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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第三部 戦乱の拡大 篇
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第十三章 トーチ戦線 2.反撃

 その夜、久しぶりにベイル率いる一隊がトーチ領内に侵攻した。



 疾風の速さで駆け抜ける先鋒と後続との間が空いたと見るや、身を潜めていたトーチ兵が後続のシカガ軍に襲いかかって足止めを図る。後続との連携さえ断ってしまえば、数に劣るベイル勢を包囲して仕留めるのは容易(たやす)い。今までは取り逃がしていたが、その悪運も()(よい)まで。ベイルの行く手には重厚な包囲陣が待ち構えている。袋の鼠となった怨敵ベイルの首級、今夜こそそれを亡き者たちに捧げる時だ。


 ――そう思ってシカガ軍の足止めにかかっていたトーチ兵の背後から、不吉な馬蹄の音が迫る。



「何っ!?」



 足止め部隊の指揮官は我が目を疑っていた。猪武者よろしく駆け去った筈のベイルたちが、反転して急襲を仕掛けてきたのだ。シカガ軍とベイル勢、両者に挟撃される形となった足止め部隊の命運は極まった。



「よぉしっ! 行くぜ!」

「「「「「おぉうっ!」」」」」



 (とき)の声を上げて走り去って行くのは、それまでシカガ軍に紛れ込んでいたベイルの主力。その正体は、各地の懲罰部隊から引き抜いてきた補充兵たちである。真面目に訓練など受けていない連中であるから、複雑な連携機動などできるわけが無い。そんな彼らに与えられた指示は単純なものであった。すなわち――ベイル率いる先鋒が足止め部隊を始末したら、少し間を空けてベイルの後に続く事。そして……



・・・・・・・・



「来たぞ……ベイルの悪党だ。間違い無い」

「今までは取り逃がしていたが、今夜こそその悪運も尽きたようだな」

「予定の場所にかかったら、一気に包囲を閉じて袋の鼠だ」



 得たりと待ち構えるトーチ軍であったが、何か勘付いたのか、ベイルは途中で足を停める。これでは囲いを閉じる事ができない。



「ちぃっ! 勘の良いやつめ! やむを得ん、手順とは少し違うが、敵は無勢、味方は多勢。一気に押し包んで仕留めるぞ!」

「「「「「おぉっ!」」」」」



 復讐の念に燃えたトーチ兵が、一気にその姿を現してベイルに迫る。ベイル率いる先鋒はせいぜい五十騎、対するトーチ兵は二百に迫る。数の優位は圧倒的……な筈であった。



「ぐわぁっ!」

「な、何だ!?」

「敵襲っ!」

「馬鹿なっ!? 背後から!?」

「うわぁっ!」



 姿を現したトーチ兵の背後を突き進むのは、シカガ軍に紛れ込ませていたベイルの本隊。彼らに与えられた指示はただ一つ。


 ――トーチ軍の背後を進み、片端から切り崩せ。全滅させる必要は無い。足を停めずに進み、トーチ軍全ての背後に攻撃を浴びせろ――


 見通しの利かぬ闇の中。包囲した筈の自軍が逆に包囲されていると思った兵士たちは浮き足立つ。その隙を()いて、ベイル麾下(きか)の精鋭たちが局所的な挟撃に移る。ベイル直率の部隊は、盗賊時代からベイルと行動を共にしてきた腕利き揃いだ。当然のように息の合った機動を見せ、トーチの包囲陣をズタズタに切り裂いていく。



 この夜、トーチ軍は大敗を喫し、その戦線を大きく後退させた。



・・・・・・・・



「面白ぇように巧くいったじゃねぇか。さすが俺の軍師だぜ」

「こちらの兵力を欺き、かつその配置を悟らせねば当然の事です。思ったよりも敵の数が多かったようですが……そのせいで(かえ)って敵は痛手を(こうむ)ったようですな」

「よぉしっ! この勢いに乗って追撃……といきてぇところだが、今夜は無理か」

「ベイル様直率の部隊はともかく、新兵どもは戦慣れしておりませんからな。勝利に浮かれて気が抜けておりましょうし、第一、夜戦の経験なぞありません。下手に動かして待ち伏せでも喰らったら、泡を食って逃げ出すやもしれません。しばらくは簡単な戦しかできぬかと。……ベイル様には面白くございますまいが」

「面白くねぇのは事実だが、ショウゼンの言うとおりだってのも解ってる。今夜は一応歩哨を置いて、明日からの進撃に備えるとするか」

「それがよろしいかと」



 話が(まと)まりかけたところで、伝令が本陣からの命令を伝えてきた。



「馬鹿な……撤退だと?」

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