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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第二部 戦乱への備え 篇
25/55

第九章 塩の町 1.塩の町、サルド

 従魔術師(テイマー)を含む盗賊との戦いから五日後、ゴーラムを出発してから八日後に、マモルたちはサルドの町に到着した。三日前に立ち寄ったムーロという町で運好くサルド行きの乗合馬車を見つける事ができたため、予想していたより早い到着となったのである。……(もっと)もマモルの感覚では、ゴーラムでサルド行きの馬車を見つけられなかったのが()(てつ)もない不運という事になるのだが。いや……それよりも……



「……ったく、あの先生がここにマーカーってのを設置してくれてりゃ、こんな面倒な事にならなかったのによ」

「それは仕方がないよ、ヤーシア。カーシン先生がマーカーを設置するのは、基本的に素材の採集ポイントだから。ここは岩塩の採掘地ではあっても、素材の採取ポイントじゃないからね」

「まぁ、若いうちから楽な道を覚えると、(ろく)な大人にならんぞ」

「そうだぞ小娘。若いうちの苦労は買ってでもするものだ」

「へん。そんなの、年寄りが面倒事をあたしたちに押し付ける時の決まり文句じゃないか」

「なっ! 年寄りとは何だ! 小娘!」

「あたしよりは年寄りだろ!」



 例によって口論を始めそうな三人を横目で眺め、マモルはこれまた例によって手慣れた様子で(いさか)いを流しにかかる。調整能力の高さだけ見れば、既にリーダーの器である。



「この町って岩塩だけしか採れないと思ってたんですけど……随分食料品の店が多いですね」

「あぁ、それはこういうわけなのだ」



 マモルの巧みな誘導にあっさりと乗って、教師肌のハルス・アーヴェイが解説にかかる。それによると……



「あぁ……岩塩層のせいで井戸水が使えないんですか……」

「そうなのだ。そのせいで、飲用や農業用の水は、全て遠くの川や井戸から運ばれて来る」

「ここじゃ水一杯でも高い金を取られるから注意しろ」

「けどさ、おっちゃん。だったらこの野菜とかは何なんだよ?」

「だから、ここでは作物が一切穫れぬから、他所(よそ)から作物を売りに来るのだ」

「そんな連中のせいで、青物市場が賑わってるわけだな」

「青物以外にも、食料品のほとんどは町の外から運ばれて来ているのだ。そのせいで(かえ)って、時には珍しいものが手に入る」

「変わったものが食いたきゃ、まずサルドに行けってな」

「「「なるほど……」」」



 旅慣れ世慣れたサブロとハルスの凸凹コンビ、こういう時には実に便利な存在であった。



「ハルスさん、ここの岩塩坑ってどういう感じなんですか? 特に乾燥した気候とは思えませんし、露天掘りじゃありませんよね?」

「うむ。露天掘りではないが、垂直な坑道を掘って採掘している形式だな。何でも岩塩層のあるのは、かなり深い部分らしいのだ」

「へぇ~」



 どうもここの岩塩層は、太古の塩湖の跡のようだ。地中深く埋もれ圧縮されて、現在のような岩塩になったのだろう。


 博識のハルスから色々と教わりつつ、マモルたちは当初予定の岩塩と、採掘道具の幾つかを買い揃える。塩による腐蝕を嫌ってか、道具の多くは青銅製であったが、普通に使う分にはそう問題あるまいと考えて購入した。相場を熟知したサブロとハルスがいるせいで、値段の交渉はスムーズに進んだ。



「さて……一通りのものは買い揃えたようだし……後は宿を取って休むとするか?」

「ソーマの兄ちゃん、折角だからその前に、土産物とか見てこうぜ」



 はしゃぐヤーシアに促され、まぁそれもいいかと土産物屋に足を向ける一行。



「……けどさヤーシア、ここ、塩しか無い町なんだよね? 塩以外の土産物って、そもそもあるの?」

「そりゃ……土産物屋があるんだし……何かあるんじゃないか……?」



 どうやらヤーシアにも確信があったわけではないらしい。



「いや、心配は無用なのだ。ちゃんとサルドならではの特産品がある」

「まぁ、面白ぇかどうかは別だけどな」

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