、真剣勝負だ。
まあ、1000円というのは、ギャンブルの掛け金としては、この大陸のお金の基準に換算しても、スズメの涙ほどの、大層少ないものであったが、しかし、それだけの不利をひっくり返すことが出来た時、信じられない程の興奮がやってくるものである。
そんな彼らだが、その1000円をギャンブルに使わない時がある。
1000円。
それは、彼らにとっての豚骨ラーメン代である。
実際のところは、780円から始まるが。
何を言っているか分からないかも知れないが、彼らには、初心者ダンジョンにて稼いだそのお金を、必ずこれに使うのだ! と決めた、そんなお店があった。
それが豚骨ラーメンの店である。その名も
『トントン戦隊とんれんじゃー』
である。
(一応だが、この名前を羅王の大陸のその言語体系に照らし合わせてちゃんと読めば、「とにかくこの豚骨ラーメンを食え。俺は味の戦士だ」という熱い思いのこもった名前である。だが、それを表現すると、トントン戦隊とんれんじゃーとなる)
そのメニューはこうだ。
豚骨ラーメン、普通。780円
豚骨ラーメン、大。980円
豚骨ラーメン、特大。1080円
豚骨ラーメン、メチャ盛り。1340円
このラインナップを備える、そのラーメン屋さん。しかし、
普通のラーメン。780円でも量が違う。
それは、ダイナミックなラーメンである。
え? これが普通? 特大じゃない? と思えるそんなラーメンである。
ひとりで食べきれないだろ、と思われる麺の量。そして大盛りの野菜。加えて、厚切りの肉。
その上で、さらにその量を増すことのできるトッピングサービス。
野菜マシマシの、にんにくマシマシの、あぶらマシマシ。といった注文ができる、デカ盛りラーメン専門店である。
つまり、地球でもあるところのラーメン屋さんであった。
だから、ラーメン普通が、まず、トンでもない量である。
そして、麺の量はラーメン特大で、普通の2.5倍。メチャ盛りに関しては、普通の4倍であった。故に、メチャ盛りの、その時は、ラーメンのどんぶりが二つ出てくる。
いかにも体に悪そうなそのラーメン屋さんであったが、そのラーメン。滅茶苦茶美味かった。
大将のその見事な手腕により、大量のあぶらも、あっさりとして、酸味のある、醤油のような何かにより、いくらでも食べれる。そんなラーメンとなっていた。
そして、その味にドハマりしてしまった、闘神と所持品ズだったのである。
だから、初心者ダンジョンで稼いだその1000円をギャンブルに使うか、このラーメンに使うか、の議論は毎朝行われている。
その決定権を強く持つのは、稼ぎ頭であるジッポーちゃんである。
彼女に対し、今日はギャンブルだ! とか、今日は、ラーメン食べたくない? とか、様々な取引が行われている。
ギャンブルに勝てば、当然、豚骨ラーメンを、それもメチャ盛りを食った上で、様々なお店に行けるが、しかし、負けるその可能性の方が圧倒的に高いので、けれども、ギャンブルは面白い。という様々な葛藤が、元所持品ズにあるものだったから、一向に雲の上から動けない。そんな時もあった。
また、食い物だけではなく、他の様々な施設も楽しいもので、そして、施設だけでなく、食い物以外の楽しいものもたくさんあるものである。
そしてまた、お金がなくとも、彼らは彼らで、その一日を楽しく過ごすそんな手立てが多々あるもので、例えば、麻雀。それは四人でするものだが、主人を含め、ちょうど4人いる。そして、そういったものを制作できるタキシードだった。
また、スマホ君と協力し、頑張れば、ありとあらゆるゲームを制作することが出来るので、その日々は楽しいものである。
まあ、ただ、ありとあらゆるゲームを作ることが出来る。といま述べたが、ここに対し、スマホ君が思う心は、他者が頑張って作ったゲームのその作品を己が体現するその狡さは、熱さが無い! というもので、だから、羅王の大陸にて日々を過ごすその中で、あれやこれやの楽しそうな、羅王の大陸の広告を目にし、このゲームやりたい! となっても、でも、それを買えば、それを主人が所持することになるから、所持できないし・・・かといって、そのデータを抜き出して、それで遊ぶのは、抜き出すその行為は面白い、けど、でも、なんだか胸を張れないな・・・となるスマホ君と元所持品ズだったから、ゲームを欲しがる子供のような目で、そういう広告をよく見るものだった。
そんな目をしても、お母さんは買ってくれないのである。母の心は良しとしない。
彼らの楽しみのその中に、彼らが邪だと思うものがあれば、真の意味で楽しめない。だから、それはできても、できないのだった。
まあ、彼らが作り出すゲームのその基準。それは、彼らが手作りで作ることのできるゲーム。そして、そこにしっかりとルールがあり、そのルールがみんなのものであるゲームである。
だから、彼ら独自のゲームの開発。そのチームもあるものである。
生活の苦労、生命の苦労、彼らは、そんなものにやられることのない純粋な子供たちであり。その守り手は神である。
闘神は、いつも、彼らから来るその主張を受け入れるだけである。
そして、それができるから、彼は闘神となることが出来たものである。
散々な目にあったこともあれば、そして、これからも、そんな目にあってゆくものでもある。
ちなみにだが、元所持品ズである彼らは、己が持つ空間収納にて、所有の欲求を叶えることもできる。つまり、お金さえあれば、欲しいゲームを買えるのだ。
要するに、その空間収納に主人の所持品としてではなく、己の所持品として、それをしまい込めば、全ての問題は解決するのだ。
そして、いま、彼らはそれに値する、スキルなるものを持っている。
が、しかし、まだそれができることには気が付いていない。
スマホ君も、収納スキルのそれに値するものをしっかりと持ってはいるが、しかし、それが何なのか、あんまり気付いていなければ、それをどう使えばいいかも分かっていない。
そして彼らは、これ欲しい! と、どうしようもなく思ってしまえるそんなものと、まだ巡り合ってはいない。
例えば、スマホ君は、その空間収納を、己のラボラトリー、実験室、ぼくの部屋!
という意味でしか、今は使っていない。そこには、タキシード君と一緒に作った物が沢山転がっているが、しかし、それだけである。
また、タキシード君が、な、なんだこれは・・・! と思うようなアクセサリーと出会ったその時も、タキシード君のポケットがどうなるかはまだ分からない。
しかし、スマホ君にしてもだが、主人の為に、その収納を頑なに使わないその訳は、これまで述べてきたことであるから、ここではもう書かない。
また、これは、あくまで述べておくが、元所持品ズのその精神は、結構テキトーなものである。これはやってはいけないというよりかは、やりたくないな・・・というものであり、そして、それについて、深く考えているわけでもないから、例えば、彼らが頻繁に観る映像作品は、全て、海賊版である。
そんな、彼らの、その中心にある豚骨ラーメン屋だが、その発見は偶然だった。
繁華街から、ある一定の距離、離れた場所にあった古びれた市街地。
そこをぶらぶらと散策していた闘神と元所持品ズの、その目にその場の空気に似合わぬ。
そんな行列が、そこにあったのだった。
つまり、こんな古びた市街地に、何故行列が? という光景で、
だから、その豚骨ラーメン屋を見つけたから、そこに通い出したのではなく、その行列を見て、そこを知ったのである。
そして、明日、ここに来てみよう。
と、みんなでうなずいたのである。
ちなみにだが、その豚骨ラーメン屋に一番近い初心者ダンジョンが、ゴブリン君が働く初心者ダンジョンである。
そんな、日常が流れていった。
しかし、日常には値しない場所がある。
それは、軍である。
そして、闘神に、以前、大陸の格の核たる鉱石を盗まれた、その軍は、多くの意味で混乱していた。
そして、その混乱の中であっても、彼らは、誰がその犯人だったかを、しっかりとつかむことが出来ていた。
つまり、闘神のその日常は、その軍により、完全に監視されているものであった。
だから、雲の上で、寝ていることも、炎のエレメントのその正体も、初心者ダンジョンを回りまくった、その日々も、全て彼らが把握するところである。
彼が事件の犯人である、その調べはすぐについた。
軍は民に対して、危害を与えられぬものだが、しかし、軍服を着ているものであれば、意味は為さないが、ただし、それでも意味を為すものがある。
それはある意味で言えば、偶然であった。
かの鉱石。それが何処から、誰からもたらされたものかを調べた時に、かの者に当たったのである。
その調べというのは、この大陸に根ずくインターネットの解析、つまり、ハッキング。そして、そのハッキングは換金所に対して行われたものであるが、こういったハッキングは、軍服を着ているものであれば、可能である。
つまり、軍は自由であるのだ。
そして、そういった手で、入手した情報は、軍服を着たものでしか、閲覧できず、また、軍服を脱げば、その情報は、一切忘れてしまうものである。
だから、意味を為さないのだ。
例え、どんな手段を用いろうと、それが、軍事行為であれば、壁の落書きも、それは見えない。
そして、軍服を着た時のトラウマや、敵への憎しみというのも、羅王の格は、その一切を民間に持ち込ませぬよう、全てを忘れさせた。
だから、それから起こる悲劇というのも考えられる。
友が仇だった。恋人が、敵だった。
そんな事件も起こりえる、その可能性もあったが、そういった事態は、羅王の格に全て拘束され、実際には、その悲劇は起こっていない。
だから、ナンパ師が、好みの者を見つけ、歩いていこうとしたそのときに、
彼はたちまち、硬直してしまった。
つまり、それは、見る者が見れば、ああ、ナンパ師は、やりすぎる可能性があったから、拘束されたのだと笑えるものだが、しかし、軍の可能性を入れると笑える話とはならないものであった。
つまり、そのナンパ師が、実は、その好みの者と、軍事上、憎しみ合う者同士であった、もしくは、親族、または親友がその関係にあった。などといった、可能性も考えられるもので、
これはある意味で、ナンパ師が、ナンパに失敗する。その事から、彼は、未熟な人間だ。もしくは、重大犯罪を起こしそうな人間であった。
という断定を人々にさせないものでもあった。
卑怯、卑劣、子供すぎる。または、ナンパのその目にあう者の精神の安全の為に、拘束されたのではなく、
両者には、何らかの関係してはいけない関係があったのかも知れない。
という考え方である。
大人たちはそれを、羅王は運命の糸を握っている。と言うものだった
そして、もし、そういった関係であっても、拘束されない者たち、それは、両者が分かり合っている関係である。
まあ、こんなものであるから、軍というのは、恐怖の装置としても、そして、言い訳の装置としても、活躍するものであった。
そして、軍は、闘神が、かの鉱石を売った者だと発見したのだが、
そのハッキングは大変、高度なものである。
そして、闘神を見つけた、その軍はそれに耐えうるだけの人材を備えていた。
そして、また、劉備の軍が、同じ情報にたどり着いたのは、もっと後の話であった。
そして、その軍は行動を開始する。
軍部の狙いは、一つである。
「かの者が欲しい」
今、闘神を熱心に見つめる、その軍は、3つの軍の内で、特に、人材を最重要視する特徴があった。
だから、かの者が、劉備の軍に所属しており、なのにも関わらず、何故か劉備は闘神を手放した。
これほど愚かなことはないという思いがあった。
そして、劉備と何が合わなかったのかも、だいたい予想することができ、劉備と合わなかった部分。それは我々であれば、かの者に提供できるものであると。それは、かの者を日々監視するたびに強まる確信であった。
しかし、たちまちの内にその確信が実現できるわけでもない。
軍は、才能というものが、いかに頑固でそして、逃げ足の速いものであるかを十分理解するものであった。
才能の獲得は、狩で例えると、罠を仕掛ける行為である。
つまり、弓を引くのではなく、まず待たねばならない。
そして、その罠が、その才能を殺すものでもあってはならず、かつ、捕まえたその後、その才能に対し、今まで以上の環境を与えてあげなければ、逃げてしまう。
特に、この男の場合は、おそらくそうである。
故に劉備は逃がしてしまったのだと。
それは、かの者の過ごす日常を観察すれば、分かるものだった。
なんでもできてしまうような男が、不自由な生活を送っているのだ。
しかし、楽しみの為に、そして自由に生きている。
であれば、劉備とはあうまい。
つまり劉備のそのやり方は、同じ方向を向く者を、そろえていくやり方で、
その方向を向くことに対して、
いや、そもそも、どこかの方向を向くという行為に対して、
つまり、言ってしまえば、理想を抱くという行為に対して、
色々思うところのある者たちには合わないものだった。
自由と、価値。そして力。
これが、闘神を狙う軍の精神といえよう。
そして、軍がまず取り掛かったのは、豚骨ラーメン屋のその周りに彼らの店を出すところから始まったのであった。
つまり、闘神に我らの店も気に入ってもらおう。という訳である。
しかし、こういった活動は、トントン戦隊とんれんじゃーに対し、被害を与える可能性が常にあるものだったから、その活動は、とても慎重に、けれども、思い切るところは思い切り、という具合でやらなければならないものであった。
そして、そういったものであったから、事の次第は、誰も予測がつかないものになっていったのだった。
繁華街からちょっと、というか、歩くのは面倒だな。と思われる程には離れた市街地。
人気は少ない。
寂れている。
ボロの民家が長々と、ぎちぎちと、密集した地域。
しかし、その地域は、繁華街から比較的近い場所にあるので、街のみてくれ以上に値のつく。つまり、地価が高い場所であった。
だから、そのボロの民家に住む者たちは、その貧乏を脱出する為に、民家も土地も売ってしまえばいいのだが、その民家の持ち主たちは、ここ数十年の傾向からか、この土地の値段はまだまだ、うなぎ上りに上がってゆくと、つまり、今は辛抱だ。というそんな心があった。
だから、それを熱心に口説く不動産屋さんとか、開発事業さんとかはいるもので、
しかし、おそらくこれで彼らは首を縦に振るだろうと思われた、そんな額を提示しても、一向に拒絶されるばかり。
また、この土地が、どんな魅力的な土地になるかを、その夢を見せても、必要性を語っても、住民たちは結束したかのように頑として首を振らなかった。
そして、その民家の中に、一つだけ、ポツンと開いた空き地があった。
そこにある日、トントン戦隊とんれんじゃーなる、豚骨ラーメンが建ったのである。
なぜ、その土地にそんな店が建ったか、それは色々な流れがあったが、ひとえに、その土地の持ち主が、トントン戦隊とんれんじゃーの大将たる男のラーメンの熱意に感動したが為である。
その元の土地の持ち主。彼は、いわば成功者である。そして、彼は、かつて、その土地に住む者であったが、しかし、今や成功したために、その土地から、離れて生きていた。
その彼の当時の家の場所。
そこにトントン戦隊とんれんじゃーが建ったのだった。
もちろん、その元の土地の持ち主にも、あまり広くはないが、それでも今後、その値が上がる土地。それをその時まで、待つ心があったが、しかし、彼は成功していたので、つまり、お金はもういい。という者であったが為に、快く、大将に譲り渡したのである。
しかし、その譲渡は結構テキトーなものである。
感動したといっても、それは飲みの場で、つまり、お酒が入った時に、それが行われたものである。
しかし、それを後悔しないだけの成功者であったので、こういう場合、そういった者は、一度口にした約束を守る心があり、また、皆の前で、それを宣言したために、譲らない訳にもいかなかったのである。
そして、誕生した、『トントン戦隊とんれんじゃー』
その人気はすさまじかった。
そのおいしさは、老若男女問わずの人気であった。
あんた、食えんのか? といった者たちもいるものであった。
しかし、皆、そのラーメンを平らげていた。
大将が結構優しかったから、残しても許された。という、それもあった。
しかし、誰も、残さなかった。
おいしかったからである。
しかし、そんな、ある時である。
ぱたりと、その店に来るものが少なくなった。
だから、物覚えの悪い大将も、いつの間にか、それでも来る、なじみの客の顔を覚えてしまうもので、
その中には、大きな背丈の大男もいた。
彼は、大盛りを頼む日もあれば、嬉しそうな顔をして、メチャ盛りを頼む日もあった。
そして、その男は、普通盛りを頼む日もあった。
こいつは、メチャ盛りを食べるポテンシャルがあるのにどうしてだ? と思った大将は、その理由を聞いてみたものだったが、その答えは、よくわからなかった。
「いやね、大将。グランドレインボーが鼻先で負けたのよ。だから、200円消えちまった」
グランドレインボーとは、競馬の馬の名前である。
ちなみにだが、この世界の競馬は、不可知なる力アリ、空中コースアリの壮絶なるレースである。
騎手は、馬を守り、馬は騎手に答えて、他の馬に攻撃する。
そんな具合で、その際、使っていい不可知なる技。それはあらかじめ登録された技だけで、もし、馬が、登録された技を超えた技を打てば、馬券は紙くずとかす。
ちなみにだが、なんでもOKタイムという、登録された技以外の技を活用していい時間もあるが、そういった紹介は、ここで、やめておこう。
とにかく、壮絶な競馬である。が、けが人は出ない。
まあ、豚骨ラーメン屋の大将の日々に戻るが、その大将が客の顔を覚えだしたあたりから、店の調子は落ちていった。
そして、なんだか知れないが、近隣に、ぽつぽつと新たな店が誕生していったのだった。
おお。ここも賑やかになるかも知れないな。
と思う大将だったが、その賑やかさは、大将のものにはならなかった。
寂れた市街地。
軍部は、その通りという通り、その全ての民家、そして、土地を買い取ることに成功した。
それは何故か。
軍部が、街の形を残すと約束したからである。
そして、軍は、民間と取引したその約束を破ることはできない。
その約束が市街地の住民にとっての、民間の財であるからだ。
だから成功した。
つまり、土地を売りたかったその地域の住民は、けれども、この故郷を残したいというそんな思いがあったのである。
だから、軍が、土地の買取を超高額(それは経済を混乱させない範囲で。つまり、あまりにも高額であれば、それは民間への被害である)で買い取る告知をしたその時、ワラワラと、その土地の住人がやって来たのだった。
その軍の告知を見た時、彼らには、この故郷の姿が残ると、その約束が果たされると、そう確信できた。というよりかは、その時になって、幾度もやって来る、不動産屋や、開発事業たち。その者たちに対して、持っていた、不信感の全てが、やはりそこから来ていたのだというのを発見できたくらいのものである。
もちろん、不動産屋さんも、開発事業さんも、その住民の心は、重々承知で、その思いを組むだけのプランをしっかりと、彼らに提示しているものであった。
つまり、彼らは、絶対に、その街が残るという確信がなければ、貧しくても、売ることはできなかったのである。
だから、この時を逃してはいけないと、そういうわけで、しかし、そのせいで、軍は、この一帯の市街地を全部、買い取るその羽目になってしまったものだった。
そして誕生したのが、民家のその外観、そのままに、中を改造した飲食店らだった。
それは人気を呼んだ。まず、メディアの目に留まったのである。
そして、そこに市場が生まれた。
軍が、その手の余った、他の民家を、民間の飲食店、または、何らかのサービスに貸し出したのである。
そこに共通したルールは、その外観を変えない。
というものである。
だから、良かった。
メディアというメディア。
人という人を呼んだのである。
その一帯の寂れた民家が、また、実にいい味を出していたのが、人々の感動を呼んだ。
そして、そこに出店された飲食店というのは、軍が、かの者を呼び込むためのものであるから、その本気度が違った。
つまり、民家を改造して、かの者が好む施設をわんさか建てたものである。
温泉や、喫茶店。また、喫煙所も、いたるところに作っていた。
そして、その利用の為に費やさねばならぬ金額も、かの者が一日に稼ぐ1000円基準の、つまり、赤字覚悟の出店である。
しかし、その赤字も、人がくれば、黒字へと転ずる。
だから、民間の市場も、そこに進出を望んだのである。
人が集まると、そして、それが集まることが約束されると、その市場は、飛躍する。
わっと、どっと、人気になった。
今や、なんでも、どんな店もそこにある。
その街は、ブランドとかしていた。
それなのにも関わらず、軍が、その土地の持ち主であったが為に、つまり、民家のオーナーであったが為に、その民家を間借りする者たちの、費用の負担。それは、
こんな一等地にこんな値段で、レンタルできるの!?
といったもので、彼らもその商売。大きく出ることが出来たのだった。
だから、その一帯は、非常に活気のある街と化し、そして、そこは、繁華街から歩ける距離だったから、皆を呼んだ。
しかし、その中に、ポツンと、悲しく、立つ。この民家の街なみにそぐわぬ。そんな体裁をとった、店があった。
トントン戦隊とんれんじゃーである。
客は、そこを避けた。
そこだけ、この街に合わない。
そして、その店で食べてしまえば、お腹が膨れて、他のものが食べられない。
なんで、こんなところにあるの?
ばかなの?
という具合だった。
大将のその心は苦しかった。
彼は、ラーメン以外のことなど考えられない質である。
いかにうまいラーメンを作るか。
そこにその生涯を費やし、そして、お腹いっぱい食わせる。
という、そんな精神があった。
だから、その土地を譲った成功者が、そうしたのも、
大将ならば、我が地元の貧しき人々を食わせてあげられるかも知れないと、そんな、そして、他にも複雑な思いがあったのかも知れないが、大将はそんな思いなど、つゆも知らない。
しかし、実際、そうなった。
780円で、お腹が膨れに膨れてしまう程の、ラーメン。
人によっては、一日、いや、二日、それで持つ者もいる。
そして、なにより美味かった。
だから、当時、トントン戦隊とんれんじゃーに出来たその行列は、全て、その一帯に住む、土地を頑なに売らず、耐えていた人たちである。
彼らが土地を売らなかったその理由。それは、1万5000年前に起こった災害。ロイヤルの誘惑に耐えた、つまり、その以前からそこにあった、先祖が遺した、街であるからである。
だから、現在、この一帯のお店に集まる人たちも、それを知り、そして、また、その感動が、人を呼ぶものであったのだった。
そして、彼ら、住人は、去った。
トントン戦隊とんれんじゃーを必要とした、その住人たちは、去っていったのである。
つまり、トントン戦隊とんれんじゃーは、その役目なるものを終えてしまったであった。
それは、短い期間の役目であった。
しかし、大将はその事情など知らない。
何が、悪かったのか、味か? いや! そんな訳ない!
来れば分かる! 食べれば分かってくれるはずだ!
その願いは空しかった。
大将ができること。それは、ラーメン作りだけである。
そして、大将は、経済の原理とか、そういった人々の心とかに疎かったものであったから、
この不人気店となってしまった今、
そして積みあがる赤字、
それにより、値上げせざる負えない現実、
そして、だったらば、値上げしなければならぬのなら、俺は俺がこのラーメンに思う価値をつける! というその心から、トントン戦隊とんれんじゃーのラーメンの価格はみるみるうちにトントン上がっていった。
それもあって、誰もその店を訪れなかった。
訪れたとすれば、今や、来る頻度が少なくなった、グランドレインボーさんくらいである。
彼はおいしそうに食べてくれた。
しかし、身なりはいい。
そして、以前は、毎日のように来てくれた。
なのに彼も、今や、ほとんど来ない! つまり、どこかの店に浮気しているというのだな! そうだ、うちに以前出来たあの行列も、その人々も・・・
と考えてしまうそんなささくれ立った日もあった大将だったが、ひとりのお客の、
「ごちそう様」
という、その言葉が、ものすごく、とてつもなく嬉しかったものだったから、かれは、絶対にこの店をやめない! とその度に決心するのだった。
そして、事態は、大将に微笑む。
軍部がやって来たのである。
トントン戦隊とんれんじゃーに。
彼らは大将に謝罪した。
大将に、今、あなたのお店になぜ人が訪れていないか。その訳を丁寧に、分かりやすく説明したのだ。
つまり、軍部もこの一連の全ての現象を把握するところであり、そして、その始まりは、ここまでの事態を予想していなかったものであったと、偶然にも、不可知なる市場が生まれてしまったのだと、だから、こうなったのだという説明である。
そして、それは、ある意味で、軍部に幸運をもたらしていた。
このラーメンは素晴らしい。
ラーメンを食べた、軍のその総帥たる者の、その一言は、大将の胸を打った。
そして、その上で、あなたが欲しいと。
つまり、こちらに来ないか? と、言って来たのだった。
「やはり、才能はそれが輝く場所というのが必要である」
この言葉は、大将を震わせた。
彼が、くじけそうになった時、いつも思い出していた言葉であったからだ。
だから、まだやり直すことはできると、
そしてその上で、まだまだ俺はここで頑張ってみようと。
その言葉は、その形で、彼を支えていたのだった。
つまり、誰かにそう言ってもらうのを、待っていた。そして、その者がこの人生を救ってくれるのを待っていたのである。
そして、彼らの言葉には、一切の嘘がなかった。それは、ラーメンを作ることしか能がない大将にも分かるもので、いや、ラーメンしか作れない大将だから、一連のその称賛の言葉の真偽が分かるもので、そして、実際に総帥のその言葉も、真実であった。
だから、違う場所で、彼らが出会っていたとしても、同じ流れになっていたことである。
しかし、総帥が、大将に言わなかったこともある。
闘神。
かの者の確保が、軍部の目的であったという事実である。
しかし、大将はそんな事、もはやどうでもいいものであった。
ラーメンに対する評価が、そこにしっかりとあったから、ラーメンを一口、二口と、食べだした、その総帥の顔に、全ての答えがあったから、もう何かの企みなど、どうでもよかったし、その上で、大将は、ラーメンのことしか考えることが出来ない者である。
そして、最後の決め手だったのは、最後に、のれんをくぐって、やって来た者。
その者は、この土地を自分に譲ってくれた、者だった。
その時、大将は、その者が、その軍に所属している。そのことを、知ったのである。
そして、
その恩人が、
こっちに来ないか?
それを断るなど、大将には無理だった。
だから、大将は、店の移転を決めた。
そして、その店を閉じたのである。
それからして、しばらくのことである。
ある男が、今日は大勝ちしたぞ! と、その仲間たちと、意気揚々(いきようよう)、その大勝のご褒美に、今日は贅沢三昧だ! と、トントン戦隊とんれんじゃーにやって来た。
そして、その店を見た時、
固まった。
「今日で閉店!」
看板に、その文字が書かれていたからである。
ちなみにだが、この「今日で閉店!」
というのは、近頃、この店にずっと、掲げられていた。
だから、
あぁ~ついに閉店商法ね。と、道行く者たちに思われるような、いや、思われているものだった。
そんな、お店に入る者は、馬鹿みたいな者という訳で、
今、その告知に、震えながら、しかし、最後にその一杯を食わなければ、と歩き出した、大男。
それをみて、あ、引っかかった。と、思う者たちもいた。
「今日で閉店!」
それを見た途端、唖然としてしまった闘神。
もちろん、元所持品ズもである。
そのラーメンが好きだったからだ。
しかし、閉店の兆候があるというのも、彼らも彼らで分かっていたものである。
だから、もしかしたら、閉店するが、どこか別の場所でやり直すのではないかと。
そして、今や、この一帯の土地を一つでも売ろうとすれば、その売値は莫大なはずだから、もし、大将がその土地の持ち主ならば、いや、それは、直接聞いたことがあったから、それが嘘でなければ、そして、嘘をつく大将ではないので、つまり、いつでもやり直しというのが可能で、しかし、店主の心が、折れているその心配もあったから、
おそるおそる
入る。
そして、思い切りよく、元気に。
豚骨ラーメン、メチャ盛り!
と、1万5000円。
値が上がりに上がった、そのラーメンを勢いよく頼んだのだが、
しかし、そこにいた男は、
厨房にいた男は、
神のその注文に振り返った男は、
大将ではなかった。そして、加えて述べるが、軍の総帥でもなかった。
そこには、見ず知らずの漢が、
いや、
闘神は彼を知っていた。
しかし、見ず知らずの堅物の漢が、
大将の格好をした・・・
チキン野郎が、
いた。
かの鉱石を盗み出す際、
スマホ君により、取り返しのつかぬ被害を受けた、
あの堅物のチキン野郎である。
その額は、ピキピキと、青筋を立てていた。




