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番の心がわり  作者: 酔夫人(旧:綴)


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pause1. 護衛

閑話休題です(前半はオーレリウス視点、後半はラーシュ視点)。

「オーレリウス、サラリアたちの護衛の件だが……」


ラーシュの言葉にオーレリウスは顔には出さなかったが『やっと決まったか』と安堵した。



三日前、サラリアたちの暮らす浮島に泥棒が入った。


泥棒を感知したのは浮島を縄張りにしている王竜トール。夜中に誰か知らない人が来たっぽいけれど夢かもしれないとトールが言ったことが始まり。


ドラコニアを繁栄させるという王竜だけどいまは三歳児。夜は寝るのが仕事。首を傾げるトールには夢ということにして、まずは被害の確認。


サラリアによって被害が判明。


盗まれたのはトールのパンツ。漏らしてしまったパンツをサラリアが洗濯し、夜通し干しておこうと思って庭で乾かしていたものが盗まれた。


(犯人はおそらくトール様のファン。サラリア様の下着だったらどうなっていたことか……いや、トール様のパンツならいいという話でもないのだが)


「彼女から候補者にない騎士でもいいかと聞かれた……駄目だよな?」

「え? なんでです?」

「お前の仕事が増えてしまうだろう」「別にいいんじゃないですか? サラリア様は誰をご希望なのですか?」


(サラリア様、騎士に知り合いなんかいたのか?)


「ガイゼルだ……」

「……え?」

「ガイゼル・ウィンドスケイル。オーレリウス、お前の兄だ」


オーレリウスの頭に実兄ガイゼルが浮かぶ。


「あの兄?」

「そうだ」

「トール様のストーカーの?」

「……ああ」

「トール様のパンツが盗まれたとき、私が犯人だと思ったあの兄ですか?」

「…………お前、そんなことを思ったのか?」


(思った)


 ◇


オーレリウスにとって兄ガイゼルを一言にまとめると『憎めない人』。


ガイゼルは竜族がめっちゃ好きで、自分というより竜族の生態みたいなものが好きなのでナルシストな感じはない。


三傑の物語に目を輝かしたガイゼル少年は、自分が三傑の一人であるウィンドスケイルの子孫であることをめちゃくちゃ喜んだ。



いつか自分はウィンドスケイル公爵になって竜王を支えるとそれはもう頑張り、本人の努力と家名によりガイゼルはラーシュの護衛になった。


襲撃するラーシュの盾になって重傷患者になること五回。脳筋の父公爵は「心意気よし!」と褒めたが、三回目に妻であり兄弟の母から「あなたが褒めるからガイゼルは頑張っちゃうのよ。少しは身を守らせて」と言われて父公爵はガイゼルに騎士の仕事のときは鎧をつけなさいと言った。



恋もせず竜王家だけを見てきた彼はシーラに見事に転がされた。


爆速でゴロゴロ転がり、オーレリウスが気づいたときにはシーラにどっぷり浸かりシーラの親衛隊になっていた。遅い初恋は厄介だとオーレリウスは思った。そしてシーラの言うことを真に受けてトールの炎で火だるまになった。


――私は、王竜様になんてことを……。


全身重度の火傷。髪も焼けて坊主になったガイゼルが目覚めて一番に口にしたのはトールへの懺悔。


シーラに騙されたことを含めて「修行が足りない」とオーレリウスに跡継ぎの座を譲って規律の最も厳しい神殿に突撃していった。


――剣を向ける先を間違えた私を陛下は二度と信じない。それなら陛下のお傍に立てるウィンドスケイルはお前だけだ。


神殿に飛び立つ前夜、家督を譲って後悔ないのかというオーレリウスへの問いにそうガイゼルはあっさり答えた。オーレリウスは兄ガイゼルの信念を見た気がした。



神殿で修行したガイゼルは強くなった。


それまでは次期公爵として教養や礼節を学ぶ必要があったが、時間と体力を鍛錬に全振りできる環境がガイゼルを強くした。


「俺が考えると碌なことがなさそうだから考えることは任せた」という脳筋丸出しの発言にオーレリウスは呆れたが、確かにそうだと思って「分かった」と答えた。



「サラリア様はなぜあの兄をご指名で?」

「深読みする必要がなさそうで楽そう、らしい」


(なんか分かる)


「トール様は? あの兄のことを嫌っておられましたよね?」

「物に釣られた」


王竜とはいえ三歳児である。


「あいつ、月イチでトールに贈り物をしていたんだ。ファンですって名前入りで」

「圧がすごいですね」


「その貢ぎ物が全てがトールの好みのど真ん中を見事に打ち抜いてな……なんで全魔法を使える竜人のトールがドラゴンカードバトルに夢中になるのかさっぱり分からん。そこら辺の空でリアルドラゴンバトルをすればいいだろう。とりあえず今度のトールの誕生日は、ガイゼルにプレゼント選びのアドバイスをもらう予定だ」


「……陛下もかなり絆されてますね」

「悪いやつじゃないからな」

「そうなんですよね」


「『なんかこう』って表現しにくいところが改善されれば、いいやつにランクアップするんだがな」

「そうなんですよね。『なんかこう』なんですよね」



 ◇



(本当に……なんか、こうなんだよな……)



「ねえ、ガイゼル。おいしい?」

「もちろんですぞ! 流石トール様です。こんな美味しいレタスを食べたのは初めてです」


店内にガイゼルの大きな声が響き、ラーシュはそちらを見て、ため息を押し殺して食べている途中の料理に目を戻す。



サラリアがラーシュを『客』として受け入れてくれてから、ラーシュは二週間に一度くらいのペースでサラリアの店に来ている。


本当は毎日でも来たいがラーシュがいくと他の竜人が遠慮してしまう。営業妨害にならないように二週間に一度、昼食の時間を外して開店と同時に来るようにしている。


客なのでメニューの中から料理を選ぶのだが、【王竜トールが手ずから収穫した】と書かれていればそれ以外の選択肢はラーシュにない。


そしてやってくるのはラーシュが苦手な野菜を前面に押し出した料理。


毎回毎回これだから最初はサラリアの嫌がらせだと思った。しかし毎回料理の内容は違うし見た目もキレイ。己の邪推をラーシュは反省した。


しかし反省したからといっても苦手は変わらない。サラリアの浮島の自家製野菜は確かにこれまでの竜族で出回っていた国産野菜より遥かに美味しいが、種族の味覚なのか苦みはやはり苦手。


トールも同じ竜族だが、トールの野菜にはいつも『お子様用』のソースやドレッシングがかかっている。


子ども用に味を調整しているらしいそれは竜族の子どもに大人気。しかし大人の自分がそれを要求する勇気がない、というより要求したら負けな気がしている。



(あそこまで美味そうに野菜を食っている奴がいればなおさらな)


本来なら護衛のガイゼルが仕事中に飲食することはないが、『食べているのジッと見られるのは鬱陶しい』と三者三様の言葉で言われてガイゼルも一緒に食事をしている。


ガイゼルの前にあるのはラーシュの前にある者と同じ料理。当然『お子様用』のソースやドレッシングはかかっていない。


それなのにガイゼルは美味しいと言っている。裏のない奴だとこの場の誰もが知っているのでそれは本心。ラーシュとしては驚きであり、サラリアがそれを見ていつも満足気なので負けた気にもなる。



(あいつのこういうところが……本当に、なんか、こうなんだよ)

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