カミと人工知能によるニンゲンの理想的な支配について
猫の日ですね。
「CAT」と呼ばれるAIが普及してから、確実に社会は豊かになった。
まず、目覚まし時計をセットする必要がない。
適切な睡眠をとれるように、室温や湿度、光量、風量を調整し、理想的な目覚めに導いてくれる。
ゆっくり寝られることとしっかり食べられることは、ニンゲンにとって何より大切なのだろう。
地球上のあらゆる土地はCATの管理下にあり、土地の気候に合った作物が収穫されている。
場合によっては、その地域の土壌や気候も調整しながら、必要な食糧が確保できるように計画的な栽培がおこなわれている。
ニンゲンは、CATの計画に組み込まれ、最大限の幸福を得られるように管理されている。
管理と言っても、強制的なニュアンスは全くない。
ニンゲンは、自由意思に基づき、考え、行動する。
結果、生じるあらゆる事象が、CATによってコントロールされ、社会の「幸福度」を最大にするように設計されているのだ。
素敵な音楽とともに目覚めた「私」は、CATのリストから選んだ朝食を食べながら、今日の予定表を確認する。
CATが管理する時代になったが、ニンゲンの仕事は当然ある。
確かにCATによって製造されたロボットがある程度の作業は行ってくれるようにはなった。
しかし、最終的にはニンゲンの力がないとやっていけない。
作業用の服装に着替えて、外に出る。
道路にはコミューターと呼ばれる乗り物が定期的に走っている。
緑色に塗装された立方体の四方に窓があり、利用したいときは、道路に向かって歩いていくだけで、きちんと止まって迎えてくれる。
コミューターに乗車した「私」は、
「仕事に」
と告げる。
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「おはよう。よく眠れたおかげで、体調は完璧だよ」
「それは良かったです。」
コミューターに搭載されたAIと、挨拶を交わしながら、仕事場に向かう。
「さて、今日もがんばるぞ!」
「私」は気合をいれて、その施設に入っていく。
白いドーム状の建物はうっすらと中が見えるようになっている。
その施設の入り口は厳重に管理され、関係者に埋め込まれたICチップを認識することで入館できるようになっている。
「私」がここに配属されたのは10年前だった。
最初は過酷な作業に傷だらけになりながら帰宅したものだった。
最近では、生傷は絶えないものの、その傷さえ「やりがい」の証と思えるようになった。
施設の中は広く、公園のようになっていた。
其処彼処に2階建てくらいの建物が建てられている。
基本は木造で、窓はない。
それらの建物の2階部分から橋がのびて、他の建物につながっている。
「私」の仕事は、それらの建物内の掃除と、「カミ」のお世話だ。
「カミ」はふかふかとした毛におおわれ、思わず触れたくなる。
ここで気を付けなければならないのは、「カミ」の許可なく触ってはいけないということだ。
「許可」なく触れて大けがをした同僚も多い。
ただ、「許可」がどのようなものか、「私」もまだわからない。修行が足りないのか・・・。
たまに「カミ」が私のところにきて、見上げることがある・
その時は、抱きかかえてそっとなでるのだが、それが良いことなのか悪いことなのか、まだ理解できていない。
ただ言えるのは、この仕事が好きだということだ。
「カミ」のお世話をするのは、光栄なことであるとともに、自分にとって安らぎでもある。
今日も、配属された建物の中に入り、掃除を始める。
建物の中のそこかしこには、砂の敷き詰められた「箱」がおかれている。
その中には、「カミの落とし物」と呼ばれる物質がおかれている。
砂の中に隠されている場合も多いが、「カミ」によっては、隠さずに自慢げに見せてくる御方もいらっしゃる。
確かに強い刺激的な匂いはあるが、もう慣れた。
「私」が砂の入った箱から「カミの落とし物」を回収しようとしゃがんだ時、一柱のカミが私の上に乗ってきた。
初めてのことで戸惑ったが、首筋にカミの手が添えられ、何とも幸せな気分だ。
カミは「ん-」と一声出すと私の背中でうずくまり、くつろぎ始めた。
ご自身で手を丁寧に舐め、おしりをきれいにすると、丸まって寝始めてしまったのだ。
「私」は無理な体勢でじっとしている他はなく、これが「カミ」のくだされた試練と理解した。
1時間ほどそうしていたが、そのうち、「カミ」どこかに去っていった。
なんとも、幸せな時間、いや、苦行であったが、これも仕事として割り切らなければならない。
そうやって、「私」の一日は過ぎていく。
自分の職場を名残惜しく感じながら家路につく。
ニンゲンにとっては、この生活が一番正しいと「CAT」が判断した結果だ。
甘んじて受け入れるしかないだろう。
今日も、疲れた体をベットに横たえ眠りにつく。
できれば「カミ」の夢が見られますように・・・。




