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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第三部 戦乱の拡大 篇
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第十五章 フォスカ家不正規戦~後方攪乱~ 4.引き抜き工作(その2)

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 ゼムの提案はその場で承認され、土魔法を使えるカーシンとディクトが翌日から復旧に当たる事になった。マモルも土魔法は使えるが、まだ復旧戦力として当てにできるレベルにはないという事で、作業への参加は見送られた。

 その代わりにマモルが仰せつかったのが、新たにフォスカ陣営に参加した元鳥役人のトバと組んでの通信攪乱作戦であったが、この辺りの経緯については既に述べたところである。


 優秀な魔術師二人が実行した事で、間道の復旧は三日間で一応終わる。とは言っても、小規模の部隊が徒歩で行軍できる程度であり、馬車は勿論馬での通行も考慮していない。また、間道の出入り口付近は、擬装を兼ねて敢えて手を着けていない。代わりに出入り口付近に転移マーカーを設置してある。


 間道が一応復旧した翌日、マモルが兵営にカガを訪ねて報告混じりに雑談していた時……驚くべきと言うか呆れるべき提案をしてのけた者たちがいた。



「……は?」

「……今、何と言った?」

「だから、イーサ領に忍び込めるってんなら、そこからシカミの陣営に潜り込んでだな……」

「傭兵として参加している者を引き抜く事ができないかと思ったのだ」



 聞いただけでは正気を疑うと言うか意味の解らない話であったが、サブロとハルスの凸凹コンビの提案はこういうものだった。



・マナガに対する敵意から、旧イーサ軍の残党の少なくない人数がシカミ軍に参加している。しかしそうは言っても、やはり同郷(イーサ)の人間に対して刃を向ける事を躊躇(ためら)う者は多い筈である。


・そういう中で見どころのありそうな者を、新生フォスカ軍に引き込みたい。フォスカ家はイーサと事を構える予定は無いのだから、説得もし易い。


・反マナガ連合軍がトーチ戦線で行なった残虐行為のせいで、連合軍の一員であるシカミ家の評判は急落している。(こと)に、残虐行為の実行犯であるベイルをトーチに差し向けたのがシカミ家であるとの評判が立った事で、シカミ家への信頼感は大きく揺らいでいる筈だ。


・ヤト村が突如として消えた話はある程度広まっているらしい。その原因にベイルの蛮行があり、なのにシカミ家はそんなベイルと引き替えにヤト村を見捨てたという話が広まれば、シカミ家に対する不信は更に強まるだろう。


・自分たちは元々イーサの兵士だから、シカミ領に潜入する抜け道などは熟知している。また、仮に住民に目撃されても、今の軍なり代官なりに注進するような者はイーサの領民にはいない筈だ。



 ただの思い付きかと思いきや、意外にしっかりした見通しと計算の上に成り立っている事を知って考え込むマモルとカガ。とりあえず会議に(はか)ってみようという事でマモルがこの件を持ち帰ったところ、(あん)(じょう)最初は呆れられたのだが……



「しかし……後方攪乱の策としては面白いのでは?」

「戦意に乏しい傭兵が数名消えたところで、シカミ側もさして不審には思わぬかもしれんな」

「実際にこちらがする事は、あの二人を間道の出口まで送り届けるだけ。あとは結果を見ておればいいわけですから……」

「上手くいけば儲けもの、外れてもシカミの現状を探るくらいはできそうだな」

「あのおっちゃんたち、逃げ隠れだけは得意そうだもんな」



 ――という次第で、ある意味人を食ったこの計画が実行に移されたのであった。


 ちなみに、間道の出口近辺は擬装のために復旧していないとあって、凸凹コンビには護衛を兼ねてマモルたちが同行している。これには別の狙いもあって、期限が間近に迫ったソーマのノルマを、イーサの冒険者ギルドで達成させておこうというのだ。マモルが抜ける間のトバの護衛は、ディクトが代わってくれる事になった。



・・・・・・・・



 そして話は現在に戻り……



「まさか二十名以上が参加してくれるとは……」

「マナガとベイル、よっぽど嫌われてるんですねぇ……」



 ――という事になっているのであった。


 ちなみにこの二十余名、転移ではなく徒歩で間道を抜けて来ている。予想より人数が多かった事に驚きはしたものの、数回に分けて転移で運ぼうと申し出たカーシンに対し、当の兵士たちから謝絶の声が上がったのである。



〝魔導師殿のご厚意には感謝するが、この間道を使用する可能性が少しでもあるのなら、実際に一度歩いて状況を確認しておきたい。難所とか所要時間とか、兵士の目で実際に見ておいた方が良いだろう〟



 屈強の兵士が二十名もいれば大概大丈夫だろうという事で、彼らの申し出は受理された。ただし、出口に着いたとの連絡が入った時点でカーシンが【転移】で迎えに行った。二十余名の兵士が人目を避けてフダラ山まで行軍というのは、さすがに無理と判断されたためである。


 若干の紆余曲折はあったが、新生フォスカ軍は新たな兵力を得る事に成功したのである。

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