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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第二部 戦乱への備え 篇
19/55

第六章 フォスカ軍食糧問題 2.食料計画

少し短いです。

 ――新生フォスカ軍の食糧をどうするか。


 これは地味に頭の痛い問題であった。


 何しろ現在フォスカ家の残党は、フダラ山地に隠れ住んでいる状態である。居留地が広いとは言っても、さすがに農地を作れるほどではない。外部を開墾しようにも、ここは名だたるフダラ山地。カーシンの館ほどに山奥ではないとは言え、出てくる魔獣も並みではない。農地の開墾とその維持など、考えるだに愚かな事であった。


 しかしそうなると、食糧をどこから持って来るかという話になる。旧領民の中にはフォスカ家に心を寄せる者も少なくない。彼らから買い集める事は可能だが、そうすれば必ず代官の、()いてはマナガの察知するところになろう。



「まぁ……しばらくは姫から提供された軍用食があるから問題無い。味はともかく、量だけは充分あるらしいからな」



 あぁあれか――と内心で納得するマモル。言うまでもない事だが、かつてマモルたちがヤト村に(あだ)なしていた盗賊たちを始末した時に、戦利品として獲得したマジックバッグの中身である。

 ちなみにこの軍用食、ソーマが(かっ)()したとおり、軍需物資の横領品であった。それが判明した経緯(いきさつ)は、(くだん)の軍用食と武器を新規採用の兵士たち――具体的に言うと落ち武者たち――に提供した事が発端となっていた。彼らの中に旧・イーサ家の浪士が――凸凹コンビを含めて――数名おり、その彼らが一様に()(げん)な表情を示したのである。その表情を見て(いぶか)しく思ったカガが浪士たちに事情を訊ね、返って来た答えが「イーサ家のものに酷似している」というものであった。

 カガ経由でその事を聞いたマモルがやって来て、実は是々然々(これこれしかじか)と事情を説明したところ、彼らの怒り狂う事。そんなやつらはイーサ家の面汚し、火事場泥棒の(たぐい)であると烈火の如く憤激し、討伐したと聞けば()くやってくれたと大喝采。その物資をマモルが接収したのも、それをユーディス姫に提供したのも、更にはそれが廻り廻って自分たちに戻って来たのも、これ神々の采配に他ならぬと、いたく感心する事(しき)りであった。


 まぁ……確かに奇妙な因縁(いんねん)には違い無い。



「けど、量はともかく味はあの調子ですからね。長期にわたって三食アレばかりというのは、健康にも精神衛生にも良くなさそうですし……どこかで食料を調達する必要はあると思いますよ?」

「うむ……」



 ちなみにマモル本人は【光合成】【窒素同化】【融解吸収】で充分栄養を(まかな)えるが、一般人はそうはいかない。マモルも普通に食事は摂るが、栄養摂取と言うよりも、消化管が萎縮しないようにという意味が大きかったりする。そのせいで普段から小食になり、大人たちを心配させているのはここだけの話。



「幸いにして、当座の軍資金は充分以上に確保できましたし、食料の入手と備蓄を考えるべきではないでしょうか?」

「ふむ……確かに三食アレでは志気にも関わってくるな……姫に上申しておくか」

「それが良いと思います。ただ……完全に購入に頼るというのも不安ですし、幾らかは自前で確保する事も考えるべきでしょうか」

「うむ。幸か不幸か寄って来る魔獣を狩れば、肉だけは充分に確保できそうだ。ただ……主食となる麦の(たぐい)如何(いかん)ともな……」

「樹木ならいくらでも生えていそうなんですけどねぇ……」



 エネルギー源となる炭水化物を、どこからどういう形で入手するか。


 新生フォスカ家が抱える食糧問題は、意外に深刻なのであった。

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