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天冥聖戦 本編 伝説への軌跡  作者: くらまゆうき
シーズン4 メテオ海戦
63/205

第4ー3話 本日より建国いたす

巨大な土地に王都オリュンポスから移り住んでくる者や最近になって天上界へと来た者達が次々に移住している。



日本家屋が立ち並ぶ町並みを満足気に見ている虎白は背後にそびえ立つ城にも感無量といった笑みを浮かべた。



遂に国の建国がなったというわけだ。



記念すべき日に天王ゼウスや秦国の嬴政が祝いの席についた。




「立派な国になったではないか鞍馬よ。」

「ええ、これもゼウス様のご支援の賜物ですよ。 問題ばかり起こした俺を国主にまでしてくれるなんて。」




笑いながら白い髭をわしわしと触っているゼウスは子供の様に可愛がっている虎白の即位を思うと飲み始めた酒が止まらなかった。



長机に並べられている食べ物を豪快に食しながら天王は虎白の顔を見つめた。



雷の様に青く鋭い瞳を向ける雷神は先程までのごろごろとした高笑いが消えて、いつになく真面目な面持ちではないか。



異変に気がついた虎白も白くてもふっとした耳をひくひくと動かしながら首をかしげている。




「めでたい。 しかしな、お前達が冥府に行った事で兄上が鞍馬が戻ってきた事に気がついてしまったのだ・・・」

「ハデスですか? ああ・・・サタンにも追いかけられたしなあ・・・」




今は亡き虫の王である蛾苦の最愛の妻である鈴姫を救出した冥府潜入の大事件は結果として天上法を犯したが大勢の命を救って戻った事から無罪となっている。



だが、冥府という世界を荒らしまくった虎白と嬴政の存在をかの国の王が黙認するはずもなかった。



うなだれた表情をしながら肉を食らっている天王ゼウスは自身の兄であるハデス王がテッド戦役以来、動かす事のなかった重い腰を上げていると話した。



それはつまり冥府軍が天上界に攻め込んでくる可能性を示唆したのだ。




「お、俺らが暴れたせいでハデスが・・・」

「いや、いい。 結果としてお前は大勢の我が民を救って戻ったのだ。 感謝しているぞ。」

「ハデスが攻め込んできたら天王はどうするおつもりで?」




罪悪感を感じている神族の狐からの問いに雷神の老人は僅かな沈黙を生んだ。



やがてため息を吐きながら口を開くとゼウスは声を低くして「皆で戦おう」と話した。



当然そうなるかと親友である嬴政を顔を見合わせてうなずくとまだ見ぬ冥府軍の襲来に焦りを感じた虎白は席から立ち上がると表情を強張らせている。




「こうしちゃいられねえな。 早く兵の訓練して戦える様にしねえと・・・」




小さい声でそう話した親友の言葉を隣で聞いている暴君と呼ばれた過去を持つ始皇帝こと嬴政は白くて細い腕を掴むと静かに首を振っている。



民を守りたい一心から軍隊の編成と訓練を急ぎたい虎白の気持ちは嬴政には痛いほど理解できた。



しかしその民への思いが暴政へと繋がるのだと冷静な表情で親友を諭している。




「虎白よ、今は落ち着いて国を整えろ。 もし冥府軍が来たのならまた俺の軍を動かせばいい。」

「見上げた友情だなお前達。 だが嬴政よ。 何もお前の秦軍だけではないぞ。」




ごろごろと低い笑い声を轟かせている天王ゼウスは天上界南側領土に存在する強国の話しを始めた。



秦国の嬴政は超大国として名高いが、南側領土の最高権力者というわけではなかった。



ゼウスからの信頼厚い、有力者が南側領土を支配している。



嬴政はかの者の顔を思い浮かべると口を開いて何度かうなずいた。




「ですが天王。 あの男と虎白の気が合うとはとても思えませんが。」

「同感だな。 しかし未曾有の危機ともなれば協力する他あるまい。 あやつの兵と秦国の兵がいれば冥府軍とて倒せるであろう。」




嬴政とゼウスが話す「あの男」とは誰なのか。



そんな表情をしながら首をかしげている虎白の元に酒が回っているのか、頬を赤くしている竹子が歩いてきた。



建国の祝いの席だと言うのに深刻な話ばかりをしていた虎白は可愛らしい酔い顔を見つめると、たまらず笑みが溢れた。



だがそれ以上にとろけているのはゼウスではないか。



体が雷となって蒸発しそうなほど竹子を見て甘い表情をしているゼウスは手招きをしてほろ酔い娘を膝に乗せようとしている。




「あ、あわわ・・・え、遠慮致します・・・こ、虎白!! 我らの国の名前は?」




嫌らしい視線を向けるゼウスをよそに愛する虎白に尋ねた内容は我らの国の名だ。



腕を組んで目をつぶる虎白は「国ってよお」と声を発すると、世界の国々について話を始めた。



それは人々が長い人類史の中で得た知識と失敗についてだ。



隣にいる嬴政ですら暴君と揶揄された過去を持っている。




「国を率いる者らが真っ黒に腐敗すると結局ダメなんだよな。 民を想って必死に生きても気がつけば黒く染まってたりするんだろうな。」




こくこくとうなずく嬴政を横目に虎白は「皇帝は白くないとな」と話した。



腐敗して汚い事を続ければ民に気がつかれ、揶揄されてしまう。



そして民の声を聞く事で自身が黒く染まっているのか、白いままでいられているのか判断できるというわけだ。



嬴政の真似でもしているのか、髭もない女の様な細い顎をすらすらと触ると両手を叩いた。




「大陸全土が真っ白な統治を行えば天上界は平和になるよな。 まずは俺達が白い統治を行おうって事で白陸しらおかってのはどうだ?」




酒の勢いなのか、それとも誰かの犠牲を見るたびに思っていたのか。



虎白は天上界全土を平和に染め上げると宣言したに等しい発言をすると白陸という国名を口にした。



驚く一同の顔を見て笑顔を見せる狐の神族の白陸帝国がここに誕生したのだった。

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