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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
第2章
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第2章笑う者との遭遇と魔女の世界2

「おーい、空ちゃん。どうしたのかな。そんなにボーッとしちゃって」


 あまりにボンヤリしていたからか、小松さんに顔を覗き込まれておわ?と気がつく。皆も変な顔をしている。

 歩だけが放って置いたらいいのにって感じの、普段通りの態度だ。


「空さん、お疲れなのではないですか? 休息は大切ですよ。どれだけ鍛えたって、疲労には勝てないんですからね」


 舞先輩も今日は定食を食べながら忠告してくれる。

 春雨をそこでちゅるっと行く先輩。


 わたしはと言えば、ウィンナーパンを食べた切り、もうずっと心ここにあらずで、何故だかユーリの顔ばかり浮かんでいた。


 にやけていなかったみたいなので、迂闊なことを考えていたのでもなさそうだ。


 とにかく大丈夫だと伝えるも、まだ怪訝そうにしている二人。そこで意趣返しに少し質問してみることにした。


「あのね、二人はこの世界で起きる悲惨なこととか、それを助けられる存在がいたらだけど、それがもしいたらなって思うことはないかな。例えば災害救助とか」


「え? 空ちゃん、どうしたの急に。でもそうだなぁ、私にはヒーローがいてくれたらなぁ、って思うことは結構あるかな。どんなピンチでも誰かを助けられる、そんな人が。実際、消防士さんとかそんな感じで私は見てるかも。でも」


 と前置きしてから、ちらとこちらを伺うように小松さんは見てから言う。


「空ちゃんはどこか助ける側の人みたいな感じがする。困ってる人を放って置けないって言うか。それで私も前に助けて貰ったよね」


「なんですか、それ。聞いてみたいですね。少しお姉さんは興味があります。空さんの英雄譚みたいなものですか?」


 そんな大層なものじゃない、と溜め息を盛大にするが、小松さんも微妙にキラキラした目をしているから、止めようがない。


「そうなんです。上級生に意地悪されてた時期があったんですけど、それにある時駆けつけてくれてですね。バシッと一言言い放って睨んだら、それっきり関わらないでいられるようになったんです。上級生の大半からは無視されましたけど、前みたいに攻撃されることもなくなって。あ、これ中学の時の部活の話なんですけどね」


 ほうほう、と興味深い様な口ぶりで舞先輩は聞き入っている。

 いじめと言わずに意地悪と言う所が、小松さんの性格が出る部分だと私は思う。

 大体、そうなんです、じゃないよ、全く。


 それに加えて歩が、それが海との縁ですよ、と短くまとめる。


「ふうむ。そうやって弱い者を守る存在でありたいと、そう思っていたりする訳ですか、空さん」


 そう舞先輩に率直に聞かれたので、こちらも素直に答えざるを得ない。


「いやー、別にそんなんじゃないです。ただ目の前に面倒事があったら、少し嫌な気がして、それを何とか解消したくなっちゃうんですよ。普段の私は周りなんて見えないくらい鈍い人間なの知ってるでしょう?」


「そうは言っても空ちゃん。いざって時に力を発揮するタイプでしょ。そこがやっぱり凄く素敵って言うか。私達をいつも助けてくれるヒーローになりそうだよ」


 そんなに期待されてしまうとは。でもそのキラキラした目を否定しきることも出来ないでいるのが本当だ。

 こんな話を振るべきではなかったかもしれない、と少し後悔する。


「ま、目の前に悲しんでいる人はいないようにはしたいけどさ。といっても女の私じゃ、力仕事になるのはあんまり役に立てないよ。知的な仕事も危ういんだけども」


「ヒーロー形無しだな。ヒーローには人より優れた能力が求められるの、知らないの?」


「そんなに辛辣に言わなくてもいいでしょうに。私だって鍛錬は色々やってるわよ。それの成果や結果がすぐには見えないだけで」


 それはご苦労様、と皮肉なのかふふんと笑みを浮かべる歩。

 まぁ、この女の性格は知っているので、今更これで腹を立てることもないし、遠回しに励ましているんだとは分かるんだけど。


 ただ努力をするなら、しっかりヴィジョンがないといけないと、口酸っぱく彼女は言うもんだから、そんな明確な目的や目標のない私としては、少し参ったなって気分ではあるっちゃああるんだけど。


「・・・・・・ふむ。空さんは何か危険に突っ込んでいくタイプなのかもしれないです。厄介事に巻き込まれやすいとでも言いますかね」


 何やら真剣に心配し始める舞先輩。いやそんなに危機管理がなってない風に見えますかね、私ってば。


「それは言えてます、舞先輩。私もだからもう少し規律的に、いえそうじゃないですね、そう緊迫感を持って生活するように、と言ってるんですが。中々学習しない朴念仁なんですよ」


 えらい言われようだ。私はそんなに心配される程の、迷い猫か何かなのかしら。


 しかし、遠からず当たっているかもしれない。あまりにも気楽に生き過ぎて来た。

 それはあの時に先生に救われて、これからの過酷な人生以上に、すっかり安心してしまったからだろうと思うのだが。


「さ、じゃあ私はこれで失礼しますよ。あなた達に付き合ってたら、小言ばかり言われますからね。ちょっと一人でボンヤリしたいんで。ここだと好きにもさせては貰えませんから」


 立ち上がりながら、捨て台詞を少し嫌みにわざと言いながら、去ろうとする私。

 別に本気でそう思っている訳ではないが、小松さんは慌てたように言葉を重ねる。


「あ、わわ、ごめんね、空ちゃん。別にそんな悪気があった訳じゃないの。ほら、二人がそんな変なこと言うのも悪いんだよ。その呑気な所も長所だよ。だってピリピリしてる人だったら、助けを求めるにも相談とかしにくいし。気楽に話せるのはいいことだって」


 ふむふむ。物は言いようとは良く言ったもんだ。

 小松さんのフォローにありがとね、と手でポーズしてから、そのままどこかにフラッと歩き出す。


 今頃ユーリはどんな調査をしているのか、そんなことが気になるも、それよりまた何か話せたらとか、あの声がまた聞きたい、なんて思っている自分に少し驚いている。


 さっきと言ってることが変わってるじゃないか。何が迂闊なことは考えてない、だ。大分うつけているぞ、私。




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