プロローグ
この話はあくまで日常の話です。
心霊現象や魔法などは一切出てきません。
ご了承ください。
耳元で、笑われた気がした。
ばっと布団をめくり、起きた。髪や服がベタベタだ。まだ耳元に笑い声と、その息の熱が残っている。何もいないと分かっていても、枕の横を見てしまう。
やっぱり、何もいない。
最悪だ。明日は大事な予定があると言うのに。悪夢で目が覚めて、眠気が吹っ飛んでしまったじゃないか。はぁーあとため息をつい漏らしてしまう。いけないいけない、ため息は運気を逃す。明日は、大事な日なんだから。
今まで気にも止めていなかった時間が気になって、部屋の壁にかかっている時計に目をやる。まだ3時。やっぱり、全然寝てない。寝る前最後に時計を見た時は1時だった気がする。
布団に潜り眠ろうとするが、全く眠れない。覚えてもいない夢の内容が寝ようとする頭を遮る。どうしていつもこうなるのだろうか、と思ったところで眠れないものは眠れない。何かして、時間を潰そう。
スマートフォンを顔認証で開ける。欠伸しながら開いた画面は配信画面だ。
「やっほー、みんな元気?眠れなかったんだよねー」
スマホの画面に向かって話し続ける。虚無だけれど、誰かが聞いているっていうだけで安心する。やっぱり過疎配信で、いつも来てくれる1人しか聞いてくれてないけれど。こんな時間だし、仕方ないだろうと思いながら話し続ける。
「いやー、変な夢見たんだよね。夢の内容覚えてるわけじゃないんだけど、なんて言うのかなー、ふんいき、だけ覚えてるっていうか。」
あれ?ふんいき、ふいんきどっちだっけ。なんて言いながらもやっぱりあの夢はどことなく変だったと感じる。
「起きたら耳元で笑われた感覚だけ残っててさあ。なんか目が冴えちゃって、今配信してるんだよね」
起きてから1時間ほど経っているはずなのに未だに感覚が残っている。
やっぱり、変だ。
心の中で思ってたことが声に出ていたらしい。10人ほどしか見ていない配信のコメント欄が少し荒れている。
声に出てるよー
あれ?裏の声出ちゃったんじゃない?
やばいやんww
などなど。コメント欄には3人ほどしかいないのによくここまで乱闘できるな。乱闘、ん?乱投…
「ンフッ」
え?どうかした?
1人で笑ってんの怖すぎ乙w
ていうかその話怖くね?幽霊だったりして
また乱闘している。こういうのって引かないんだよな、なんでだろうか。
「まあ、この辺で終わっとくわ、また今度やるから見に来てねー、ん?いや聞きに来てか。じゃ、またねー」
そう言って配信停止ボタンを押した。
-ピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
あー、うるさい。耳を劈く音がする。というかこの音って…
案の定、アラームだ。左手で時計を叩く。起き上がりつつ、左手の下の時計を見ると、もう9時だ。やばすぎる。用事があるのは10時。あと30分で支度しなければいけない。
知っている。こういう時は急げば急ぐほど怪我をしたり頭の中がこんがらがったりして余計に時間を食うんだ。テキパキと支度を済ませていく。ああ、昨日ある程度、用意しておいてよかった。
猛ダッシュで家から目的地まで走った。まあ、走って向かうのには適していないかもしれないけれど。
目的地とは、病院だ。
それも、精神科の。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次の話や別の話も不定期ですが上げていく予定です。
よろしければそちらもよろしくお願いします。