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プロローグ
今は寂びれた商店街の一角に、その二階建ての奇妙な建物はあった。まるで切り出したばかりのような粗い木が組み合わされて作られているその建物は、ぴかぴかの真っ赤な屋根をのせていて、壁は薄い茶色のペンキが雑に塗られている。明らかに素人が建てたようだが、不思議と上品な感じのする家だった。二階に一つだけ取り付けられている窓にも一階に横一列に並んだ四つのどの窓にも、ぴっしりとカーテンが閉められていて、中の様子を見ることはできない。
ずっと前につぶれてしまって今となっては何の店だったのか分からない建物と古びた喫茶店との間に挟まれているその建物は奇妙で、何よりも場違いだった。
そして不思議なことに、その建物がいつからあったのか、誰に尋ねてみても皆等しく「いつの間にかあった。」と、そう答えるのだった。実際それは「いつの間にか」そこにあったらしく、一体何の建物なのか誰が住んでるのか、なぜか誰も知らなかった。
そして、その建物の一つしかないドアにぶら下げられている小さな看板にはただ一言、こう書いてあった。
「誰でもどんな用でも、気軽に入って下さい」と。




