表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

あの日

あの日、人類は滅亡した。

……ことになった。


大規模な外星人からの侵略により、地球上の空は、外星人の船で埋め尽くされた。


降伏し、服従するなら攻撃はしないという。

そのかわり、服従の証に、生贄を差し出せ、と。


生贄になろうと申し出をする者は後を絶たなかった。

宗教家が最も多かった。

老いた者、病んだ者が続き、意外にもごく普通の一般市民からの申し出も、かなりの数に及んだ。


ひとえに、家族が幸せに暮らして欲しいという願いのために。


ただ、外星人からの条件がネックだった。

「生贄になることを最も望んでいない者」


そもそも、望んでいない者は申し出をすることは無い。

よしんば申し出たとしても、「最も」という基準をどこにおくのか、測る術はない。


各国の権力者は喧々諤々の議論の末、外星人を謀ることにした。


某国で密かに進めていた、クローン技術を応用して、偽の「生贄」を作成したのだ。


実験用に提供された細胞を培養し、まず、肉体の「ガワ」である骨格と筋肉を作り出した。

臓器に代わる部分は、最近実用化された、移植用の人工臓器を用いた。

脳については、臓器を自律的に動かす程度の装置を内蔵させた。


生贄引渡しの期限が来た。


指定された場所には、3人の外星人が、待ち構えていた。

「連れてきたか。」

外星人の代表は人と変わらない見た目をしていたが、頭にアンテナのようなものが飛び出していて、その先にピンポン玉くらいの赤い球がピカピカと明滅していた。


人類の代表は、

「生贄になりたくないと騒いだので、薬で意識を奪っている」

と、申し添えて、作り出した偽の生贄を引渡した。


外星人うち、2人が生贄の脇を支え、代表と思しき一人が、

「交渉は成立だ。」

と言うと、光に包まれて、消えていった。


人類は救われたのだ。

そう思った…。


だが、そう上手くはいかず、このあと、この穴だらけの策略は易々と外星人に見破られ、外星人の総攻撃が開始された。

そして人類は滅亡した。


「……………行ったか。」

「外星人は退去したようです。」

「ふう、うまくいったか。」


外星人が去って、数か月後、地球の各地で、地表に金属の構造物が迫り上がってくるのが確認された。


構造物からは、人が続々と出てきては、お互いに喜びを分かち合っていた。


およそ1万年前、開発されたばかりの超超光速通信の試験中に、言語と思われる「音」が拾われた。


解析したところ、2000光年ほど離れた場所で行われた、通信を傍受したものと判明した。


世界中の言語学者と、物理学者と、天文学者と、あらゆる頭脳が集結し、出された答えは、

“1万年後に、人類を滅ぼしに外星人が来る”

というものだった。

理由はわからない。


そこで、権力者たちは、「偽の人類」を作ることにした。


慎重に自分たちの痕跡を消し、新たな人類が自分たちが「本当の人類」と勘違いするように。

そして、1万年の眠りについた…


「でも、我々の作った人類が、外星人に滅ぼされなかったら、どうするつもりだったんですか?」


「そりゃ、きみ、我々が滅ぼせばいいだけ、だろう?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ