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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第二部 戦乱への備え 篇
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第六章 フォスカ軍食糧問題 1.発端

「現在の兵員数が四十名弱、非戦闘員であるヤト村の人たちが二十名ちょっと……全然問題にもなりませんね」

「まぁ、今すぐ事を起こそうというのではないからな。人員については少しずつでも増やしていくしか無い。それにマモルとカーシン様には、何か腹案があるのだろう?」



 居留地兼兵営となった旧・合宿所の一室で相談しているのは、マモルとカガ、それにゼムという、新生フォスカ軍の参謀本部とも言うべき面々であった。



「まぁ……考えている事はありますけど……そっちの方はいつになるか正直不明なので、当てにはしないで下さい」



 爆薬の事は隠していたつもりなのに、どうしてこう簡単に悟られてしまうのか。マモルは己の腹芸の下手さが呪わしくなったが、今はそんな事を気にする時ではない。



「兵員の募集は長い目で見るとして……その間に手を着けるべき問題が幾つかある」

「拠点と戦備の事でございますか?」

「そのとおりだ」



 幸か不幸か現在の兵員数ではどちらも問題にならないが、この先兵員が増えてくると、拠点と戦備の不足が問題となるのは明らか。今のうちに考えておかないと、いざその時になって慌てても遅いのである。



「かと言って……拠点の方は、ある程度の人数が揃わないと維持すらできませんよね?」

「身の程を外れた砦など造れば、目立ちましょうからな。今は小規模の見張り小屋のようなもので充分ではないかと。その程度のものでも、有ると無いとでは随分と違いがございますからな」



 野宿の経験からだろうか、ゼムはやや遠い目をしているが、その指摘自体は間違いではない。



「……カーシン先生とも話していたんですけど、寡兵で大軍を相手にするには、大軍が展開できない場所に誘い込むのが常道ですよね? お二方ならどこを戦場に選びます?」



 言われた二人は改めて卓上の地形図――カーシンの手になる古代遺物(アーティファクト)の写し――に目を落とす。



「……現状は問題外として……少なくとも中隊程度の戦力が揃わんと話にならん。その程度の兵で維持できる拠点と、その程度の兵で闘える戦場を考えると……」

「フォスキア城は無理でございましょうな」

「無理だな。あの城はそれなりの防御力はあるが、それも平均的なものでしかない。その上に大きさだけは大きいから、中隊程度では充分な守備も覚束(おぼつか)ん」

「城の周りも平地でございましたし、大軍を展開するには(むし)ろ打って付けの場所でございますし」

「姫様には申し訳ないが、フォスキア城の奪還は今しばらくお待ち戴くしかないな」

「そうすると……?」

「想定すべき戦場は山間地か丘陵地……フォスキア城の北・西・南という事になる」

「しかしながら、北は地形が急峻でございます。大軍の分断には申し分ございますまいが、敵も敢えて兵を進めようとはしないのでは?」

「うむ。そうなると西か南という事になるな。だが、西に進めばあの裏切り者のナワリ村があるぞ?」

「逆に言えば、そこならマナガ勢が布陣してもおかしくありませんよね? 誘い込むという点では都合が好いのでは? ダンジョンの魔物(モンスター)(けしか)けるという手も考えられますし」



 相も変わらず悪辣(あくらつ)な事を言い出すマモルに、カガとゼムも(いささ)か引き気味である。



「……しかしながら、秘密裡に準備を整えるという点では、やはりナワリの存在は厄介なのではございませんか?」

「ですね……先に潰した方が良いのかな……」



 ……どうしてこの少年は、こうも過激な方向に進むのか。



「いや……憎むべきナワリを誅伐する事に異存は無いが、そうすると否応無く我らの事が露見するぞ?」

「それもそうですね……そうなると想定戦場は……」

「フォスキア城の南西に広がる山間地となるな」



 戦場の選定が終わったところで、今度は拠点の話になる。



「カガさん、今いる人員だけで、現場の下見とかは可能ですか? 砦の設置場所とかですけど」

「さて……魔獣の存在があるからな……マナガほどの大軍であれば、魔獣など気にせずに進軍できようが……だがまぁ、シカミの山に潜んでいた経験もあるし、下見程度なら何とかなろうよ」



 カガの口ぶりから、あまり楽観はできなさそうだと察するマモルとゼム。現状では下見に人的資源を浪費できるほどの余裕は無い。



「まぁ、そっちの方はもう少し陣容が整ってからでもいいでしょう。幸いこちらには精確な地形図がありますから、大まかな選定はここでも可能ですし。現場で手軽に構築できて、少人数でも維持できる砦の設計などを、先に詰めた方が良いかもしれませんね」



 マモルの提案に、カガも一も二も無く同意する。必要とあらば異を唱えるつもりは無いが、現状の兵力を消耗しそうな作戦には、指揮官として同意しにくいのも事実である。



「そうすると……当面考える必要があるのは戦備、特に食糧の問題ですよね」

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