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魔眼女とノーブル・ウィッチ  作者: 藤宮はな
第4章
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第4章暁紀美枝の見ていた景色1

 うぅぅんむむ、と何やら唸り声の様な物音を聞いて、ハッとして目が覚める。

 しばらく時間が経過してから、それは自分の声であったと気がつく。

 なのだが、どうも疲れが取れず、しばらくはまた目を閉じていた。


 パチ、と目を開けると、そこにはじっくりとこちらを眺めてニコニコしているユーリが頬杖をしながら、こちらを見下ろしていた。

 というよりも、この子凄くニヤニヤしてると言った方が正解かもしれない。


「な、ユーリ?! どうして寝室にまで来てるのよ。えっと、昨日はどうしたんだっけ」


 ボンヤリとした思考で思い出そうとするのに、全然帰宅後の記憶がない。ない。


「ソラ、あの後すぐに気を失っちゃったからさ、もっとちゃんと効率良く戦えるように、わたしとキミエでまた魔眼の組織の調節をしたのよ」


 ふふ、とまだ笑っているが、その話は笑い事じゃないよね。かなり私ヤバいよね?


「うん。でも寝顔は安らかだし、少しうなされてたけど、大丈夫ね。すっごく寝顔も可愛いわよ、ソラ。やっぱり少女っていいものよね」


 不穏な発言が通り過ぎた気がするが、あまり突っ込まない方がいいのかな。それとも他の事に言及すべきか。


「っていうか、寝てる所見てたの? どうして、そんな恥ずかしい真似するのよ。起こしてくれたら良かったのに」


 ぶーっと頬を膨らませるユーリ。可愛いけれど、それで許されると思ったら大間違いだから。


「だって、眼鏡取った顔が忘れられなくて、もっと見ていたいって思ったんですもの。それに寝かせておいた方がいいと思ったから。素顔のソラってば、とても綺麗な顔立ちなのもあるし、それに加えて少女だからこその幼さとかね、すっごく純粋な人間の姿を見られて、ドクドクしちゃうんだもの」


 何て褒め殺しなのだろうか。私はそんなに可愛いと言われる様な人間でもなければ、特別童顔だとかそんなのでもない。

 ましてや容姿に恵まれているとは、これまでの人生で感じたことなど一度もない。


 なのにユーリは子供だからいいと言う。それもやっぱり長生きしている魔女だからこその発言かしら、と一瞬思うのだが、それにしては人を愛玩動物の様な愛で方をしてくれるじゃないの。


「そう言ってくれるのは嬉しいけどね、ユーリ。あのさ君ね、私をペットの犬か何かと思ってないでしょうね」


 私のその言葉にプッと吹き出す魔女さん。あなたの方が愛らしいという言葉がピッタリなほど、無邪気に笑っていると思うけど。


「なーに。大人扱いして欲しかったの、ソラったら。わたしはただ眼鏡を掛けてる時よりも、それ以上に素顔がもっと視たいって言ってるだけよ」


 そう、と一呼吸間を開けてまた紡がれるユーリの台詞。


「そんなに精神に問題を抱えてるのに、純粋な心でもあるっていうんですもの。捻れてるのにスレてないって興味深いなって思う」


「あのねえ。別に私は何もおかしな所はないよ。だって、生活してても学校でも何も問題は起きないんだもの。紀美枝先生にだって、何もそんな指摘はされないわよ」


「自覚がないからこそ、なのよ。でもそんなソラでもまだ人間としての真っ白な部分はあると思うの。少し魔力炉を弄ってて、そんな風に視えたからさ」


 ふーむ。そう言われてはもう何も言えないな。好きに解釈してちょうだいと言うしかないよ、こっちは。


「そう、それじゃ着替えるから、出て行ってよ」


「あら、今日は制服は着なくていいって、キミエが言ってたわよ。どうせなら、何かキュートな服を着ましょうよ」


「ええー? そんなの持ってないし、それだと夜に動きにくいんだから。って、学校に行かないとマズいんじゃなかったっけ」


 む、と思って時計を見てみると、だ。どうやらもう今は昼の一時を過ぎている。

 ああ、それでこんな所でユーリは私の寝顔なんて見てたんだ。そう、調査にも行かないで。


「大体、そう言うユーリもシンプルな服装じゃないの。人には色々と注文つけるのに」


「わたしはいいの。もうそういう楽しみは過ぎてるから。それより青春娘さん、スカートだけでも何かないの。ねえ」


 ・・・・・・しばし沈黙。変な形容をされてるなぁ、と思いながら。そしてああと思い至るのは、前に歩に押し付けられた、ちょっと盛ったスカートが奥にあったな。

 でもそれを言うと、この顔のユーリをますます喜ばせるだけだ。


「あ。その顔は思い当たるのね?」


「す、鋭い。――うー、ええい。分かったわよ。それなら裾がちょっと違うスカートを出します。出しますとも。それでいいんでしょう」


「うん!」


 何がもうそんな時期は過ぎた、ですか。一番はしゃいでるのはユーリじゃないの。

 それでもそんないい笑顔を見せられたら、こっちが赤面しそうになるくらい眩しいくらいで、だから少しこれも悪くないわね、と思ってしまう。


 そうして、奥に封印していたその何かヒラヒラっとしているが、一応はプリーツスカートだろうそれを出した。

 うん、そうは言うもののそこまでヒラヒラしてはいない。ちょっとアクセントになってるくらいで、普通のプリーツスカートと変わらないと言ってもおかしくない。

 うん。そうよ。


「・・・・・・って、だから出てっててば。着替えを覗く趣味でもあるの?」


「ああ、ごめんごめん。それいいわね。あっちで待ってるわ」


 ようやく一人になれた。昨日はあれから寝てしまったから、昨日の服のままだ。だから素早く着替えちゃわないと。




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