風呂好き伯爵令嬢による婚約プロデュース!
お風呂って世界一の発明よね!水を大量に使うのは少しいただけないけど、体がポカポカと癒されて、お湯に幸せが溶け出すもの!さらに言えば温泉はもっと最高ね!疲れが取れるだけじゃなくって、肌もつやつやになっちゃうんだから!
周りのみんなは基本的に湯浴みですませたり、手拭いで体を拭くだけなんだけど、あれって人生の1/3は損しているわ!皆はもっとお湯につかるべきよ!
「えっと、それでソフィアさんは僕に何の様なんだい?」
……は!?お風呂のことで頭がいっぱいになって、目の前のラルク伯爵令息の事をすっかり忘れていたわ!話があると私から持ちかけて、卒業パーティーの会場から離れた庭園までわざわざ来てもらったというのに!
いけないいけない。ラルクさんはいわば私の交渉相手、不機嫌な気分にさせるのは避けなければ!
「単刀直入にいいます。私と婚約していただけないでしょうか!」
「あー、そういう感じね」
ラルクさんは気だるげそうにそう言うと、私から目をそらす。
「そういうの僕、受け付けてないんだよね。というかそもそも君、僕と初対面じゃん。なのに僕と婚約したいって、どうせ僕の顔に一目惚れしたとかそんなんだろ?よくいるんだよなあ……」
「すみません。そういうことではございません!」
「そうだよね。まあ、イケメン過ぎる僕が悪いって言うのもあるんだけど……え!?そうじゃないの!?」
さっきからラルクさんは何をブツブツ言っているのだろう。
「はい!私がラルクさんと婚約をしたい理由は、クラウディア伯爵領が素晴らしい温泉地帯だからです!私はあなたの婚約者となり、クラウディアの温泉に毎日入りたいんです!!」
「お、温泉?」
そう!!ああ、美しきクラウディア温泉。何度か温泉街に足を運んだことはあるけれど、いつも素晴らしい気分を味わわせてくれてありがとう!私の肌をつるつるにしてくれてありがとう!
私のロシナンテ領からだとどうしても移動に時間がかかっちゃって、年に一回も訪れることが出来なくてごめんなさい。でも!このラルクさんと婚約することが出来れば、あなたにいつでも会いに行くことが出来るわ!ああクラウディア温泉、私をその暖かなお湯で包み込んで!!
「……おい、何とろけたを顔してるんだ。僕は婚約なんか認めていないぞ!何を企んでるのか知らないけど、お前と婚約なんて絶対にしないからな!」
「でも、私と婚約することで、ラルクさんには大きなメリットがあります!」
「……なんだよ。言ってみろよ。同じ伯爵家と婚約することのどこにメリットがあるんだよ」
「私と婚約することのメリットは、クラウディア領に残れることです!」
「……は?」
ラルクさんはポカンと口を開けたままの表情で固まっている。……私は親鳥でもなんでもないですからね!口を開けていても餌なんてあげませんよ!?
「どういうことだ。クラウディア領に残れるのがメリットって」
「ラルクさんは五男でしょう?長男や次男の方はクラウディア領に残るかもしれませんが、基本的に三男以降の方は政略結婚で領地外に行かされますよね」
「まあそうだが……それの何が問題なんだ?」
「何を言っているんですか!クラウディア領には何があります?そう!クラウディア温泉がありますよね!そしてクラウディア温泉の効果は一体何ですか?そう!美肌効果ですよ!!」
私は声を荒げて熱弁する。それほどあの温泉は肌がつやつやになるのだ!いっそのこと名前をツルピカ温泉に改名してもいいくらいだわ!……いや、よく考えたらそれはやめておいた方がいいわね。
「つまりクラウディア領を離れてしまうと、私の肌がボロボロになる危険性があると……それは一大事だ!そんなこと盲点だった!俺の美しさが半減……までは行かなくとも、微減してしまうではないか!!」
「そうなんです!!クラウディア温泉の力は偉大なんです!しかし今の話は他の女性と婚約された場合。私は違います。もしラルクさんと婚約した暁にはクラウディア領に私が行くことを誓いましょう!」
「……よし、婚約しよう!!」
そうして私とラルクさんは婚約をした。
ちまたでは真実の愛だのなんだのが流行っているけど、こういう婚約もあり……なのかな?
……まあ、そんなことどうだっていいわ!さっさと温泉に入りましょう!!