白線上の闘い
よっ、ほっ…と
白い線を踏み外さないように…
誰もが一度は経験したことのある、白い線を踏み外さないルール(正式名称は知らない)。
学校から、家に帰るまで、道路に書かれた白い線の上だけを通って帰るのだ。
踏み外したら、池に落ちるとか、ワニに食べられるとか、命がないとか、その辺はいろいろだろう。
何人か、友達同士で、キャッキャウフフしながら帰る輩も多い中、やはり、ストイックに一人で挑戦するのが、美学というものだろう(決してぼっちなのではない)。
しかし事件は起こった。
向こうから来るのは、近所の小学生。
どうやら、何かルールが課された動きをしている。
やがて、距離が狭まり、対峙した。
「そこ、どいてよ」
「いや、そっちがどきなよ」
どうやら、小学生は、「ずっと影の中で帰るルール」のプレイヤーだったらしい。
白線と影が干渉し、どちらも譲らない拮抗状態。
「よし、譲歩しよう。『せーの』でお互いに、位置を入れ替えよう」
小学生からの提案だ。
それを受け入れ、それぞれ構える。
「せーのっ!」
とん、と、こちらが白線の上に乗って振り返ると、小学生も無事影の中へ…あっ落ちる…
ふらつきながら、影の外へとゆっくりと、倒れて、アスファルトに手をついた、ように見えた。
その瞬間、『とぷん』と、地面に吸い込まれた。
え?
なにそれ怖い。
そのあと、恐々、白線を通って家まで帰った。
その小学生には、その後会うことが…
いや、次の日、めっちゃ元気に挨拶してきた。
「今度は負けないからね!」
…別に勝負、してないのになぁ。