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天冥聖戦 本編 伝説への軌跡  作者: くらまゆうき
シーズン2 犠牲の果ての天上界
21/205

第2ー1話 虎白という男の正体

物語はシーズン2に入りました。


舞台は下界と天上界。


我が子を探すため、終わらない霊界での戦闘への活路を見出すため。


そして消えた記憶を思い出すために虎白は天上界に行く。

 対峙する虎白と、宝剣を持った男。長い髭を風になびかせて、睨み合っている両者の間には、殺伐とした空気が流れている。


「本当に、人間の体へ封印されるのか?」

「ああ......仲間を失った俺にもう生きる資格はねえ......」

「眼の前に最後の一人がいるが、俺はもう仲間じゃないのか?」

「............」


 これ以上、会話をすることはなかった。両者は、激しく刀と宝剣をぶつけ合い、男が倒れると、虎白は旅立っていった。

 眩い光と頭痛に悶える虎白が、ペガサスの馬車の中で思い出した記憶だ。やがて激痛のせいか、虎白が意識を失うと、竹子達も眠るように意識を失った。



 それからどれほどの時間が経ったのだろうか。


「起きなさい」


 意識を失う前に聞いた声だ。そうだ、この声は、天空から舞い降りた美女の声ではないか。

 竹子が、眉間にしわを寄せながら、静かに目を開けると、視界に広がっていたのは、今までに見たことのない景色であった。純白の建造物に、豊かな平原、大広間で目を覚ました一同は、立ち上がり絶景に息を呑んだ。


「ここは、私の神殿だ」

「し、神殿? あなたは?」

「私はアテナだ。 名前ぐらい聞いたことあるだろう?」

「ギリシャの......」


 天空から舞い降りた美女の名は、アテナだ。戦術の神として軍神と呼ばれる彼女は、戦いの才能に溢れながらも、慈悲深い感情を持っていることでも知られている。だが、性格は厳格で、法の裁きを行う守護者としても有名だ。

 そんな偉大なるアテナが、虎白を助けに来たというわけだ。驚きを隠せずにいる竹子は、口に手を当てたまま、言葉を失っている。


「驚くのも無理ない。 ここは、『天上界』だ。 天王にして我が父であるゼウスの治める国だ」


 アテナはそう自慢気に話すと、倒れている虎白に膝枕をして、頬を叩き始めた。それを竹子は、複雑そうな表情で見ている。

 やがて目を覚ました虎白は、アテナの顔を間近で見て目を見開いていた。


「久しいな鞍馬」

「あ、アテナか......」

「覚えていてくれたなんて、感激よ。 人間としての生活はどうだった?」

「俺が望んで行ったことだったのか......」


 虎白は、その衝撃をどうすることもできなかった。元は天上界で暮らしていた自分が、仲間の死を機に人間の体へと逃げたのだ。

 そのせいで、祐輝や新納を始めとする多くの犠牲を出す結果となった。虎白はただ、罪悪感で言葉を失っていた。しばらく愕然としてから、我に返ったようにアテナへ問いかけた。


「霊界で死んだ者はどうなる!? 天上界へは来ないのか?」

「あの世界で死んだ者は、消滅する。 これは父が決めたことではないわ。 元からそうなっているのよ。 人間の仲間は今頃もう......」


 その言葉を聞いた虎白は、頭を抱えて再び言葉を失った。彼らの死は全て自分のせいだった。虎白は、笹子の顔を見ることができなかった。


「す、すまねえ......なんで俺......」

「まあ気に病むな鞍馬。 元はと言えば、襲ってきた鬼のせいではないか。 そして叔父上のせいだ......」

「叔父上?」

「我が父ゼウスの兄であり、冥府の王ハデス叔父上よ」


 アテナの父が天王にして、天上界の最高神ゼウスだ。そして彼らは三兄弟である。長男のハデスは、冥府の王となり、次男のポセイドンは末弟のゼウスを支える補佐官として、天上界にいるのだ。

 そしてハデスの命令により、虎白は命を狙われ続け、多くの仲間を失う結果となった。


「ハデスは鬼まで従えているのか......」

「酒呑童子しゅてんどうしを覚えている? 鞍馬達を襲ったのは、鬼の総大将である彼の兵よ」

「なんで俺がそんな狙われるんだ......」

「霊界なんて場所に行くからよ......あなたが天上界から消えたことで、あなたの兵も霊界から撤収したのよ」


 竹子はアテナの言葉に首をかしげた。どうして虎白が霊界に行ったことで、仲間の皇国武士は消えたのだろうか。

 疑問を投げかける竹子の顔を見たアテナは、クスクスと小さく笑った。


「そうだったな。 霊界に降りた何よりもの理由は、記憶が消えるからだったな。 鞍馬は、消したい記憶が多すぎて、霊界に逃げたのよ」

「そ、それで、虎白と皇国武士になんの繋がりが!?」

「彼こそが、その皇国武士の皇帝だからよ。 主が天上界から消えて、霊界を守る命令が失われたからよ」


 アテナの言葉を聞いた竹子は、めまいがした。恋人になりかけていた神族は、誰もが尊敬して、頼りにしていた狐の神の軍隊である皇国武士の皇帝だったのだ。


「し、神族様ってだけでも恋仲なんて恐れ多いと思っていたけれど......ま、まさか皇国武士の皇帝陛下だったなんて......」


 あまりの衝撃に、竹子は言葉を失った。だが、こうして竹子らは天上界という新たな土地に辿り着いたのだった。

 多くの犠牲の果てに。

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