キミはいつも窓の外を見ている。
ばりばり初心者が書いた日常
キミは、いつも窓の外を見ていた。
君と初めて話したのはついこのあいだ。
先生から君の課題プリントを回収してこいと言われたのがきっかけ。
「あの、昨日のプリントまだ出してないよね?」
「…ん、ほんとだ。はいこれ」
「あ、ありがとー」
君は私がプリントを回収した後、またいつものように肘を立て、手を顎おきにして窓の外を見た。
窓側の席で一人、ポツンと一人の世界を作っている君を、皆いないかのように毎日を過ごしていることが私は悲しい。
キミはちゃんといるのに。
それに君は頭がいい。聞いている授業の方が少ないはずなのに、いつもテストの番数は上位だ。だから先生もキミがぼーっとしててもないも言わない。
私はずっと不思議に思ってる。
何も関心の無さそうな君、勉強にもやる気のなさそうな君。
もしかして、家に帰ったらガリ勉してるのかななんて考えてしまう。本当に有り得そうだ。
それにいつも窓の外を見て何を考えているんだろう。
ただ世界が広がっていて、鳥が飛んでいて、車が走っていて。
それほど面白いものなのか。
「あ、ねえ」
「わっ!な、なに?」
君に話しかけた日の放課後、私はいつも通り帰ろうと自分の鞄を手に持つと、突然君に呼び止められた。
君は何故か焦っていて。
「まだ、帰んない方がいいんじゃないの?」
「え、なんで?」
「…んー、なんとなくだけど、あと5分でもいいからここでいよ?ね?」
こんなにも長く、君と話す時が来るとは思わなかった。
とりあえず私は困惑しつつも君に言われた通り自分の席に座って、5分が経つのを待つことにした。非常に、暇だ。
「…お前ってさ。面白いの?」
「へ?」
いきなり聞こえた言葉に、私は周りをキョロキョロと見渡す。
私以外に人がいないことから、私に言っているんだと自覚した。
「面白いって、どういうこと?」
「生きてて楽し?そういうこと」
「ど、どうだろう」
いつものぼんやりとした表情はどこに行ったのか、少し口角を上げて問う君は何だか楽しそうだった。
「どうだろう…って。楽しくねぇの?」
「き、君こそ楽しいの?いつも窓ばっかり見てさ」
「……ああ、窓の外は楽しいよ。すごく、物凄く。けれど、生きるのは楽しくないな」
なんて、矛盾している言葉を並べる君。何故、そんなに怪しげな笑みを作るのだろうか。私にはわからない。
「例えば、ほら。今窓の外を見てご覧。あの鉄筋、今にでも落ちそうだろ?」
「え?ほんとだ…それがどうしたの」
「さっき、俺がもう少しここにいろと言ってからもう何分経つ?」
「えーっと、3分、くら」
私が言い終わる前に、窓の外から聞こえた誰かの悲鳴と何かが落ちる音。
私は思わずこの光景に固唾を飲んだ。
私がもし、君の忠告を聞かずに学校を出ていたら…。
あの道は私がよく通る帰り道だ、もし、もしも。
もしも私があの道を通っていたら?
「な?面白いだろ?」
「…っ」
「窓の外を見てるとな、色んなことが見えてくるんだ。そこを通る人の表情、町並み、車、鳥に犬。全てのものがそこに存在する限り、この先未来何が起こるかわからない。ドキドキするんだ、予想して当たったら嬉しくてたまらない。さっきだってそう。お前が出ていってあそこを通る頃、落ちるだろうと予想した。そしたらなんとあたった、嬉しかった!」
はあはあと、らしくもなく息を乱しながら君は語る。
なんだか不思議と、私も彼の感情に共感し嬉しくなった。ほかのヤツらの知らない君が知れて。
こんな子供のようにはしゃいでいる笑顔がしれて。
本当に嬉しいんだ。
「君は、そんな顔もするんだね」
「ん?ああ、俺だって人間だからな」
「あはは、そうだね。…君、さっき生きてるのが楽しくないって言ってたけど…、どうして」
そういうと、君はふっと笑って伸びをした。
「…なんかさ、親の言うこと聞いて、先生の言うこと聞いて、大人の言うこと聞いて。自由がないんだよ、縛られてるみたいなんだよ。勉強出来なかったら親に怒られるし、俺がいうこと聞かなかっても怒られるし、何も、面白くない」
「…じゃあ、今生きている意味は?」
「…窓の外が好きなんだ。別世界のようで、俺が関わらない世界で何かが起こっているって思うと…。何が起こるかわからない、ガラス1枚挟んだ世界。それを見ることが今俺が生きている意味」
なんで、私にそれを言ってくれたのかわからない。
話したことなんて今のを合わせて2回目の私に、キミの考えを教えてくれた理由なんて、きっと成り行きだったから、で済まされる。
それでもいい、それがいい。
キミは、いつも窓の外の世界を見ている。
.
窓の外は不思議でやまないですね。って