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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
第7章
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第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に5

 目が熱い――。


 相手の中に入っていく感覚は、あの吸血鬼の暗い部分に触れてしまうようで、気持ち悪さもひとしおにもなる。


 ――――スベテヲヒネリコワセ。


 何かが壊れそうで。螺旋の反転が。頭が回る錯覚もあって。自分が壊すモノとしての器になり。

 それが本当の魔眼の発動は、全ての世界という世界を破壊してしまいそうな衝動に変わっていく感覚に襲われてしまいそうで。


「うぅぅ・・・・・・! あああ!」


 集中しろ。私の精神力で、私の心の在り方とか正気を保てるかが決まるんだから。


「グオオオオオオオオオオ!!!」


 耳をつんざく様な、獣に近い咆吼が突如として耳に聞こえる。

 ハッと思ったら、それはあのシン・クライムから発せられていた。

 もうそれは小松さんの声ではなくて、別の何かに変わってしまったと、ハッキリ自覚してしまわねばならない瞬間でもあった。


 周囲でユーリの〈フラクチャー〉が展開されていて、傍の敵の群れはズタズタになっており、穴の方ではユーリがそこに〈ムーン・サファリ〉で何かをしようとしている。


「もうちょっと我慢して! ソラが大丈夫なように気をつけながらね!」


 無茶言うわよ。我慢はしろ、敵は倒せ。こんな状況がそもそもきついから仕方がないんだけど。


 ――落ち着いて、再び魔眼の発動を始める私。


 これを掛けると、神経がそれだけに満たされて、世界が全て消えてしまった様な気分になる。

 一人ぼっちの静寂、みたいな感じ。


「グオオオオオオオオ!!!!」


 咆吼は尚も聞こえる。だが、こちらにはそんなことに構っている余裕はなく、ただ自分の能力の行使に余念はない。


「ハアアアア――!!」


 こちらも釣られたのか、気合いを入れる為に、叫びをあげながら、魔眼を懸命に解放していく。

 こちらの神経や魔力炉が音を上げそうになるくらい、全開に回路を開いて、魔眼に全てを賭ける。


 グチャグチャドロドロと崩壊していくシン・クライムの群れ。

 そして粉々になったそれが消えていき、視界が晴れる。


 そうするとユーリが見えるのだが、私はまだその魔眼を使いたくて仕方がなくて、眼がどうしようもなく疼いてしまう。


「お、おさまれ・・・・・・!」


 何とか押しとどめようとしているのに、目を瞑ったり、逸らしたりしているけど、目が痛くて痛くてズキズキして、グチャグチャにセカイを自己崩壊させたくて。


 私の精神はそれに支配されそうになって、どうしようもなくなってしまいそう。


「ソラ! やっぱり無理は禁物だったか――でも、これで拠点の位置は大体掴めて来たから、ソラを完全にグレードアップさせれば、何とかなるかも」


「うぅ? ユーリ、危ないから離れてくれなきゃ、私・・・・・・!」


「わかってるわ。ソラ、少し触れるわよ。しばらく我慢してて」


 そう端的に言い、ユーリは額に触れる。


 ああ、そうか。〈ムーン・サファリ〉は先程の結界を弄ったりするのにも使えるけど、私の体の調節にも使えるんだっけ。

 だから儀式を施して、私の調整もするって言ってたんだから。


 鋭い痛みが続いていたのが、次第に治まっていく。

 ユーリの能力は、もしかして人間の精神をも操作出来るのかもしれないなとか思うのだけど、どこまで弄れるものなんだろうか。


「さ、これで一応いいはずよ。とりあえず帰って、しばらく休んでから、準備してたコトをやりましょう」


「う、うん。分かった。ありがとう。でもここはこれで引いちゃっていいの?」


「今はやれることはないわよ。どこかに隠れちゃったから。あっちも開こうとしている時にやらないと、こういうのって強引な無理は利かないものなの。それにここでこれ以上やり合ったら、ソラが壊れちゃうわ。シン・クライムも引いてくれて助かった」


 早口で捲し立てるユーリ。それだけ彼女にも焦りや緊張がある証拠かもしれない。


「じゃ、じゃあ。ユーリの肩貸してくれるかしら。私、消耗がかなり激しいみたいで」


「ふふ。そんなことなら、こうしてあげるわよ。わたしには簡単だしね」


 立ち上がろうとする私を、ユーリは一気に抱き上げてしまう。


「ふえっ?!」


 一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 え? これってお姫様抱っこをされてるのかな。そうだとして、このタイミングで?!


「い、いい、いいわよ。歩けるって。降ろしてくれていいから」


「だーめ。ソラを運ぶのも今日の仕事の内なの。疲れた兵士は素直に救命班に身を委ねるのよ」


 その比喩は何なの?!


 でも有無を言わせない雰囲気のユーリの態度は優しさなのか、それともユーリの余裕のなさがこんな頓狂の行動に駆り立てたのか。


 それとも何か別の理由があるのか。


 気恥ずかしさを覚えながらも、体も小さく体重も軽い私を、魔女であるユーリが魔力も駆使してこんなことをするのは、そりゃあ簡単だろうと思って、もう観念することにしたのであった。


 一応、これはこれで嬉しい私もいたりしてさ。

 ユーリととにかく色々近いのは、色々な感情が縺れて、極度に緊張してしまうのだけども。




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