表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天冥聖戦 本編 伝説への軌跡  作者: くらまゆうき
シーズン4 メテオ海戦
79/205

第4ー19話 死合い惹かれ合う想い

世界で間違いなくという言葉は存在するのだろうか。



誰もが間違いなく負けると思われた戦いを勝利してきたもの達はどれほどいるのだろう。



第三者は無謀だの愚かだのと言うが、勝利した途端に手のひらを返してすり寄る者はいかほどか。



小舟一艘で大艦隊へと突入した愚か者達を天上界では哀れんで鼻で笑うのか。



冥府軍のアルテミシア軍団を率いてきた女帝は間違いなく逃げ切れるものと考えていたのだろう。



だがここに来て小舟で乗り込んでくる愚か者の存在まで想定しているはずもない。



予想外とはいかなる時でも訪れるが、賢き者は対応が早いものだ。



小舟の存在に気がつき直ぐに矢の雨を降らせたアルテミシアの判断は早かったが、結果として巨大船に穴を開けられ突入された。



だが船内に待機する精強な不死隊達がそれを迎え撃った。



人数に限りがある虎白達だったが、船内最下層にて甲斐、お初、夜叉子が残ることになった。



階段を駆け上がる虎白は次の階層へと辿り着くと、刀を力のかぎり振るっている。



すると双剣を手に素早く斬り込んでくる精鋭に出くわして一同の足はまたしても止まったのだ。




「あら、私はこの辺りからしら。 虎白行きなさい。 私はここで戦って甲斐達と合流するわ。」

「いくら戦神でも危険ですわ。 お供致しますの。」




不死隊をいとも簡単に斬り捨て、白くて可愛らしい小顔に赤い血をつけて笑う戦神の隣で鳥人の戦士長もその場に留まった。



魔呂と鵜乱は二層目で戦闘を始めると、虎白の背中を力強く押して先へと進ませた。



そして急遽、虎白と行動を共にする事になった海賊衆と彼らを率いる短髪の良く似合う琴は各階層に残る者達を助けていた。



最下層で戦う甲斐達を援護するために数名の海賊衆が残り、この二層目でも数名が残った。



三層目へと向かう者は虎白と竹子、優子姉妹に琴と数名の海賊衆だ。



階段の周囲を守る不死隊を斬り捨てると、手すりに飛びつく勢いで掴まった虎白は足早に駆け上がった。



やがて三層目に辿り着くと巨兵と言われる体の大きな不死隊と船室を埋め尽くすほどの髑髏の軍団が待ち構えていた。




「はあ・・・まだこんなにいるのか・・・」

「はあしんどいわあ・・・仕方ないわな・・・虎白さんやったな? 一つ頼まれてくれるか?」

「ああ。 言わなくてもわかっている。 お父上の仇は俺が取るよ。 残ってくれるか?」




死ぬつもりで進んだこの中間地点の海域。



最愛の父と仲間の死に直面した琴はもはや生き残る希望すらなくなり仇討ちに燃えていた。



そんな海賊娘に突如として舞い込んだ希望の光りとなった虎白と仲間達。



もう少し生きて未来を見てみようと短髪の娘は刀を力強く握った。




「ええで。 あたしらはここに残るわ。 後は頼んだで。 もし生きて帰れたら仲間に入れてな!!」

「海軍の指揮を頼むぜ琴!! 行くぞ竹子、優子!!」




それだけ言って走り去る虎白と美人姉妹の後ろ姿を見ている琴の表情は清々しく、消えていた瞳の光りが希望で輝いていた。



死ぬつもりだったが、もしかすればこの男に賭けてみれば生き残れるかもしれない。



では生き残った後に待っている未来を見てみようじゃないかと爽やかな笑みを溢すと数名の海賊衆と共に最後の力を振り絞った。



階段を駆け上がった虎白の前にあるのは大きな扉だ。



押し上げる様に扉を開くと眩しいほどの日差しが差し込めた。



目をつぶった虎白はうっすらと半目になりながら最上階である甲板へと出ようとしていると細くて美しい手が伸びてきたではないか。



やがて目が慣れてくると、そこには黒髪の美しい女が背中に双剣を携えてしゃがんでいる。




「驚いたな。 まさかここまで追いかけてくるなんて。 さあ上がれ。」

「近くで見ると美人じゃねえか。 不死隊なんぞ率いてねえで降伏しろ。」

「追い詰められているのはそっちよ。 で、あなたは何者? 人間ではないね?」




虎白に手を差し伸べたアルテミシアは甲板に上げると爽やかに話していた。



名を名乗った虎白は鎧の帯に差している刀を今にも抜こうとしている。



やがて上がってきた竹子と優子も甲板を埋め尽くすほど待ち構えている不死隊を前に刀に手を当てた。



だがアルテミシアは双剣を抜くことなく虎白の名前を聞くと驚いた様子をして周囲の髑髏の仮面の者達と顔を見合わせている。




「捕獲対象じゃないか。 これは偶然だ。」

「なんだと?」

「あなたは生け捕りにしろと冥王から命令されていてね。 天上界制圧はならなかったが、これで目標達成だ。」




そう話すアルテミシアに首をかしげる虎白は自身の生け捕りの理由がわからずにいた。



安心した様子で虎白を今にも捕まえようとしているアルテミシアは爽やかに笑っている。



だがここで捕まれば仲間達は殺されてしまうというわけだ。



冥王の命令は虎白の生け捕りのみで竹子達は抹殺するべき障害にすぎない。




「悪いが捕まるわけにはいかない。」

「当然か。 では死合うしかないわね。」

「悪い女には見えねえがお互い譲れないものがあるようだ。」

「そこの美人な二人の相手は私の部下が請け負うわよ。」




アルテミシアが細い顎を振ると、甲板を埋め尽くすほどの不死隊が竹子と優子に殺到した。



そして女帝は変わらず爽やかな笑顔を見せながら背中に携えている双剣を抜くと表情を一変させた。



勇ましい表情で睨みつける女帝の気迫に答える様に二本の刀を静かに抜いた。



鞘から刀が抜かれる甲高い音の余韻が消える前に斬りかかってきたのはアルテミシアだ。



刃を交えた双方は見つめ合いながらも戦っている。



まるでお互いがどの様な性格なのか探っているかの様に。




「随分といい男の様だな。」

「それは俺の台詞だ。 俺の元に来い。」

「ある意味そうなるさ。 行き先は冥府だがな。」




互いに惹かれ合い始めているが、刀と剣を激しくぶつけ合っている。



本能的とは言え、かつての故郷である安良木皇国の武技である二刀流を扱いこなしている虎白の卓越した剣技に平然と渡り合うこの女帝もやはり傑物というわけだ。



金属のぶつかる激しい剣戟の音に割って入る様に口を開くアルテミシアと虎白は戦いながら、お互いを理解し始めていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ