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それは深い霧のような

「蒼ちゃん、大丈夫?」

車に飛び込むやいなや、安堵感から堰を切ったように泣き出した私に、雄大さんは心配そうに言った。

「うん・・・だい・・・じょぶ」

「よほど辛い思いをしたんだね。でももう心配ない」

確かにそうだ。

色々と・・・本当に色々と辛い思いをした。

私はそっと腕時計を見た。

九国さんに催涙スプレーをかけたあの時。

あれから20分ほど経っている。

九国さん・・・大丈夫かな。

そう重い、私は軽く頭を振った。

あの人の事なんて!

「本当はどこかサービスエリアか降りてすぐのファミレス辺りで一息ついてもらいたいところだけど、彼女か彼女の組織が追ってくる可能性もあるから。もうしばらく我慢できる?」

「大丈夫。雄大さんの思うようにして。私は平気」

「有り難う。じゃあ僕の事務所まで行こう。もう1時間くらい辛抱してもらえれば」

「うん、大丈夫だよ。でも、九国さんは一体何者なの?やっぱり外国の映画とかで見る殺し屋なの?でも、お父さんもお母さんもそんな命を狙われるような大物じゃないのに」

「それについての詳しい事情はまだ分からない。ただ、確実なのは君も言った通り九国里沙はある組織に属している殺し屋だ。その組織の正体はまだ分からない」

「あのビルで私、二人組の男に襲われたんだけど、その二人は九国さんの事を『ナンバーナイン』って言ってた」

「そうか。恐らくその二人組は九国里沙の組織と敵対する組織だ。恐らく九国里沙の組織の信用を揺るがせるために、彼女が連れ出した君を潰そうとしたんだろう。そうすれば組織に大恥をかかせられる」

「でも、あの時二人組は私に『吐かせる』と言ったわ。と、言うことは私たちの家族に何かあるんじゃない?」

「そんな事言ってたの?う~ん、今の段階じゃ何ともだな・・・とにかく、事務所に戻ったら、色々と整理しよう」

「あの・・・警察とかは?」

「彼女の組織は警察の一部にも入り込んでいる。万一そこに当たったら、逆に組織に僕らの事を知らせるような物だ。今は危険すぎる」

そんな・・・警察にもって。

その言葉を聞き、今自分の置かれている状況が想像以上に逼迫していることを実感した。

「本当に・・・大丈夫かな。九国さん、追ってこないかな?」

「僕は国内に複数の事務所を持っている。僕と彼女は職業上の接点以外無いから、恐らく僕については追ってこれるほどの情報は無いだろう。・・・最もずっと1カ所に居られるほどの安全は保証してくれないだろうけど」

「ごめんなさい・・・巻き込んじゃって」

俯いてそう言うと、雄大さんは軽く笑うと片手で私の頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。「そう言わない!僕がそうしたくてやってるんだ。僕は君のご両親を九国里沙から守れなかった。せめて君の事は命に替えても守りたいだけ」

雄大さんの言葉を聞いて、砂のようになった心にじわりと水が染み込んでくるように何かが染みてくるのが分かった。

私は一人じゃ無い。

九国さんが居なくたって、この人と進んでいける。

「・・・有り難う。私も雄大さんを守る。九国さんから」

「もう30分ほど我慢してね。ここから一番近い事務所にとりあえずは身を隠そう」

「うん。有り難う。疲れてたから嬉しい」

そう言ったとき、ふと私の脳裏に何か・・・本当に小さいトゲのような違和感を感じた。

これ・・・なに?

それはとても重要な気がしたので、もっと考えようとしたが雄大さんがそっと肩を叩いてくれた安心感もあって、すぐに消えていった。

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