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なりゆき乱世2~もう一人の梟雄~  作者: 唖鳴蝉
第一部 戦乱の兆し 篇
13/55

第三章 新生フォスカ家 4.フォスカ家戦略会議(その3)

 マモルが放った爆弾のせいで顔を強ばらせたまま硬直したユーディス姫。

 その心境を(おもんぱ)ってか、カーシンがしばし休憩の動議を提出し、それは満場一致で採択された。



・・・・・・・・



「よぉマモル、あまりお姫様を(いじ)めんなよ。固まってたじゃんか」

「別に(いじ)めたわけじゃないよ? けど、前もって決めておかないと、土壇場になって意見が(まと)まらないようじゃ困るんだよ」

「そりゃそうかもしんないけどさぁ……」

「別に難しく考える事は無いんだよ? 敵討ちを優先するか、領地回復を優先するか。ただし、両方っていうのは無理、それだけの事なんだけどね」



・・・・・・・・



 二時間ほどの休憩を挟んで再開された会議の冒頭、少し落ち着いた様子のユーディス姫から所信表明があった。



「マモルの諫言(かんげん)を受けて決めた。領地の回復を優先する。マナガの首を取るのはその後だ」

「……一日か二日、ゆっくりお考えになってからでもよかったのでは?」

「いや、こういうのは早めに決めておかんと、皆が迷惑する。……大丈夫だ。首を取るまでのしばらくの間、マナガめを手玉に取ってやるだけ。そう考えれば何ほどの事もない」



 まだ少し顔色は悪いが、きっぱりと言い切った姫の表情に迷いの色は無い。そう見て取ったマモルは、(うやうや)しく姫に一礼した。



「私が未熟なせいで、マモルには余計な気苦労をかけてしまったな。私の事は気にせずに続けてくれ」



 いつの間にかカーシンではなく、マモルが司会進行役のように思われている。マモルは視線でカーシンに問いかけるが、カーシンはしらりとした表情で、そのまま続けろと視線を返す。まぁ、次の議題に関する限り、マモルが司会を務める方がやり易いかもしれない。



「解りました。それでは次の議題は、マナガが雇った対魔術戦の部隊についてです」



 この話は初耳だったとみえて、ユーディス姫を始めとする数名の表情が動く。が、誰一人として口を開く者はおらず、マモルの説明を待っている。



「カガさん……ニッケン様の部下の中に、その闘いをご覧になった方がおいででした。マナガはフォスキア城を攻める時に毒と(だま)()ちという手を使いましたが、魔術戦に対する対策も練っていたようです。乱戦に持ち込んで範囲攻撃を封じ、目潰しや煙幕で狙いを惑わし、飛び道具を使って遠間から仕留める……魔法の攻撃が何度か直撃しても、意に介さずにそのまま襲いかかって来たとか」

「ふむ……察するに、抗魔法の護符のようなものであろう。数を揃えておけば、それなりには使えるのでな」

「先生はこの手の……対魔術兵にお心当たりが?」

「対魔術戦の技術自体は、昔から研究されておったからな。そういった戦術を専門にする集団がおっても不思議は無い」

「具体的な戦術についてはご存知ですか?」

「先程マモルが言ったようなものだな。条件を選んで範囲攻撃を封じる、煙幕などを使って攻撃の狙いを付けさせぬ、姿を隠して遠間から狙い撃ちする、護符や特殊な防具を使って、魔法攻撃に対する抵抗性を高める……大体そんなところであろう」

「あの……よろしゅうございますか?」



 ()()ずと手を挙げたのは相談役兼軍師のゼム。元が旅芸人だけに、あちこちで見聞きした知識の広さは半端ではない。



「……手前も耳にした事がございます。ニガラの衆と呼ばれる方々は、特異な武器と体術を使い、魔術師相手にも引けはとらぬとか。マナガが雇ったのも彼らではないかと……」



(ニガラ衆……忍者みたいな連中かな……?)



 もしもそうなら対策を考えておいた方が良い。



「その、ニガラ衆と似たような……間諜に()けた一族は、他にはいないんですか?」



 忍者の相手は忍者にさせるのが――時代劇の――鉄則だろう。そう考えたマモルの質問は……



「……いるような事を聞いた事はあるが……詳しくは知らないな」

「同じく」

「拙者は聞いた事があるが……何分東国の話ゆえな。この辺りの事は知らぬ」

「申し訳ございませんが、生憎(あいにく)と……」



(あぁ……最悪独力で打ち破るしか無いか……)


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