魔法少女ピュアスモーキー
※本作品で喫煙並びに飲酒を行っている登場人物は、すべて20歳以上であることを確認しています。
喫煙者は肩身が狭くなった。
建物から出され、街でも顔を顰められ、家の中にも居場所がない。
コンビニの前で紫炎を燻らせて、ボーッと空をながめる。
吐き出した煙が空に吸い込まれていく。
吸い込まれて…いく?
なにか、頭上に黒い穴(?)のようなものが浮かんでいた。
煙はそこに吸い込まれていく。
不思議に思ってジッと見ていると、そこから白い物体が顔を出した。
その物体はキョロキョロと辺りを見回すと…目があった。
「キミが!ボクのバディになるんだ!」
何言ってんだ?こいつ。
白いかたまりが、何か訳の分からないことを言い出した。
煙を固めたようなふわふわとしたその物体には、つぶらな瞳と大きめの口がついていた。
そして口には、これでもかとタバコがギッチリ咥えられていた。
「ボクはスモーキー!タバコが吸える平和な世界を目指すため!この街にやってきたんだ!」
エクスクラメーションマークがウザい。
あと、どうやってしゃべってんだ?
「キミが今日から、魔法少女ピュアスモーキーだよ!」
……魔法少女は、タバコ、ダメだろ。
関わり合いになりたくないので、火を消して、その場を立ち去る。
「ちょっ、待って…まってモクよ!キミは選ばれたモクよ!」
急に変な語尾が追加された。
構わず早足で歩道に向かうと、ついてきた。
「話、だけ、でも、ゼイゼイ…ま…」
喫煙者の性か、息が切れやすいようだ。
放置して、歩道をしばらく歩いてると、後ろから声が聞こえた。
「キミ、ちょっと、ここ、路上喫煙禁止なの。知ってる?日本語わかる?」
「わかるモク…わかります。はい、すぐに消します。」
「住所と名前、言える?教えてもらえるかな?」
「はい、モクモク星の…いえ、ふざけてるわけじゃ…はい」
「えーと、ちょっと、詳しい話が聞きたいから、一緒に来てもらえるかな」
「いや、ボクにはやらなきゃいけないことが…」
「『やらなきゃいけないこと』?」
声が低くなった。こわい。
「その辺、詳しく聞かせてね」
あ、連れてかれた。
とりあえず、ポケットから、禁煙パ⚪︎ポを出して咥える。
「まあ、禁煙しようかな。」