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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
終章+エピローグ
39/61

終章二人の誓い

 千切れた腕は断面が見えているが、そう血が出ないくらい、切れたというより溶かされた感じ。

 それを見て、まだユーリは言葉を発することが出来なかったが、舞先輩がさっさと後を済ませてしまおうとばかりに、話を振って来る。


「空さん。やはり言った通りでしょう。機関の人間だからといって、能力のない者が実戦に出ると、取り返しのつかないことになるんです」


 そして、彼女は溜め息を一つ。


「はぁ。しかし潜入していた甲斐はありましたかね。ああ、空さんの腕は機関に言えば、義手くらい作ってくれるでしょう。これからもこんな無謀なことをする気ならば、ですがね」


 やはりしかしこういう所は、お説教してた先輩らしい、のだが。


「せ、先輩だってかなり無茶してるじゃないですか。なんですか、安息同盟って。そんなに戦い続けて何になるんですか。もうシン・クライムとの因縁は終わったんでしょう?」


「いえ、私は拾われた身であり、彼に恩もある。そして、信仰の道を取り戻させてくれた報いはしなければならない。異端はですね、存在してはならないものなんです――」


 真摯な目で僧服の先輩は語る。そうまでして異端を殲滅しなければならないのは、やはり信仰だけではなく、人間の世界を固く信じているからなのだろう。そうであるならば・・・・・・。


「あの、優しい温和な先輩は、全部演技だったって言うんですか? うどんがあんなに好きだって言って、沢山おにぎりとかを食べていたのも」


 ふ、と寂しそうに微笑んだ後、少し穏やかな良く知っている舞先輩の顔に戻り、彼女はまた微笑んで言う。


「いえ、食事が好きなのは本心です。それにですね、日本のとりわけ麺類の中でもうどんや蕎麦は格別です。おにぎりなる文化も凄く興味深かったですしね」


 そう言い、ふわっと浮き上がり、サヨナラの言葉を口にする。


「それでは、またどこかで因果が繋がれば会うこともあるでしょう。味方としてかは分かりませんが。空さん。まず生き延びることを前提にしないと、体が幾らあっても足りませんよ。それを肝に銘じることですね」


 一足飛びに瞬時に遠くにまで行ってしまった・・・・・・。こんなあっさりした別れしかないだなんて。小松さんのことも一言も口にしなかったのは、ある意味で先輩の優しさなのかもしれないが。


 ふと、それから私がユーリに視線を戻してみると、彼女は申し訳なさそうに、目を伏せてナイフを持っている。

 あ、私のか。


 ユーリは私の左手にナイフを渡しながら言う。


「ごめんなさい。ここまで暴走が激しいとは思わなくて。空の右腕、どうにかなりそうなの?」


 無理にここは笑っておかなくては。なんでもないよ、と言うように。


「うんうん。大丈夫よ。要さんに連絡する時にも、NPGへの報告にも、ちゃんと損失は書いて置くから、あっちで色々手配してくれるはずだよ。それより――」


 私はまさか、ここでユーリとももうお別れなのか、と思うと急に寂しさが込み上げてくる。もっと一緒にいたい、と。


「うん、それこそ大丈夫よ、ソラ。わたしはいつでも貴方に会いに来るし、貴方も私が呼んだら来てくれなくちゃ。だって、もうわたし達は契約を結んで、貴方はわたしの使い魔みたいなものなんだから!」


 空元気なのか、とんでもないことを楽しそうに言う。


「ええ?! あれってそういう契約だったの? 聞いてないわよ?!」


「だって言ってなかったんだもの」


 えへ、と舌を出す魔女。


 ――逆らえないなあ、とつくづく思ってしまう。・・・・・・でも。


「あのさ、ユーリは旅から旅で、私は機関の人間で、この先の生活がどうなるかも分からないし、一緒にいられる時間がどれだけあるか。日本にばかりユーリはいられないでしょう?」


 そう言う私に、胸をポンと叩いて、安心してと言う彼女は、どこか頼もしく見えるが、それが彼女の魔女としての意志の強さなのかもしれない。


「日本にも頻繁に来るし、この国にも怪異の被害は沢山あるでしょう。それより、ソラに会いたくて。――なに? ソラはわたしと会いたくないの?」


「ううん。会いたいよ。だってこんなに名残惜しいんだもん。出来るなら機関なんか抜けて、ユーリの戦いをずっと手伝いたいくらいだから」


「それは駄目ね。ソラじゃついて来るのも難しい局面も増えると思うわ。今回は無理言って手伝わせたから、こんなことになっちゃったんだし」


「そ、そう言わないでさ。私達はパートナーみたいなものでしょう。だったらお互いのピンチは助け合いたいと思うのが当然じゃないの?」


 う、と顔を赤面させて照れるユーリ。あ、これはちょっと面白い。


「そ、そうね。わたし達は一心同体。それならもっと色々と一緒に対策を考えるのもいいかもしれない」


「うん。じゃ、私は事務所に戻るけど、ユーリは? まぁともかく、これからもよろしくね、星の魔女さん」


 ふふ、と二人で笑い合う。これだ。この感じが安心するんだ。


「それはこちらの台詞よ。わたしにちゃんとついて来てよね。魔眼を持った人間のソラさん。でも今日はここでお別れね。また会いましょう、すぐに糸の繋がりを見ることになるわ」


 何も言わずその時は、知らず手を差し出して、握手を交わし、私達はそこで違う道を歩いて行ったのだった。




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