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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第二部 戦乱への備え 篇
28/55

第十章 フダラ山地 1.森の調査

 ――シカガ領の戦線で何やら妙な動きがあったらしい。


 それ自体気になるところではあるのだが、新生フォスカ軍としては、遠くの戦争を気にする前にやっておくべき事が山積みであった――例えば原木の伐採とか。


 目下フォスカ家勢力が隠れ住んでいるフダラ山地は、一面の樹海と呼んで差し支え無いような場所である。よって木材の入手には事欠かない筈なのだが、生憎(あいにく)とこの場所は凶暴な魔獣が跳梁(ちょうりょう)(ばっ)()する魔界でもあった。気安く木を伐りになど出て行ける場所ではない。樹海の奥地に存在するカーシンの館は言うに及ばず、ずっと浅い位置にある居留地兼兵営にしてからがそうなのである。

 その一方で、居留地に疎開してきたヤト村の住人は炭焼きや木挽(こび)きを生業(なりわい)とする一族であり、生計の手段として原木を必要としていた。

 そしてまた、生活及び軍需物資の確保に頭を悩ませる新生フォスカ軍としても、木材の入手に無関心ではいられなかったのである。


 このような流れの帰結として、森に出かけて使えそうな材木を伐り出すという話になったのだが……



「……いや? 炭や細工に向いた木など知らんな?」



 大魔導師カーシン。彼は優れた魔導師であるが故に、魔道以外の事――具体的には身の回りの事――にはとんと無関心なポンコツでもあった。仮令(たとえ)千年生き続けていようとも、素材にもならない木の事になど思い(わずら)う暇は無いのである。



「つまり……どこにどんな木があるのかすら、判っていないわけです」



 申し訳なさそうに状況を説明するのは、カーシンの高弟にしてこの旧・合宿所――今は居留地兼兵営となっているが――の卒業生でもあるディクトである。



「ディクトさんもご存知ないんですか?」

「……(ざん)()の至りです」



 暗にカーシンの同類である事を宣言したディクト。師弟という者は似るものらしい。



「そうすると……単に伐り出しに行くのではなくて、最初に樹木の調査から始めねばならんわけか……」



 腕を組んで(うな)っているのは侍大将のカガ・ニッケン。樹木の位置さえ判っていれば、兵を(まと)めてバッと行ってガッと伐ってくる……そういう事を考えていたのだが、実態はそう簡単ではないようだ。



「まぁ……樹種の選別はヤト村の方に同行してもらえば大丈夫でしょうが……」

「ある程度の範囲を歩き廻って調べねばならんのか……」



 結局、ヤト村から二名の男を出し、それを護衛する形で兵士が同行するという事に話が(まと)まる。ただし、山賊紛いの生活をしていた経験があるとは言え、兵士たちとて山歩きがそう達者なわけでもない。



「――で、僕にお鉢が廻って来たわけですね」

(かさ)(がさ)ねすまぬとは思うが、マモル以上の適任を思い付けぬのでな」



 ユーディス姫に懇願される形で同行を引き受けた――引き受けざるを得なかった――マモルであるが、さすがに子供だけに大任を押し付けるのは気が引けたようで、ディクトが護衛に参加する事になった。カガも参加したがっていたのだが、侍大将という職責上それは叶わず、兵士たちを同行させるに留まった。



「当たり前だ。私とて参加したいのを我慢しているのだぞ」



 ――とは、ユーディス姫の弁である。


 ちなみにヤーシアとソーマ、ついでにイヅナは、当然のような顔をして参加した。



・・・・・・・・



「あれ……? あの木……」

「おぉ、()ぅお気付きですな。あれはマーロちうて、木目も中々()ぇもんなんじゃが、実の方が色々と使いでがあるもんで伐らんのですわ。ここにもあったんじゃのう……」

「へぇ……実ってこれか?」



 地表に転がっていた実を()(ざと)く見つけて拾い上げたヤーシアであったが、



「あぁ、毒があるけぇ口に入れんようにな、お嬢」

「毒!?」

「あぁ、毒じゃちゅうても、触っただけでどうにかなるようなもんじゃなぁで、そがいに怖がらんでもえぇでな」

「ちぇっ……脅かしっこ無しだぜ……。毒なんて何に使うんだよ?」

「毒じゃ言うても魚毒じゃでな。川に流して魚を獲るのに使えるんじゃが……川下の衆への迷惑もあるで、あまり使う事は無いのぅ」

「ほぉ……魚毒ですか?」


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