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天冥聖戦 本編 伝説への軌跡  作者: くらまゆうき
シーズン6 戦士の国エリュシオン
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第6ー8話 将軍らの相違

 一体感とは集団行動において、最も大切な事と言える。



特に何か目的へ向かっている時に、一人だけ違う事をされれば達成は遅れてしまう。



 百歩譲って一人だけ違う事をしているなら放っておけるだろうが、集団の中で喧嘩などが始まってしまえば歩みは完全に止まるというわけだ。



白陸帝国というはたから見れば、一躍有名になった強国と言えたが内情は不安点なものだった。



一番の要因は新規加入したサラやエヴァなどと、古参から白陸にいる甲斐や夜叉子らによる衝突であった。



 能力は優秀で皆が虎白からの信頼ある将軍というわけだが、個人間では考えの相違が生まれていたのだ。



そしてこの衝突の狭間で中立的な立場を取っていたのが、冥府から加入した魔呂やレミテリシアであった。



 今日もまた口論を始める彼女らを見ているレミテリシアは、困った様子で散歩へ出た。




「姉さんの統治力は凄まじかった。 将軍が口論している様子なんて見た事がない」




 偉大な姉の決定に従順に従っていた不死隊の将軍らは、アルテミシアの元で一致団結していた。



故に兵らも迷う事なく将軍の判断に従う事ができ、精強で一体感のある精鋭となり冥府に君臨していたのだ。



 天上界侵攻の際に民の虐殺を行った将軍は、アルテミシアの決定に反する結果を生んだ。



その者を容赦なく粛清しゅくせいする女帝は冷酷とも言えたが、その正しき判断こそ人の上に立つ者の義務というわけだ。



 発展していく白陸の街を眺めながら歩いている美しき黒髪の将軍は、偉大な姉の背中を思い浮かべていた。



彼女の体を目的とした、いかがわしい男達からの声を無視して歩く将軍はある場所へ向かった。



やがて聞こえてくる激しい喧騒は道場の中からだ。



 道場の入り口に立つのは、虎白に良く似た容姿の皇国武士だ。



「レミテリシア将軍、何用か?」

「魔呂はいるか?」

「中で武士と稽古しておりまする」




 戦神魔呂は複雑な白陸の内政や、軍事の政務には関わっていなかった。



彼女の任務は単純明快だ。



虎白に仇名す者を、圧倒的な武力を持って抹殺する事だけ。



 対してレミテリシアは冥府出身とは言え、かつて無敵の不死隊の大将軍だった経歴から白陸軍でも軍団を任されていた。



軍団と領土経営を任されている彼女は、自身が姉から授かった統治方針に従っている。



 しかし近代戦闘や、領土内の施設発展に対して激しい議論を繰り返す将軍達に嫌気が差して魔呂の元へ逃げてきたというわけだ。



武士と激しい稽古を終えた魔呂は、小さな体から流す汗を拭きながら笑みを浮かべていた。



「いいなお前は」

「毎日楽しいわよ。 武士はとても強いから良い鍛錬になるわ」

「私は楽しくないぞ。 毎日口論ばかりで疲れた」




 疲れた表情で魔呂の隣へ座ると、ため息をついていた。



将軍らの間で行われている議論は様々だった。



冥府が衰退した今、軍事の発展よりも領土内の発展に務めるべきだと話す夜叉子ら古参の将軍と、近代戦闘を取り入れて激しい訓練を直ぐにでも行って、他国よりも優位性を保つべきだと話すエヴァやサラといった新参の将軍だ。



 だが古参と新参の口論だけではなく、古参同士の甲斐と鵜乱などの意見の相違もあった。



つまる所、一体感はまるでないというわけだ。



レミテリシアはその様子に疲れ果て、議論を放棄してこの場に来た。




「大変ねえ」

「何か協力してくれないか? 議論しているこの時がもったいない」




 虎白が北側領土へ向かった事で、竹子らが代理で国家方針を定めていたが将軍達の意見の相違はとどまる事を知らなかった。



魔呂に相談するレミテリシアは、こうしている今も冥府軍は再戦に向けて兵力をかき集めているのだと話している。



 その言葉に何度もうなずく魔呂も、かつて冥府にいた事から冥王ハデスによる異常なまでの天上界侵攻の執念を考えると、再戦を挑みに現れるのはそう遠い話ではないと考えていた。




「虎白ったら人の国を助けている場合じゃないわよね」

「ああ・・・どうせまた仲間を増やして戻ってくるさ」

「仕方ないけど恋華さんに相談してみるのがいいわね」




 虎白が不在の今では竹子が白陸の政務を行っているが、古参の彼女の意見は甲斐や夜叉子らに似ている。



新参のエヴァやサラの不満は募る一方で、埒らちが明かないというもの。



 状況改善を行うには、恋華を虎白の代理とするべきだと魔呂は話した。



しかしその言葉にレミテリシアは直ぐにはうなずかなかった。



「竹子の顔を潰す事にならないか?」

「中立な立場の神族が決定するだけよ」




 正室を自称している恋華を、政務に関わらせるとなれば側室であろうと誰よりも虎白を愛している竹子にとっては都合の悪い話ではないかと心配していた。



しかし魔呂は笑みを浮かべたまま、どこか余裕すらあった。



 レミテリシアは仕方なく恋華に話しを持っていく事にした。



そして魔呂は武士との稽古を中断して、将軍らの仲裁ちゅうさいへと赴くのだった。

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