表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第三部 戦乱の拡大 篇
38/55

第十三章 トーチ戦線 3.転換

 ベイルを驚愕させた、そして不機嫌にさせた撤退命令であるが、元を辿(たど)ればこれもベイルの自業自得であった。


 そもそも首脳部の予定では、トーチ戦線はマナガに対する嫌がらせであり、地道にネチネチとチマチマとチクリチクリと、長い時間をかけてマナガの戦力を()いでいくための場所であった。一気に敵領内に侵攻して決戦を挑む――などというのは最初から予定に入っていなかったのだ。当然、そのための戦備も支援体制も整ってはいない。

 なのに、そんな思惑(おもわく)を吹き飛ばす勢いでベイルが(しゃ)二無二(にむに)戦線を突破、トーチ領内に侵攻しての本格的な戦いに移行させられたわけである。

 小競り合い程度を予想していた貧弱な支援体制はついに破綻。戦線を整理して補給や支援の体制を構築し直すまでは、これ以上の侵攻が不可能になった――というのが今回の経緯(いきさつ)であった。現に食料の在庫は危険なまでに減少しており、現状のままでは兵士が飢えるという事態を覚悟せねばならないところまできていた。



「そんなに食いもんが減ってたって? 横流しでもしてるやつがいるんじゃねぇのか」

「いえ。前線は毎回かなりの激戦になっていますからな。それを考えると無理のないところでしょう。負傷兵も食糧は普通に消費しますし、補充兵も増えましたからな」

「あぁ……懲罰部隊から引き抜いてきたやつらがいたか。それを考えりゃ、不足もするか」



 ――実際には、遅延工作からの帰りがけの駄賃とばかりにマモルが掻っ払っていったのであるが、そんな事に気付く者はいない。


 ともあれ、これまで鬼神の如き(こう)(りゃく)を進めてきたベイルであったが、ここへきてついにその勢いに(かげ)りが見えてきたのであった。



・・・・・・・・



「とにかく、一旦戦線を整理しないとどうにもならん」



 渋い顔で戦況図を見つめているのは、ジン・ケイツを筆頭にした反マナガ連合首脳部の面々。



「現在の戦線はかなり(いびつ)になってますからな。あの馬鹿が頑張った場所だけ戦線が押し込まれて、なのに他の部分はそれほど前進していないので、この一部だけがトーチ領内に突出した形になっています」

「下手をすると、先鋒が包囲されて全滅という危険性も……」

「あの馬鹿は縦横無尽に暴れ廻る事で、包囲陣を完成させない手に出ていたようですが……正直言って、他の部隊にはそこまでの機動は……」

「全く……働き者の馬鹿というのは始末に負えんな……」



 当初の予定を(ことごと)くひっくり返された首脳陣。その鬱憤(うっぷん)の向かう先はベイルしか無いようだ。しかし戦術的にも、今の状況が(まず)いのは事実であった。



「先鋒が包囲殲滅される危険性だけでなく、伸びきった補給線にも不安があります」

「面倒な包囲陣を作るまでもない。補給を絶たれるだけで先鋒部隊は終わりです」

「かと言って、下手に兵を引けば……」

「勢いに乗った敵軍が逆侵攻してくるだけでなく、自軍の意気はだだ下がりか……」

「何よりあの馬鹿が承知しますまい」

「現状を維持しつつ、戦線の歪みを解消するしか無いか……時間がかかりますな」

「それだけではありませんぞ。このままトーチ領内への侵攻を続ければ、マナガめの宣伝戦術を裏書きするばかり。我が軍への、()いては我らが領への風当たりが強くなるばかりでしょう」



 一同の目は揃ってジン・ケイツに集まった。



「……当初の想定とは少し異なる状況になったが……予定どおり第二段に移るとしよう」

「では……」

「うむ。手始めにイーサ領への仕掛けから始めてもらおう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ