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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第三部 戦乱の拡大 篇
34/55

第十二章 フォスカ家不正規戦~遅延工作~ 2.イリーガルな作戦

「ヤーシアはまだ()ねているのか?」

「いえ、それが……先程見た時には、ものに()かれたように投石の訓練をしておりました。自分が不甲斐無(ふがいな)いばかりに作戦から外された――そう思っているようですな」

「ふむ……ソーマ殿としては、その辺りどうなのだ?」

「同じく(じく)()たる思いを禁じ得ぬのは事実でござるが、()(たび)の作戦は練達の魔導師であるカーシン殿と……そして、不正規戦の何たるかを知っているマモルにしかできぬものでしょう」

「それに、マモルには得体の知れぬスキルもあるしな」

()(よう)。あの【隠身】あればこそ、マモルもあのような作戦を思い付いたのでしょうな」

「上手くいくとよいが……いや、仮令(たとえ)上手くいかずとも、無事に戻って来てくれさえすれば……」

「心配はご無用でござろう。何しろあの二人ですからな」



・・・・・・・・



(「先生……どうにか探り出しました。ベイルは今夜仕掛けるようです」)

(「ならば先廻りさせてもらうとするか……【転移】!」)



 今回の不正規戦は、マモルとカーシンの二人だけによるものである。

 【隠身】を始めとするマモルのスキルがあれば、敵陣――皮肉な事に、今回は反マナガ連合軍の陣地――に潜入してベイルの所在やその動向を探り出す事は難しくない。また、カーシンの【転移】は、長距離こそマーカーの設置が不可欠だが、目に見えている程度の距離であれば、マーカーの必要無く転移が可能である。

 ステルス性能と機動力。この二つを兼ね備えた二人組であるからこそ、この作戦が可能となったのである。そして【隠身】と【転移】を最大限に使うために、言い換えると魔力の消費を抑えるために、余計な人員の参加は見送られたのであった。



・・・・・・・・



(「先生、来ました。予想どおりベイルが先鋒。シカガ軍はかなり遅れてその後に追従しています」)

(「ふむ。下馬評どおりの猪武者か。後続との連携など、まるで考えておらぬとみえる」)

(「仕掛けますか?」)

(「いや、今少し待て。夜間の炎は人目につく。ベイルが気付いて舞い戻って来れば、この作戦は水の泡であろう?」)

(「そうとも限りません。後続と離れた場合には各個撃破される。その懸念を抱えている以上、ベイルは行き足を抑えるしかありませんから」)

(「全く……()くもそこまで知恵が回るな。とは言え、ベイルが先に行ったままの方が、美味しい結果になるであろうが」)

(「だったら……僕が【ダークネス・フォール】を使ってみましょうか? ベイルたちの目隠しをする程度なら、二~三分ぐらいは()ちそうです」)

(「ほほぅ……感心に修練を欠かさなんだとみえるな。ならばやって見せよ。師たるこの(わし)が検分してやろう」)



 マモル渾身の【ダークネス・フォール】が発動し、夜の闇の中に新たに闇魔法による闇の(とばり)が下りる。一件無駄のようなこの行為に何の意味があるのかは、次に続いたカーシンの行動が示してくれた。



「【ファイアーボール】!」



 火魔法による火球が後続のシカガ軍の前に着弾し、驚いた馬が(さお)()ちになり、先頭の混乱と急停止によって後続が更なる混乱に陥り……結果を一言で云えば、後続のシカガ軍の進軍が一時停止した。なお、カーシンの【ファイアーボール】は、敢えて出力を抑えてある。火勢を抑えて発覚しないようにするという事もあるが、何より威力を抑える事で、魔術師の特定を避ける事が主眼である。何しろカーシンが本気で【ファイアーボール】を撃てば、その被害は激甚なものとなる。――と同時に、それだけの火魔法を放てる者は少ないため、それだけ犯人が絞られる事になるのである。


 立場上シカガ軍を攻撃したなどと知られるわけにはいかない二人にとって、これは絶対に必要な配慮であった。それに……今回の作戦ではシカガ軍の被害は度外視していいのである。



(「ふむ……上手い具合に連携を絶てたようだな」)

(「えぇ。これでベイルは後続の支援無しにトーチ軍と戦う事になります。縦横無尽に走り廻る騎馬とは言え精々が五十騎。今までほどの戦果は見込めないでしょう」)



 マモルの予想どおり、後続部隊の支援を欠いたベイルたちは苦戦に陥った。


 後続が現れる事を前提にして敵陣深く突入した、その果断な行動が今回は(あだ)となって、ベイルたちを苦境に落としていた。



・・・・・・・・



 結局、シカガ軍はこの日さしたる戦果もなく引き上げざるを得なかった。先鋒を務めたベイルたちも、数名の犠牲者を出して撤退した。


 それだけでなく、この日の戦いの一部――マモルたちの姿は【隠身】によって見られていない――を見たトーチ兵によって、先鋒と後続との分断戦術が採用される事になり、シカガ軍の進軍を遅らせる結果となったのである。



 ――マモルたちの狙いどおりに。

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