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フィルムカメラにまつわるストーリーその5

作者: ユニトール

橋本勝也、57歳。彼は10年前に屋根と外壁のリフォーム会社「マンモス技研」を設立した。

最初は従業員もおらず、マンモスのような大きな存在を目指し苦労しながら経営に邁進した。

彼の懸命な努力は実を結び、今や全国7県に営業所を持つまでに成長。

「事業拡大」と「急成長」、この言葉を誰よりも愛する叩き上げのワンマン経営者だった。


橋本の日常は早朝から深夜まで続く、彼の意を組む幹部社員たちは、

過酷なノルマを営業社員に課し会社を強引に前進させ続けた。

マンモス技研のビジネスモデルは個人の住宅を一件一件訪問し、

見積もりを提案して受注獲得を目指すこと。その手法が今時にしては

珍しいこともあり古築の住宅に住む高齢者をターゲットに確かな成果を生み出していた。



また、橋本にはもう一つの顔があった。フィルムカメラで小さな昆虫を撮影することだ。

彼はリバーサルフィルムを使用し現像後にマウント化、

それをスライドプロジェクターで大画面に映し出すことを楽しみにしていた。

彼にとって小さな昆虫が白いスクリーンに大きく映し出される瞬間は、

自身の会社の大きな成長と重なる特別なものだった。


しかし、急成長の影には暗い現実が潜んでいた。顧客との強引な契約、

社員に対する厳しい姿勢。これらは徐々に悪評となり、会社の業績に影を落とし始めた。

一度立った悪評はあっという間に大きくなり、マンモス技研の業績は急速に悪化していった。


ついにマンモス技研は倒産。橋本は事業を失い今までの人生は振り出しに戻った。

彼に残されたのは、値段のつきようがないフィルカメラとスライドプロジェクターだけだった。

かつての栄光はつかの間の思い出となり、彼は失ったものの大きさに気づく。


橋本は失った事業の整理が落ち着いた後、

遠い親戚が経営する不動産会社の一営業マンとして再出発する。

そしてカメラを手に再び小さな昆虫を撮影し始めたが、

スライドプロジェクターで昆虫を大映しで見ることはなかった。

私が高校ぐらいまでは授業でスライドプロジェクターを使って画像を見ることはありましたが、今もあるのかな? リバーサルフィルムのマウントも。


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