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天冥聖戦 本編 伝説への軌跡  作者: くらまゆうき
シーズン1序章 消えた神族と悲劇の少年
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第7話 健気さが繋いだ

 誰だって生まれる時代を、選ぶことはできない。才色兼備で、誰が見ても可愛いと口にする外見であっても、彼女らが身につけることになったのは、化粧やカメラの前で踊った動画を投稿する知識ではない。

 刀術や弓術といった、人を殺す知識だ。

 「姉上」と確かに口にした少女も、カメラの前で踊れば、申し分ない再世数を獲得できるであろう素晴らしい外見をしている。だが、そんな彼女は死地にある姉上の救出のために、滑稽なとんがり帽子を率いて、走り込んできた。


「許しません! 祐輝殿の弔い合戦です!」


 透き通る綺麗な声を、響かせて戦う姉上は、酷く乱心している。妹が直ぐそこまで来ているのに、まるで視界に入っていない。

 方や冷静な虎白は、突如乱入してきた少女と、とんがり帽子の存在に気がついている。


「もう助からねえと思っていたが、連中を利用すれば逃げ切れるか」


 軽やかに、二刀流を振るって周囲の怨霊を蹴散らすと、少女の元へ急いだ。複数人のとんがり帽子に守られている少女は、竹子を救うために戦っている。

 やがて肉眼で、彼女の可愛らしい顔が、はっきり見える距離まで近づくと虎白は、状況を話した。


「お前竹子の妹なんだろ?」

「こ、皇国武士だ! お、お侍さん......あ、姉上は?」

「乱心して、お前のことに気がついてもいないんだ。 竹子は、俺が抱きかかえて逃げるから、時間を稼いでくれないか?」

「神族のお侍さんが、そう仰るなら承知致しました」


 あどけなさが残りつつも、礼儀正しい受け答えをした少女は、とんがり帽子らに指示を出すと、竹子の周囲へ向かわせた。銃を放ち、銃の先端に装着されている短い剣を、怨霊に突き刺している。

 やがて竹子の周囲に近づいたとんがり帽子らは、乱れ狂う竹子を守りながら戦った。虎白は、その隙に竹子のくびれた細い胴回りに抱きつくと、軽々と持ち上げて、少女が待つ後方へ走った。


「は、離して虎白なにするの?」

「何も今直ぐ死ぬことはねえってことだ。 きっとお前もあの娘この顔を見れば、もう一度生きようと思うだろうよ」


 虎白に担がれたまま、両手、両足を激しく動かす竹子は、今だに怨霊を斬るために戻ろうとしている。やがて少女は、担がれている姉の姿を確認すると、とんがり帽子達を撤退させた。

 怨霊の激しい追撃も、優秀なとんがり帽子達の反撃によって一時的だが止まった。この僅かな時間を得た、虎白は少女と共にこの死地を後にした。



 一時間ほど、竹子を担いだまま逃げ続けた虎白は、静かな広い公園を見つけると、一息ついた。担ぎ続けた竹子を丁寧に下ろすと、少女と再会させた。


「あ、姉上......私ですよ」

「笹子ささこなの?」

「はい。 姉上が戦場いくさばに倒れたあの日から、ずっと探してきました。 死してなおも私は、姉上を探していました」


 虎白は、奇妙な再会を果たした美人姉妹を静かに見ていた。言葉こそ出すことはなかったが、彼女らの共通点とも言える健気すぎる性格に関心している。

 竹子は、二百年もの間、手当てをしてくれた敵将の一族を見守り続け、笹子は最愛の姉を同じ年月も探し続けた。手を取り合って、再会を実感している姉妹を見て、微かに微笑んだ。


「本当に大した姉妹だな」

「素晴らしかね。 あげな姉妹なかなかおらん......」


 虎白の独り言に返したのは、いつの間にか隣で美人姉妹を微笑んでみている男だ。とんがり帽子の指揮官なのか、その男だけは、黒い毛皮を被っている。


「お前その毛皮、動きにくそうだな」

「そげなことなかよ。 それより狐のお侍が、まだおったとわ」

「ああ、鞍馬だ」

「鞍馬!? そげな名を聞いたことが......なんじゃったかなあ......ああ、わしは新納にいろ言います」


 新納にいろは、たくましい体つきに、立派な髭を蓄えている。とんがり帽子らの指揮官で、笹子の父親的存在というわけだ。

 その証拠に、美人姉妹の再会を見ている新納の表情は、強面とはかけ離れ、今にも解けてしまいそうなほど緩んでいた。


「それにしても、お前や部下達はいつから笹子と一緒にいるんだ?」

「もういつじゃったかなあ......わしらも元は、お嬢じょうの敵だったと。 怪我して動けんくなっとったお嬢を拾ってきたんが最初じゃ」

「竹子と似たような経験をしたんだな。 あの姉妹には、敵すらも魅了しちまう不思議な魅力があんだな」


 こうして虎白と竹子の元に、笹子と新納が連れるとんがり帽子の部隊が加わった。仲間が増えたことに安堵する虎白は、最大の謎である消えた記憶と、自分が怨霊達に狙われている理由を調べようとする。

いつも読んでくださって本当にありがとうございます。


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