平和な夜
白沢先輩の家に泊まりに行った日の事。
時計を見ると、時刻は6時半。
夕飯ができたと呼ばれてリビングに移動する。
テーブルに並べられた手料理を見て、僕は驚いた。
テーブルに並べられたものが、僕の好きなものばかりだったからだ。
席につき、料理を口にすると、どの料理も美味しくて箸が進んだ。
「ほんとに、それ好きだな」
「はい、嬉しいです」
スパゲティーを頬張る僕を見て、白沢先輩が嬉しそうに、だけどちょっと呆れたみたいにそう言った。
「こんなに美味そうに食べてくれるなら、俺も嬉しいよ」
自分のものよりも大きくて温かい掌が僕の頭を何度も撫でていく。
まるで、飼い主に可愛がられている子猫の気分だ。
それから20分ぐらいして、なんだか眠たくなってきた。
瞼が重くなり、首がカクンと小さく揺れる。
「章一、ベッドまで連れてってやろうか」
僕の状態を理解したのか、白沢先輩は僕をおんぶして2階の部屋へ連れて行った。
僕の部屋と同じくらいの広さの中には、机とベッド。
床にはスポーツ雑誌と漫画と鉄アレイがあり、壁にはサメが描かれた絵画が飾られていた。
丁寧にベッドに下ろし、薄手の布団を僕の首から下に掛ける。
天国みたいに、フワフワしてて気持ちいい……。
「おやすみ、俺の大事な章一」
見つめ合ったまま微笑まれて、顔がカッと熱くなる。
白沢先輩の顔が迫ってきて目を瞑ると、頬に柔らかい感触がして、チュッと音を立てて離れていった。