09,ニーハイを沢山買ったそうです。
今回はホノボノ回ですが、自分の性癖も垣間見えてるかもです。
ここはシエラ市最大の通り、アダムス通りだ。主に日用品を市場形式ではなく、店舗を通して売買している。やはり人間種の数は少なく、通りにいるのは、ホブゴブリンを始めとする魔物や、亞人たちである。とは言っても、この通りを歩く者は皆顔が活き活きしている。まさに平和を具象化したようなものだ。
日用品。例えば、衣服、食料品、はたまた骨董品や冒険者用の武具までもが売られている。この街で生活するのに不便は無さそうだ。
俺たちは衣服を取り扱う店を片っ端から訪れた。特に10代の女子が喜びそうなオシャレな店を中心にだ。ま、特殊な性癖をもつ中年男性も好きそうな店でもあるが、それぞれの店には、選ぶのが困難な程の多様な衣服が揃えられていた。まさか、自分が女物の服を選んで着ることになるとは皆目予想もしていなかったが、これはこれでありがたくこの貴重な機会を有効活用させて頂こう。
ローズはこういったオシャレな服が好きらしく、俺を着せ替え人形としてロックオンしているようだ。鋭い眼光をこちらに向け、どう調理しようかと息を切らしているのがこちらにもわかる。
「リエラちゃぁぁぁん！」
俺はローズに声をかけられ身震いする。
「まずはスカートを買いましょうね？さっき空間収納が欲しいって言ってたしねぇ！」
「お、おう...」
「そうね.....これなんかどうかな？あ、これも良い！これも..これも...」
「ちょ、それ派手すぎやしないか？なんかヒラヒラしてるのが付いてるし...」
「いいの！特にリエラちゃんは可愛いんだからこういうの絶対似合って！ね？試着してみない？ちょっと男子たちはそこで待ってて！中覗いたらぶっ殺すから。あ、あとリロードさんもここで待ってて。」
「わかった」
俺は強引に引き摺り込まれ、試着室の中にローズと二人きりとなった。
入るや否や、
「じゃ、脱いで」
「？！」
「女子同士なんだから気にしない気にしない！」
ローズは笑って誤魔化すように言う。
中身おっさんなんですけどね☆
「な、なあ。どうせなら候補のスカート全部買ったらどうだ？大金も手に入ったことだし、変えの物があった方が良いでしょ？」
「それもそうね...」
と、ローズは舌打ちしながら悔しそうに言う。
「じゃ、じゃあ替えのが必要なんだから上着とか、ズボン、靴、靴下、そして...クフフ...下着なんかも必要よねえ？」
「ぐぬぬ...?!」
「取り敢えず今ここにあるスカートは買うの決定ということで...まずは靴下からいこう！」
俺たちは一旦試着室から出て、靴下を選ぶ事になった。
「そうね.....やっぱりスカートと組み合わせるならニーハイが良いわよね。この組み合わせだったら男たちも自分の息子抱えて悶絶する事でしょうし。」
「ちょ、ローズ！言動もおかしくなってるよ！」
ローズは俺に構わず暴走を続ける。
「これなんかどうかな？」
と、ローズは今履いてるニーハイを無理やり脱がせ、次々と候補の物を履かせる。全く俺の威厳が崩壊するではないか！ま、まあニーハイは俺....つまり私の性癖にフィットするから良いんだけどね...（笑）
最終的に黒のニーハイを5足程買う事になった。
こうして、俺は上下の服をそれぞれ5セット程買う事になった。そして最後に残った下着選びが始まったのだ。
「クフフ...リエラちゃんの下着選び....なんだかゾクゾクするわ」
犯罪の匂いしかしない。
それに混乱してるのか、口調も不安定だ。
「そうね...まずは試着室でスリーサイズを測ってカップを調べて...ブラもこのデザインが良いねぇ。ささ、試着室に戻りましょ？」
「お、おい！や、やめろーーーー！！」
男衆が合唱し、連行される俺を見送っているのが見える。
「さてさて、まずは採寸しましょうね！」
そうして巻き尺を取り出したローズは採寸を始めた。
「ふむふむ上から・・・・・！？クフフフ、Cカップね。ちょうどいい大きさだわ。巨乳でもなく貧乳でもなく。ちょっと待っててCカップのブラ持ってくるから！あ、あと下も持ってくるね。」
さっきから理性が吹っ飛んでしまっている俺ではローズの言いなりになるしか術はない。
「これなんかどうかな？」
「う、うん。」
「わあ！いい感じじゃん！」
これ以降のやり取りは割愛するが、まあそんなこんなで何着かそれぞれ買いそろえることにしたのである。
「はあはあ.....もう天に召されそう。本当にリエラちゃん可愛いんだから！しかも恥ずかしがってるのもまたかわいいし！」
「な、なあリーク、なあローズは普段からあんな感じなのか？」
「いや。今日は変なスイッチ入っちゃったみたい。」
俺は今日買った大量の衣服が入った袋を両手に下げている。一体何店舗回っただろうか？前の世界で王だったころは、こうして誰かと市中の店で買い物することなんてなかったから結構楽しかったがな。ロースの変態ぶりにはドン引きだけど。
「リエラ様、そろそろ夕飯にされてはいかがでしょうか？日も暮れてきましたし。」
「うむ。そうだな。どこか今日の宴をするのにふさわしい店を探してくれないか？リロード。」
「それは喜んでさせていただきますが....そろそろ今の肉体も持ちそうになく、悪魔の姿では第2位階の者が多いこの周辺では騒ぎになりかねないかと具申いたします。」
「それもそうだな。では何か策を考えないとな・・・」
精神生命体である悪魔は通常、拠り所となる肉体を媒介としてこの世界に魔界からやってくるのだそうだが、拠り所なしの状態では一日しかこの世界に存在できないのだそう。さて、いちいち死体を探してはきりがないので、できれば本体のままでこの世界にいるのがいいのだが、何かいい策はないものか？
・・・・・第４位階に属する精神生命体は束縛なくこの世界に存在できる.....
便利なものだ。自然と解決策を脳が提示できるようになっているチート機能は。自分で言うのもなんだが、何でもありだな、神から与えられた能力とやらは。
では、第３位階であるリロードは第４位階に昇格なんてできるのだろうか？
・・・・・第４位階以上のものを１０体倒す....
なるほどな。今すぐにはできないが、第４位階への昇格も視野に入れておいたほうがいいな。
「リロード、どうやら当分の間は拠り所が必要不可欠みたいだ。店を探すのは大丈夫だから、しばらくは透明化して、俺の背後に隠れているのがいいみたいだ。。拠り所も必要ないからな。今度第４位階へ昇格させるからそれまで我慢してくれ。」
「な、なんと！？一悪魔である私めにそこまでご配慮なさっていたとは！このリロード、より一層リエラ様のためにもこの身をささげる所存であります！」
「お、おう」
こんなこと言われたの初めてだぞ？
「さ、さてと！どうしよっかなあ。まあその辺適当にぶらついてから決めようか。」
「「「さんせーーい！」」」
「御意！」
日も暮れ、街の明かりが灯り始めた。もうすでに宴会を始めている者もいれば、一人おしゃれに酒を飲む者もいる。しかし、そこに人間種の姿はない。人間種はこの華やかな空間に居ることさえ許されないということだろうか？そもそも人間種には奴隷という道しかほぼ残されていないので、このような自由はないのだろう。華々しい空間も、人間種の犠牲の上に成り立っているということのようだ。それに、これでは俺たちがどの店に入るにしても完全にアウェーではないか？
まあ周りがどう思おうが関係ないがな。
「なあ皆、この店なんかどう？」
ラリエルは肉料理の店を指さす。やせ型ではあるが、食いしん坊のラリエルはどうしてもたくさんの肉を食べたいらしい。
しかしそこには【人間種お断り】と書かれた看板がある。
「ラリエル、やりおるな！」
ラリエルは鼻を高くし、エッヘンと胸を張る。
「あえて人間種お断りの店に入るなんてなかなか面白いことになりそうだな。」
「ああ！」
「まあこっちにはリエラがいるんだし、何とかしてくれるさ！」
「人任せとはひどいな、リーク！お前リーダーだろ！」
「まあいいじゃん！ね？」
こうして俺たちは普通に食事をとるだけなのに、戦闘態勢で完全アウェーの店の中へと入ったのだった。
お楽しみいただけたでしょうか？
次回は波乱になる模様なので、お楽しみに！
感想、ブックマーク等よろしくお願いします。
