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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
第2章
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第2章笑う者との遭遇と魔女の世界3

 放課後になる頃には、それなりの時間であるので、最近の物騒な状況を鑑み、部活動は自粛させられているとか。


 まぁ、私は何も関係がないのだけど、歩は少し不機嫌だった。

 はて、とここまでの腐れ縁なのに、あの女が何か部活に熱中しているなど、ついぞ聞いたことも目にしたこともなかった。


 そう言えば、帰宅を共にしなくなってからは、結構お互いに詮索をすることもなく、個人のプライバシーとしての情報は、そう共有することもなくなったんじゃないだろうか。

 別にそれほど冷たい訳でもないと思うけれど、小松さんなんかは結構そこが少し寂しく感じる部分なのかもしれない。


 家路を急ぐでもなく、うららかな陽射しに当てられながら、目の奥が少しズキズキする気持ちを感じて、ちょっと嫌な気分になるものの、それに気を払うでもなく、ゆっくりと歩いていると、不意にどこかで声がする。


「やあ。この町は嫌に不穏な境界線上にある状態のようだね」


 辺りを見回すも誰もいない。ふふふ、と笑う声は上からだったので、見上げると電線に乗った女の子――うん女の子?だよね――っていう私達とそう変わらない少女が立っていた。


 青のカラフルな色合いで分けられたキャップを被っていて、体操服の様な恰好をしている。下も半パンである。細身のように見えるし、肌も透き通ったように白い。


 それよりもどうやってあの電線の上に乗っかっているのか。そもそもどうやって近づいて来たのか、全く反応出来なかった。

 もしかしてヤバい敵か、と警戒するも、その何か虚無を感じる笑い声で、そういう感じとも少し違うのに気づく。


「あはは。そう敵視することもないよ。ぼくは君の敵ではない。今のところはね。ただ、この付近でのりを越えてしまいそうなものを察知してしまったものだから、仕事にかり出されて、浮かび上がったのさ」


 何やら訳の分からない言葉で煙に巻こうとしているのではないだろうが、意味の通らない様な言葉だ。


 その声はやはり少年のようでもあり、少女とも取れる、中性的なボイスである。

 不審に思っている私に対して、帽子をつ、と持ち上げてから、またも、ふ、と笑いながら話し始める。


「紹介するまでもない者ではあるのだが、ぼくはイニュエンドゥと言う。星や宇宙の要請に従事させられる機械奴隷みたいなものさ。だからと言うのでもないが、君に一つだけ注意だけはしておこう」


 ふわっと反対側の電線に移って、どこか不気味な気配を漂わせ、どう受け取っていいか分からない話を続ける。


 イニュエンドゥだって? 一体、何だあんたは、と叫びたい気持ちを必死で堪えて、相手の話をジッと耐えて聞く。


「彼はただああなってしまっただけの、謂わば災害だと思えば、どうという事はない存在なんだよ。それに手を加えようとすれば、どこかで亀裂が走って、別の可能性に転化してしまう怖れがある。世界を塗り替えてしまう様な、原理を書き換えてしまいかねない汚染としてね」


 黙って聞いていると、ふうと一息吐いて会話をまだする、その少女イニュエンドゥ。そう言えば、よく見上げてみると、手首の辺りには鎖みたいな物が巻き付いている。


「だからこそ放ったらかしにしているのが一番平穏だが、君達機関の者としては、人間の生活を脅かす存在を放置する訳にもいかないんだろうね。だからこそ、その揺らぎや不確定な値が危険なんだよ。あまり無茶をするなと言うのも無理な相談だが、とにかくあれを上手く処理するのは至難の業だよ。下手な刺激は止した方がいい。精々、泥を外に出さないように気をつける事だ」


 そう言い置いて、その人ともつかぬ気配が濃厚なのに、存在が稀薄な“それ”は、その場から一瞬にして消え去った。まるで最初からいなかったとでも言うように。


 もしかして白昼夢を見ていたんじゃないかと疑いかけるが、私の精神はどこもおかしくはなくそんな妄想や幻覚を見る状態ではないのも確かだ。太陽もそれほどギラギラと照りつけているのでもない。


 あんまりボンヤリし過ぎたかな、と反省しているのか、今の影の様な存在の言葉を反芻しているのか、分からないくらい混乱しながら、少し落ち着くまでゆっくり歩きつつ、先生達の待っている場所に帰るのだった。




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