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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第一部 戦乱の兆し 篇
7/55

第二章 ヤト村受難曲 2.救援者

「た……助かった……」

「……礼を……言わせてくれ……子供たち……」

「こいつら何なんだ? おっちゃん」



 逃げているのが顔見知りと見るや、問答無用で投石紐(スリング)を振るって立て続けに二人を(たお)したヤーシア、溜息を()いて残り三人を【水鉄砲】で射抜いたマモル。マモルが倒した者のうち、まだ息のある二人を縛り上げたソーマ。


 流れるが如き見事な連係であった。



「ともかく、こいつらを叩き起こして事情を訊くか……」

「そうですね。また僕がやりましょうか?」

「い、いや、待ってくれ! そんな事より、村に(しら)せを!」

「ベイルという盗賊が、村を焼き討ちするつもりだ!」

「「「何だって!?」」」



・・・・・・・・



 事情が変わったという事で二人の捕虜をさっくり始末すると、マモルたち三人はヤト村への道を急ぐ。その後を必死に追って来るのは凸凹コンビの二人組。息を切らしながらの二人の説明によると……



「俺たちは……ここへ来てから……村で片手間仕事を貰ったり……獣を獲ったりして……暮らしてたんだ……」

「そうしたら……ある時……ソン・ベイルと名告(なの)る男が……やって来て……仲間に入れと……迫ったのだ……」

「何だか……信用できそうになかったから……断ったら……殺すと言われて……」

「逃げ出して……隠れていたら……ヤト村が目障りだから……焼き討ちすると……立ち聞きして……」

「報せようとしているところを……運悪く……追っ手に()(くわ)して……」



 そんな状況でもヤト村に急を告げようと、決死の思いで向かっていたらしい。馬鹿が付くほど善良な男たちであった。



「――停まって! ……それらしき連中がいます。人数は……僕に判る限りで十名と少し」

「へっ! なら楽勝だぜ!」

「抜き身を提げて松明(たいまつ)を持っている。間違いないようだな」

「一応確認してみましょうか。……お二方、あの連中に話しかけてみて下さい」

「お、俺たちがか?」

「あいつらは我らを殺そうとしているのだぞ?」

「大丈夫。お二方に危害が及ぶような事にはなりませんから」

「二人とも、この子の言うとおりだ。安心して()(ただ)してみろ」



 ソーマの言葉で安心したのか、先程の手並みを思い出したのか、(はら)(くく)った様子で盗賊らしい十余人を怒鳴りつける凸凹コンビ。



「やーい! お前たち、そこで何をしている!」

無辜(むこ)の村人に危害を加えるような真似は、天が見過ごしても我らが許さぬぞ!」


(「……台詞(せりふ)だけは一人前だな、おっちゃんたち」)

(「そう言うもんじゃないよ、ヤーシア。自分たちも命を狙われているのに村へ急を告げに走るなんて、中々できる事じゃないよ」)

(「確かに、拙者も(いささ)か彼らを見くびっていたようだ」)

(「ちぇっ、解ってるよ、そんな事」)



 そうヒソヒソ声で言葉を交わすマモルたちの前で、



「……何だ()(めえ)ら、態々(わざわざ)殺されに来やがったのか?」

「丁度好い。村の連中を皆殺しにする前に、景気付けの血祭りに上げてやらぁ」

「な、な、何を言うのだ。お、お、お前たちなど……こ、こ、怖くはないぞ」

「そ、そうだ。どうせベイルって悪党の差し金だろう。勝手な真似はさせねぇぞ」

「へっ! 解ってねぇようだな。お(かしら)が折角この辺りの悪党どもを掃除してやろうってのに、そいつらを逃がそうなんて村の連中こそ、悪党だろうが」

「そ、そ、そう言うお前こそ、この先を根城にしていた夜盗ではないか。ベ、ベイルのやつに取り入って、い、生き延びようというのだろう」

「そんな()(めえ)らを仲間にしてるベイルって野郎も、(しょ)(せん)は同じ穴の(むじな)だろうが!」

「うるせぇ! ()(めえ)らから先に片付けてやらぁっ!」


「はい、有罪(ギルティ)



 マモルが宣告すると同時にヤーシアの投石紐(スリング)が唸りを上げ、立て続けに四人の男たちが倒れ伏す。



「なっ!?」

「ぐわっ!」



 いつの間にか気配を隠して近寄っていたソーマが剣を振るうと、たちどころに四人が血煙を上げて(たお)れる。



「わ、わわっ!?」

「ひっ! に、逃げ――がっ!」



 逃げようとした四人は【隠身】を発動して隠れていたマモルの【水鉄砲】に撃ち抜かれ、



「う……うぁ……?」



 運好くか悪くか【水鉄砲】を潜り抜けた一人は、マモルの【毒手】の餌食となった。



「どうやら片付いたようですね」



 ――フラグであった。



・・・・・・・・



「何だとぅっ!? 全員が()られたってのか!?」

「ほ、本当なんで。妙な連中が出てきたかと思ったら、あっという間に……」

「……それで……()(めえ)一人、おめおめと逃げ帰ってきやがったのか!?」

「ほ、報告をしねぇと(まず)いと思って……そ、それに、中の一人は黒髪の小僧っ子だったんで……」

「――黒髪の小僧っ子だ?」

「へ、へぇ。お(かしら)が探していなすったガキじゃねぇかと……」

「むぅ……」



 仲間を殺されて逃げ帰ってくるような臆病者に用は無いが、報告が無かった場合の事を考えると、確かにそっちの方が(まず)い。それに黒髪の子供というのは、フォスカ家に関係しているのではないかと探していた相手かもしれぬ。……だとすると、単なる(おとり)や使い走りとは違うのか? ともあれ重要な情報には違いない……



「よぉし……気に食わねぇが、()(めえ)の言う事も(もっと)もだ。今回は見逃してやる」

「へ、へぇ……ありがとうごぜぇやす……」



 命拾いをしたという顔の男の傍で、別の部下が問いかける。



「それで、お(かしら)。村の連中はどうしやす? それに、その生意気な連中は?」

「……忌々しいが、さっきシカミ家への仕官が決まったってぇ使いが来た。仮にも主持ちとなっちまった以上、そうそう勝手な真似もできねぇ。それに……シカミ家は何やら急いでいるみてぇでな。すぐにも来いとのお達しだ。……ちと心残りだが、シカミ家への手土産って目的は果たした」

「それじゃあ……」

「運好く生き残った虫けらどもなど放って置け。ベイル傭兵団の初陣だぜ」

本日はもう一話投稿します。次話投稿はおよそ一時間後の予定です。

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