06,冒険者の初仕事だそうです。
スライムの被害に遭っていたのは、どうやら人間の村の様だ。俺は目的の村に到着し気付く。村は荒廃し、作物がとれないせいか、飢饉や疫病といったものが蔓延っているようだ。どうしたものか。人間の住むところはどうしても陰気な雰囲気が漂っていると言わざるを得ない。
「ああ、よく来てくださいました、冒険者の皆様。なかなか討伐に来てくださる方が居ないもので。」
「ガキじゃないか....またどうせパーティ全滅だろう。」
など俺たちに投げかけられる声は様々だ。
他三人は歯噛みする。
「で?スライムがよく出現する地帯は?」
リークが村長と思しき初老に尋ねた。
「この村の南の外れによく現れます。」
「そうですか。では早速そちらに行ってみます。」
「どうかお気をつけて」
「はい。」
パーティの代表はやはりリークが適任だな。
俺たちは村の南の外れへと向かう。
三人は緊張した面持ちだ。
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歩き始めて暫くして俺は異変に気付いた。
かなり歩いているはずなのに一向にスライムが出現しない。
魔素が充満しているのは感じ取れるのに何故だろう。
「ちょっと待って皆んな、何かおかしくない?」
俺は三人に問いかける。
「おかしいって何が?」
とラリエルは聞く。
「ここら辺魔素が充満してるのに一向にスライムが現れないわ。むしろこの濃さだとスライムより上位の魔物が現れる可能性があるわ。」
「魔素の濃さって分かるもんなのか?」
「少なくとも私は感じるわ」
「マジか」
「でも一体どうすればいいのかな...」
ローズは心配のようだ。
「スライムより上位の魔物がいても問題ないわ。----------------?!皆んな隠れて!」
「どうしたの急に?!」
「いいから早く!そこの岩陰に」
俺はスライムとはまったく格の違う魔物が接近するのを感知した。
折角仲間になったというのに死なれては困る。
なんとか三人を守らなくては。
俺たちは岩陰に隠れて息を潜める。
一体何が接近して来るのだろう。
俺はこの世界に来てから会った魔物なかで、一番強い魔物と対峙するようだ。
やがて黒い物体が此方へとやって来る。
体長は俺らと然程変わりないが、オーガやギルドにいた魔物連中とは格が違う。
ーーーーーーーー悪魔か?!
俺は直感で分かった。
《いい?三人は岩陰に隠れて、アイツに絶対見つからないようにしてて。》
俺は小声で三人に指示した。
《リエラ、アイツは一体?!でも見た感じめちゃくちゃ強そうだぞ?!》
《ああ、悪魔のようだ。》
《悪魔?!初めて見たな。って感心してる場合じゃない!リエラどうする?!》
《私が相手するわ。》
《OK、りょうかーーーいいい?????!!!!》
《何か問題でも?》
《いや、問題も何も無茶すぎだよ!それに階級の差が大きすぎる》
《それは問題ないわ。そういえばラリエル、私の実力を確かめたいって言ってたわね。》
ラリエルは怯えながらも小さく首を縦にふる。
《いい機会だから、私に相手させて。それに私は確かに人間種ではあるけれども階級は第8位階よ。》
《リエラ、な、何言ってんだ?ちょっーーー行っちゃダメだ!リエラ!》
俺は忠告を無視し、岩陰から悪魔の前へと対峙した。
悪魔を倒したら報酬は幾らくらいになるのだろうか。
ま、これで当分の間お金に困らない事は確かだな。
さ、まずはあの悪魔に敵対心があるか確かめるとするかーーーー。
悪魔は俺に目を遣る。
余談だが、この世界では階級によって強さがランク付けされるわけだが、強さに応じその者が発するオーラも変化するようだ。
言い換えれば、その者が保持する魔素量も変化し、人間には無理だが、魔物はたいてい対象の魔素量が分かるようだ。
俺を見てもギルドの連中が、俺のことを見下すことができたのはなぜだろうか?
オーラ、魔素量が強すぎる者の周辺にいる者は、高濃度の魔素量が故に狂化してしまう。
考えられる理由。
俺のステータスにある「上限突破のため表記不可」のもつ特性の一つとして、周辺の狂化防止のために自分のオーラを制御しているというのが俺がしばらく考えて出した推論だ。
まあそれは置いといて俺が今向き合わなければならないことは、目の前の悪魔、についてだ。
さてどうしたものか。
まずこちらにとって敵かどうかの見極めが先決だろう。
「ん?どうしてここに人間が?見たところ冒険者のようだな。貴様、どうしてここに?」
悪魔から話しかけてきた。
「スライム討伐に来た。最近スライムによる農作物への被害が大きいと村から依頼が来たみたいでな。」
「ほう。」
「しかしスライムが目的だったんだが、悪魔が現れたのは想定外だったがな。」
「その割には第3位階の悪魔を前にして平然としているな。」
「まあな。ところでどうして貴様はここに?」
「貴様?ずいぶんと目上の者に対して無礼な奴だな。まあ良い。我は精神生命体であるが故いつもは魔界にいるのだが、退屈でな。さっきちょうどいい死体を見つけたから憑依したのだ。」
「ほう。」
第3位階。この世界にきて一番上位の種族だ。
これより上位となると生きているうちに一度遭遇するかどうかというレベルだそうだし。
この世界にはいろいろと謎が多い。
まずこいつが今言った。魔界とは何かだな。
こいつから情報を得たいところだな。
「ところで貴様はこの世界には詳しいのか?」
「?------ああ。少なくともこの世界の理全てに精通していると自負しているがな。」
「ならちょうどよい。」
「何がだ?」
「貴様にはこの私リエラ=ブロッサムの部下としてこの世界を案内してもらいたい。」
「ははははははは!笑止。人間が何を言う。それにしても面白い者がいたものよ。これだから下界は愉快なのだ。いいだろう。ただし条件がある。貴様がこの我を部下にするのにふさわしいか見極めさせてもらうぞ。」
「それは構わないが、どうやってだ?」
「単純だ。我を死ぬ寸前までに追い詰めることができたら認めよう。だが我は精神生命体だ。肉体を得たとはいえ物理攻撃は無効だぞ。」
「いいだろう。だが死んでしまったらその時は許せ。」
「ガハハハハハハハハハハハハ、実に愉快。」
悪魔は腹を抱えて嘲笑する。
「では始める。」
なーーんて勢いで言ってしまったが正直、即死魔法しか今まで使ったことがないから加減が難しい。なにかちょうどいい魔法はないだろうか?
ーーーーーー第7位階魔法「クリティカルステージ」というのが適しているのか。
自然と考えが浮き上がってくる。
これも第8位階に属するがゆえに、覚えのない「経験」というものが備わっているのだろうか?
全く便利なものだ。
「第7位階魔法『クリティカルステージ』発動!」
俺は魔法を展開する。
俺の足元に巨大な魔法陣が形成された。
即死魔法は魔法陣がほんの一瞬しか形成されない一方、そうでない今展開している魔法などは魔法陣がちゃんと形成されるようだ。
しかしこのコバルトブルーの魔法陣は実に俺の感性を刺激するものだ。
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悪魔は思う。この人間実に面白い、と。
ふつうは悪魔に対し人間は青ざめることしかできないものだが、この少女は平然としている。
なんだこの醸し出される絶対的自信。
なにか奥の手でも有するのだろうか?
まあこの戦闘で見極めるとするか、と悪魔は人間に攻撃を仕掛けた。
はずだった。
今自分が目にしているもの。それはこちらを見下ろす人間の少女。横向きに見える。むしろ世界が横向きになって自分の網膜に像を映している。いまいち状況が把握できない。たしかに攻撃を仕掛けたはず。だがどうして今自分は地に伏しているのだろうか?それになんだこの全身の激痛は。今までこれほどの痛みは経験したことがない。物理攻撃を食らったわけでもないのに。それに・・・意識が遠のいていく。
まさかこの私が追い詰められているのか?むしろもうすぐ死ぬと本能的に悟っているーーーーー
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また次回もお楽しみに!