件名:特殊能力授け隊報告書、康人への件
魔法があったらいいですよねー。
人間だれしも自分の特技や長所はこれだッってものがないとやってけない気がするよね。私はこれだッがない人に特殊能力をあげちゃう特殊能力授け隊の魔女よ!ウフ!さーて、今日はだいぶ神経質のノーこれだッな男に特殊能力をあげチャイナって社長に言われてるの!気づいたらどんなに驚くかしら?ぱらぱらP-!さてさてどうなるやらやら。
報告
やはり俺を見ている。
康人は気になった。向こうで楽しそうに会話している女子二人のうちの最近流行りの髪型をしている可愛いほうの女子が俺を見ている!
絶対見ている。康人は気になっている。絶対見ているはずなんだ。そう思いながら康人は町の大通りを通りかかる寸前のところにいた。
康人は町の大通りを通りかかる寸前のところで思い出した。自分には恋愛経験がないことを。気になった。かなり気になった。どうして俺は恋愛経験がないんだろうと。そして思い出したのだ。高校時代自分が男子校にいたことを・・・。康人はこんなどうでもいいことで悩むなんて俺はなんてフッ・・・いやそんなことどうでもいい。悩んでいる暇があったら町の大通りに入ろうではないか!
町の大通りは賑やかだった。クリスマスだというのにサンタクロースがティッシュ配りなんかしている。イルミネーションも鮮やかで、いつもの大通りとはまるで違うことを康人は気になった。しかしさっきの女子に比べれば気になるレベル8といったところかもな、だがどうしてなんだろう。クリスマスなのにサンタクロースにまるでゆかりがないじゃないか俺。そもそもサンタクロースはオーストラリアでは夏に来るみたいだし、俺もすっかり勉強しすぎてそのことが頭に刷り込んでいやがる。だからなのか?うーむ、そうではない。わかった、俺そういえばプレゼントもらったことないや、サンタクロースも煙突から入ってきたこともないしな。康人はティッシュ配りのサンタクロースに「散々苦労してください。」と助言をし、いつも弁当を買っている店の前に来た。
弁当屋の中に入るとやはりな、俺の好きな無料でついてくる楊枝付きの割りばしのにおいがした。このにおいがなきゃ始まらねえよな、康人は無料でついてくる楊枝付きの割りばしのにおいを堪能しつつ、メニューに目を配った。康人はここで信じられない光景を目にした。しょうゆ唐揚げがメニューから消え、塩唐揚げになっていたのだ。ここのしょうゆ唐揚げ一個を3等分にして一日を過ごしていた彼にとって耐えがたい屈辱であった。康人は怒りに震えレジの女の子を見た。だが康人はすぐ下を向いた。そして気になってしまったのだ!さっきの気になった女の子の髪型と同じだからこの子も気になるじゃないか!今流行りなのか、あの髪型は今流行りなのか?いや流行りだって知っていたじゃないか俺。博識、俺博識。落ち着けるはずだ博識ならば!康人は息を切らしながら憤怒の康人から我に返った。危なかった、我を忘れるところだった。俺の知識がこの俺の怒りを鎮めたのか。康人は女の子を横目で追いつつも気になりつつ、そして流行りの髪型を惜しみつつも弁当屋を出た。
怒りを鎮めたとはいえ康人は自分の心臓その他もろもろの負担を考え、大通りの真ん中のベンチの手すりに腰掛けた。ベンチには老人がスマホでゲームをしていた。ここで気になることは何もなかった。気にする行為すら疲れることだし、気に・・・この老人、おばあちゃんに似ている!おばあちゃんは俺がマイナス5歳の時に亡くなったって風のうわさで聞いたからな。だからここにいるはずがない。だが俺はなぜおばあちゃんの顔を知っている?そしておばあちゃんは何のゲームをしているんだ。気になる、気になって・・・キタ――(゜∀゜)――!!
おばあちゃんがやっていたゲームは戦国恋愛マツカゼだった。テレビでよくコマーシャルしていて、俺でも惚れそうな男性キャラクターが試行錯誤してプレイヤーをおとしにくるという・・・ん、まて。落としに、おとし、おと・・・お歳!これはおばあちゃん渾身のギャグだったのか!ありがとうおばあちゃん、そのギャグで俺はあと数か月やっていけそうだ。
おばあちゃんと勝手に別れた康人は恋愛の別れもこんな感じなのかなと想像しながらそろそろ大通りの終わりに差し掛かっていた。おばあちゃんの顔を知っていた謎は、頭の百分の一にも満たない大部分をもやもやさせた。しかし携帯電話の下四桁を9494にするには、康人としてはまだ物足りないものだった。ごめんね、おばあちゃん。おばあちゃんに謝ったところでなぜか康人の歩きは八の字を描き始めた。康人は、大通りの大木に頭ごと突っ込んだ。それはすごい衝撃でまさに天下分け目の関ケ原ぽかった。これがいわゆる康人ブレイクというやつか。なんと大通りで起きた出来事は康人の意識の別のところで康人の精神をピチョピチョ削っていたのか!気になることをやめない康人の勇気と信念が実を結んで康人ブレイク発生!康人は膝を曲げ、地面につく寸前で止まった。俺、そういえばだれよりも劣ってたんだっけ。で、いろいろなものが気になって仕方がなくなったんだ。おう・・・まい・・・が・・・そしてそのままの状態で意識を失った。意識を失う寸前、康人はなぜおばあちゃんの顔を知っていたか思い出した。写真で見たのだ。
起きるとそこは自分の部屋だった。頭を打ったせいか、体がずっしりとし、ピクリとも動かなかった。テレビがなぜかついている。テレビでは重大事件が起こったようで慌てたように臨時ニュースが流れていた。キャスターの女性の声が聞こえる。
「今日、大通りで人が木になる怪奇事件が起きました。現場の高橋さんお願いします。」
「へい、こちら高橋です。ごらんのとおり歩道の女の子と、ダーッ!!サンタクロースと、こちらのお弁当屋さんのレジの女の子と、光の速さでピカーッ!!こちらの老人が木になっています。いずれも木で作られた彫刻のようになっており、ヤバすぎます。現場からは異常です!!」
「ありがとうございました。今日は専門家の夫にお越しいただいております。この現象、どのように感じますか?」
「まさにファンタジーの世界ですね。愛人と後で見に行きたいと思います。」
「は?」
キャスターがキレたところでニュースは突如打ち切られ、だいすけの135時間クッキングが始まった。
康人は気になった。あのニュースキャスター、流行りの髪型だ。
報告書、今回の特殊能力「気になるものを木にする能力」。本人自覚なし。本人現在、木。以上。
魔法ってあるのかしらー。