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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
第2章
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第2章笑う者との遭遇と魔女の世界1

 私の眼のピントはどんな風に調節されているんだろう。


 異能としての見えない物が視えてしまう類なのか、外部に働きかける危険な対象として指定されてしまう類なのか。


 目が覚めて、ふと見上げている天井に、亀裂でも入っているんじゃないかと錯覚して、汗を凄く掻いていることに気がつく。


 やはり寝苦しかったのか。興奮による不眠がそちらにも表れたのか。


 そういえば、昨日ユーリは先生にパジャマを借りていた気がするけど、何かやたら可愛いのだった記憶がある。動物柄というのかカラフルとでも言えばいいのか。

 先生があんなのを持っているとは知らなかったが、恐らく本人も買ったはいいが、自分が着ている姿を想像して封印していたのではないかと思われる。


 それをユーリならと引っ張って来たのかもしれない。えらく似合っていて愛らしかったな。魔女って感じには思えない。

 でもそんなユーリを見るのが恥ずかしくもあったので、私は早々に部屋に退散したのであったっけ。


 制服に着替えて、顔を洗う時に眼を鏡で見てみる。

 そうすると、いつもと同じ黒々としたと普通は言うだろう、少し灰色がかったありふれた姿で、別に何も変わった所はないから安心した。


 ・・・・・・安心していいのだろうか。外見に変化が何も魔眼保持者に表れる訳でもないだろうに。


 いや、まぁ眼に変な模様とかが浮かんでいた、とかそういう日常生活に少し差し障りがあるかもしれない変化でなくて良かったという話。


 とにかくそんな心配を打ち払って、眼鏡を装着してから、居間へ向かう。

 そうするともう先生とユーリは席に座り、早々に談笑している。


「あら、その学校の制服っていうの? それソラってばやっぱり凄く可愛いわ! 胸元のリボンがワンポイントになってるのね。いいなぁ」


「あれを好き好んで着ている女子高生はそう居ないのだがね。空は割と幼い容姿だから、周りの人間以上に着られている観はどうしても残ると言えよう。ま、物珍しがる気持ちは分かるが」


 美形のユーリに褒められると、慣れないことへの照れもあって、酷く恐縮してしまうのだが、先生は絶対あれ楽しんで言ってるでしょ。

 ああいう底意地の悪い所は、実は姉そっくりでもあると思う。姉妹揃って私をオモチャにして慰みにしているんだ。


 私は昨日と同じようにパンを食べながら、今朝はインスタントのカフェラテを容れる為に、お湯を沸かす。

 二人はまた紅茶だ。ホントに好きなんだよね、先生も。


「とにかく、私は事務所を閉めてもいいが、空は学校に通っていないと、周囲から不審がられる。機関の構成員はやはり日常に溶け込んでいないといかんのでな。すまんがユーリさん、夜の調査の体力は残しておくように言い聞かせる。なので昼間は彼女の仕事は免除してやってくれ」


 新聞を読んでいる先生が顔を上げて、ユーリに頷いて同意を求める。


「ええ、そうね。若い子に無茶させても戦力ダウンになるわよね。それなら昼間はそれぞれにやるのでいいかしら。少し魔力の痕跡とか調べておきたいし。被害に遭ってる場所なら危険なゾンビ化したのが、うろついているかもしれないのよね」


「おや。あれは夜にしか動かないんじゃないか。リビングデッドとはそういうものだと聞いているが」


 ふう、と息を吐き、嫌になるけれど、と前置きをして話し始めるユーリ。


「確かに吸血鬼もゾンビも例外なく、昼間はあまり行動しないわね。色々制約もあるのだから当然なのだけど。ただ〈異次元の沼〉であるシン・クライムに使役されたあれらは、もう少し指向性が単純化された、人形みたいに行動することがあるのよ。わたしがそれを見つけたら襲って来る確率も高いし」


 それって、ユーリは単独行動していい理由にならないんじゃないのかな。自分の身も大事にして欲しい。


「ちょっと待って。それなら先生と一緒に行ってよ。一人でまた襲われたら、人目についても困るし、あれってかなりヤバい奴なんじゃなかった?」


 ふふ、と緩やかに微笑むが、少し冷徹な視線も感じる。これが彼女の魔女としての資質なのか。


「心配ありがとう。でもね、わたしの〈ムーン・サファリ〉を忘れた? あの操られた人形のシステムを破壊してやれば何とかなるのよ。魔女としての戦いにも慣れてるしね。いい? 人間の貴方が魔女を見くびらないで。勿論、シン・クライムには今の状態では、わたしの〈ムーン・サファリ〉では届かないのだけれどね」


 そっか。そんなに頼もしいなら、戦闘は任せても良さそうだ。


「そこに我らの退魔能力が有効になる訳だ。別に私がやらなくとも君がやってもいい。束になっても勝てる見込みがあるか、微妙に分があるか怪しいくらいの相手ではあるのだがな」


 そう言われると不安になる。私の魔眼とこのナイフでどれだけやれるだろう。


 でも先生はここから先は出来るだけ突き放しながら育てて、いずれしっかり一人でも戦っていけるように、という親心で言ってくれているのだろうとは思うので、ありがたい言葉と受け取っていよう。


「じゃあ今日こそは真っ直ぐ帰って来ますから。図書館の本読むのは、ちょっと後になりそうだなぁ」


 な?呑気な子供だろう、と二人が和んでいるのを見ながら、私も容れたカフェオレを飲み、学校の時間に遅れないよう、時間はきちんと確認している。


 果たして、あまり自信がない方でも特別自慢に思っている訳でもないが、ここからの強行軍にどれだけ私の体は耐えてくれるか、と何となく想像してみるが、やはりいつものあまり深刻に考え込まない癖で、時間が来るまでは思い悩まずにボンヤリしていたのであった。




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