第九章 塩の町 2.土産物(その1)
妙に自信ありげな二人に案内されて、マモルたちが訪れた土産物屋には……
「……干物か? これ」
「けど……随分古いと言うか……食べられそうにないと言うか……」
「いや……それ以前に、見た事の無い魚のようだが……?」
魚の残骸としか見えないものを見て怪訝そうな三人。そんな彼らに店主が説明してくれたところによると……
「はぁ……塩を掘っていると、時々一緒に出てくるんですか……」
「おぅ。食えもしねぇから捨てるっきゃねぇんだが、偶に物好きが買ってくからな」
寡聞にしてマモルはそんな話を聞いた事が無かったが、太古の塩湖の時代に生きていた魚の……一種の化石のようなものらしい。塩湖に魚が棲んでいたとは思えないから、何かの拍子に上流から流されて来て、高い塩分濃度のせいで死んだ後も腐らずに保存されたものだろうか。
「カーシン先生なら喜びそうだよね」
「あの先生ならそうかもな」
――と言う事で、これは買っていこうと話が纏まる。上客と見たのか、土産物屋の親爺は他にも色々と出してきたのだが……
「……これも発掘品なんですか?」
見せられたのは石器である。
「あぁ。この手の物も時々出てくんのよ。……偶にゃ、持ち主らしい屍体とかもな」
その屍体の方は、どこぞの学者が引き取っていったそうだが。
「坊主もそっちが欲しかった口か?」
「遠慮します」
――そんな「嫌気物」は欲しくない。
どうもここの岩塩層、石器時代から塩湖もしくは塩の堆積地として利用されていたらしい。これらの石器などは塩を採りに来た古代人の遺物だろう。祭祀場として使われ、供物として捧げられたものもあったかもしれない。
たかが先史時代のものがそこまで深く埋まるものか? マモルはそういう疑問を内心で抱いたが、どうやらその少し後の時代に「大変動」とやらがあったらしい。詳しくは解らないが、そういうものがあったというなら、先史時代に地表に露出していた塩湖が地中深く埋まる事くらいあるかもしれぬ。いや、現実に埋まっているのだから、そこは納得するしかない。
何にせよ、先史時代の出土品が出てくるくらいなら、それ以前のものらしい古代遺物は出てこないだろう。
そう思っていたら……
(「……マモル、どうかしたのかよ」)
泥の塊を見て硬直したマモルに気付いて、ヤーシアが小声で訊いてきた。
(「あぁ……いや……ちょっとね……」)
(「その泥んこが欲しいのか?」)
(「うん……けど、僕が言い出したら、足下を見られそうで……」)
自分が顔色に出る質である事を、そろそろ自覚したマモルゆえの悩みであったが……
(「……おっさんはこっち見てねぇな。よし! あたしに任しとけ!」)
訊き直す暇も与えず、ヤーシアは出土品の一つ――いかにも高そうな勾玉――を手にとって声を上げる。
「おっちゃん! これいくら!?」




