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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第三部 戦乱の拡大 篇
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第十五章 フォスカ家不正規戦~後方攪乱~ 3.引き抜き工作(その1)

「思った以上に人材がいたな……」

「マナガもベイルも、とことん嫌われてるんですねぇ……」



 呆れたように言葉を交わしているのはカガとマモル。場所は新生フォスカ軍の兵営兼居留地である。二人の視線の向く先にいるのは、シカミ家支給の装備を(まと)った兵士たちの姿。しかし、かれらは()(はや)シカミ家の兵士ではなかった。



「あの二人も()くやってくれたものだ……」

「本当に……。話を聞いた時には正気を疑いましたよ」



 事の起こりは……そう、イーサとシカミとの間で戦端が開かれたという報告を受けた時にまで遡って説明するのが適切だろう。



・・・・・・・・



 ――シカミ家、イーサとの領境に布陣――


 その報に接したフォスカ勢が、次の戦線はイーサとシカミの間に開かれると予想したのは当然であり、そこからイーサ戦役――マナガによるイーサ侵攻――の事に話が飛んだのも理解できる流れであった。マナガによるイーサ奇襲の手際は、それをやらかしたのがマナガであるという点を除けば、フォスカ家の面々ですら感心せざるを得ないほど鮮やかなものだったのである。


 そんな会話の()(なか)、何やら考え込んでいたらしいゼムがポツリと漏らす。



「……その間道ですが……ある程度でも復旧しておいた方が良くはないでしょうか?」

「……すみません。間道って?」



 そしてそれを受けてマモルが不審そうな問いを発したのも、当然と言えば当然であったと言えよう。


 ここで読者のためにイーサ戦役について少しお復習(さら)いしておくと――


 〝領地拡大を狙うダズ・マナガは交易都市であるサームの支配を(もく)()み、その第一手としてイーサの併合に着手。シガラから進発した主力が街道を通ってイーサに進軍。イーサからもこれを受けて迎撃軍が出発、サームとの中間点辺りに陣を張ってマナガ軍を待ち受けた。

 ところが、マナガの別働隊が魔獣の(ばっ)()する丘陵地を抜けてイーサの背後を奇襲、浮き足だったイーサ家迎撃部隊はマナガの主力に蹂躙される。イーサ家は領都イーサに立て籠もって反抗するも、やがて一族郎党討ち死に、イーサの町も戦火に焼かれる結果に終わる。

 旧イーサ領を併合し、サームを事実上の支配下に治めたマナガであったが、自分が採ったのと同じように丘陵地を抜けてシガラを襲われる事を懸念し、架かっていた橋を落とすなどして間道を封鎖した……〟


 ――という事になる。



「つまり……マナガがイーサを奇襲する時に用いた間道の事ですか? それを復旧させる?」

「はい。当家に力を貸してくれている方の中には、イーサ家の(ろく)()んでおられた方も多くいらっしゃいます。そのような方々の目的は、フォスカ家再興というよりもマナガへの復讐でございましょう」

「それはそうでしょうね」



 フォスカ家には別に恩も恨みも無いが、憎きマナガに一泡吹かせる事ができるなら――という思惑(おもわく)から、新生フォスカ軍への参加を決めた者も多い筈だ。



「であれば、フォスカ領回復の暁には、イーサ領解放の手助けくらいは……と」

「待って下さい。イーサ領の解放? そんな動きがあるんですか?」



 マナガの所業に恨みを抱く者も多いだろうし、占領軍に対するレジスタンス活動くらいはあってもおかしくない。ただ、それを事実として確認できているかどうかは別の話である。



「手前がちらりと耳にしましたところでは、イーサ解放を唱える一部の過激派が地下に潜っているとか、領軍上層部はそれを摘発しようとしているが、中堅層以下の者は一向にやる気がないとか……そういう話がございましたな」



 さすがに元は旅芸人のゼム。訪れた先での情報収集に抜かりは無かったらしい。



「……マナガはとんでもない火種を抱え込む事になったわけですね」

「それで――話を戻しますが、少なくとも少数の兵が移動できる程度には、密かに復旧しておいた方が良くはないかと愚考いたします次第。今は特に使う予定は無いでしょうが、その時になってから慌てるのも情け無い話」

「……ゼムさんは、場合によっては先にイーサ戦線に介入する事も視野に?」

「介入と申しますか、ちょっかいをかける程度には」

「先走った話になりますけど……もしもイーサの独立となると、元イーサ兵の皆さんはそっちに行っちゃうんじゃないですか?」

「その場合は、元イーサ兵の代わりに、新生イーサがフォスカの後ろ盾となりましょう。その場合に間道はイーサの機動力を高めると同時に……」

「シガラの独立を保証する、と」

()(よう)で」



 策士二人の陰謀論に、居並ぶ一同は呆れて声も出ない。特に、この二人がどちらも軍とは無関係の出自を持つ――片や迷い人、片や旅芸人――という事実に。



「……イーサへの表立った支援は、フォスカ領回復の後――という事でいいんですね?」



 フォスカ領を回復すれば、マナガの鉾先(ほこさき)がこちらに向くのは当然。イーサへの支援は、それに対する牽制の意味も持つ。



「そうすれば、マナガめを少しは慌てさせる事もできようかと」

「じっくりと腰を据えてこっちへ向かってこられたら迷惑ですからねぇ……」

()(よう)で」

「そのためには……イーサ独立の種火を消すわけにはいかないと」

「はい」


年末年始(12/30~1/4)にかけて、短めの新作を投稿します。今までとは少し毛色の変わった作品になりますが、宜しければご一読下さい。

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