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序幕 ここから始まる

*この話は、フィクションです*

*登場する人物・団体名は、架空のものであり、イメージ等の関係は、ありません*


しかし、ここでの主人公の思いは、きっと誰しも感じたであろう物であると、個人的には思っており、自分自身を知り、育てていく事で大人へなっていく過程を描けたら、と思っています。

一人ひとりが、ひらめく自分と明日を得る事が出来ますように☆


びゆゅゅゅんんん。


『むきょ〜〜〜〜〜〜〜』



少女は、声ならぬ悲鳴(?)をあげた。

突如発生した巨大つむじ風は、少女めがけて突進し、正面から襲い掛かった。

逃げるタイミングを逃し、視界に広がる理解不能な光景を呆然と見ていた。



「希誌〜〜〜〜!!!つかまってっっっ!!!」



友人の声が風の音にかき消される。

地面から土ぼこりが舞い、視界がぼやける。

少女は、めいいっぱい友人の声のするほうに手を伸ばした。一瞬、時間が止まったような錯覚がした。

しかし、伸ばした手は空をつかみ、少女は、ものすごい力で地面からひきはがされる。



「希誌っっ〜〜〜〜」



友人の叫びが遠くで聞こえた。意識が薄れ行く中で、少女は思った。



よかった・・・一人でなくて・・・名前を呼んでくれて・・・




********************************************************************************************************************

********************************************************************************************************************


少し湿っぽい土壌のにおいがした。


たくさんのものが混ざり合って刻一刻と変わるその匂いに不思議な安心感が心を満たす。顔や手に感じる土の感触、希誌は心地よく思った。俵か感触を暖かさが体を包む、長い間ずっとこうしていたような・・・そんな感じさえする。


「・・・あ・・ても・・・か・・・」

「い・・・は、・・・・・・です・・・・」


かすかに、会話の切れ端を耳が拾った。


声?なにを話してるの・・・



ぼんやりした意識が次第にはっきりしてくる。ゆっくり開いた瞳からぼやけた視界がじんわりと入ってくる。もやに隠れていたが、人陰らしきものが写った。目を凝らす。次第に、視界も開け、視界に地面の茶色と人の足、そして上からこちらを覗く二つの視線が合った。その視線から、自分が地面に倒れていることに初めて気がついた。体に気配を探って見る。どうやら、たいした怪我もしてないらしい。体をゆっくり起こしてみた。すこしふらつくが、これぐらいならすぐ納まるだろう。


私、何してたんだっけ・・・


その瞬間、友人の自分を呼ぶ声を思い出した。それを皮切りに、次々とスライドのように記憶の断面が浮き上がる。


土埃でかすれた腕

地面


瞬時に自分に起こった事態を飲み込んだ。

同時に、目の前の視線の持ち主と目があった。一人は、同じ年くらいの女の子。長い髪を頭の上からポニーテールにして、少し茶色の大きな瞳は、食い入るようにこちらを覗きこんでいる。もう一人は、20代ぐらいの長身の男の人。穏やかな表情は、敵意がないことをうかがわせていた。どちらも着物のような少し変わった服装をしている。


ここ・・・どこだろ???

着物???かな???ってことは、映画の撮影所???


この場に流れる沈黙に耐え切れなくなって、希誌は、少女に話しかけた。


「あの〜、すみません。駅までの道教えてもらえませんか?」


といあえす、駅までいければ家まで帰れるだろうと希誌は思った。旋風に飛ばされてしまったが、怪我もないみたいだし、なんとしても帰らなければならなかった。今日は、これから塾で現代国語のテストがあり、結果は親へと報告される。受験期中盤の成績は、今後の進路を決定する中で重要だ。特に、希誌は、現代国語の点数が成績の足を引っ張っているからここでのできぐわいで志望校など考え直さねばならい。無断で塾をサボったら、また母親からどやされる。塾嫌いな娘が難癖つけて休みたがるのを知っているからだ。希誌も、塾には嫌いだが、受験半年前のこの期に及んでそんなこといってられなかった。大学に入れなければ、道は、2つ。浪人かニート。どちらも決してよい将来とは、思えなかった。大学も入れれば何でもいいといった妥協もできず、実力相当、それ以上を望んでしまう。志望動機で考えているようなことを大学に入って本当にしたいかといえば疑問符が残る。自分は、ただ、時間をつぶすために大学にいくのではないか???自分の中での戸惑いや将来への不安、周りの流れに乗らないといけないという脅迫概念みたいなものが混沌と渦巻くなかで、それを考えないように、自分に言い聞かせながら勉強をしていた。ここで、自分の本当の気持ちに気づいてしまったら・・・・・気づかない振りを懸命にしている自分をどこか遠くから眺めながら・・・・


「ぎゃぁ〜〜、しゃべった!!!」


少女の反応は、希誌の想定していたものとはかけ離れていた。日本語を話して驚かれたのは、生まれて初めて言葉を発したときと学園祭でお化け屋敷をしたときの蝋人形役をしたと時だけだ。希誌は、唖然として硬直した。そんな希誌の反応を無視して、少女は、悲鳴(歓声?)をあげてはしゃいでいる。


かわいい顔してるけど・・・・変な人。

こういう人にはかかわらないのが一番。


希誌は、本能的に少女が尋常ならないことを察知し、かかわらないことに決めた。そして、携帯電話の存在を思い出し自分の通学バックを手で探った。幸い旋風に巻き込まれたのにもかかわらず、バックは2つとも自分のすぐ横に押していた。手で引き寄せ、中から携帯電話を引っ張り出した。電話をかけたが、そこには、通話圏外を示す『ツーツー』という音がむなしく響いていた。


け、圏外!!!


産業立国の日本で、屋外で圏外といえば、どんだけ田舎だよ!と心で突っ込みをいれつつ、OFFボタンを押した。まあ、自分が生きていて、携帯が壊れてないことだけでも十分幸運だったと思い直すことにした。携帯の機種だけでも馬鹿にならないほど高い。高校生の希誌に、壊れたといってほいほい買い換えられるものではない。しかも、先月機種変したばかりのカメラつきの携帯を1ヶ月もたたず壊してしまったら、母親の怒り心頭は、眼に見えてわかった。ただでさえ、最近受験で母親の気が立っているのに、これ以上刺激したくなかった。火の粉は、結局、自分に帰ってくるのだ。


しかたない。この変な人に聞くしかないか・・・


希誌は、覚悟を決めて、もう一度声をかけた。


「あの、ここどこですか?私、東京の新宿まで行きたくて、、、電車とか、、、、」


まったく、聞く気配のない少女のはしゃぎように、希誌の語尾は、空気の中に消えていった。だめだ・・・・。そう思い、希誌が立ち上がったその習慣、少女は、マリが跳ねたようにこちらを向いた。


「うごかないでっ!!!!」


突然の少女の叫びに希誌は萎縮し、石造のように硬直した。


「その円から出たらだめだよ!」


少女は、希誌の足元を指差して言った。その指が示す先を希誌の視線が追い、自分の足元まで来たところで、青白く光る円形の模様の内側に自分が立ってることに気がつた。それは、直径2mぐらいの円で、ところどころ模様(文字?)が書かれてある。こういうの魔方陣っていうんだろうな、と希誌は、思った。漫画や映画で出てきたことを思い出す。魔女などが使う魔法の一種で、その形状を欠くことで不思議の力を自在に操ることができる。希自身も押さないときに道端や公園にまねっこして書いて友達と魔女ごっこをして遊んだものだ。特に、希誌は、その遊びが好きだった。自分かもしその力を使えたら・・・と想像すると胸がわくわくして、自分も空想の主人公と同様に冒険しているようであった。その遊びが今、現実に自分の身に降りかかっている。希誌は、不思議な興奮を味わいながら、その青白く光る線を見ていた。


・・・きれい・・・・


「自己紹介するね」


少女は、少しいたずらぽく微笑みながら希誌し語りかけてきた。


「私、すめらぎ おさ。こっちは、輔三郎。すけさんって呼んであげて」


おさと名乗る少女は、一緒にいたもう一人も人を指差していった。


はあ?


希誌は、まったく話が見えてこない会話に、自分が何を言っていいかわからなかった。そんなことお構いなしに、おさは、話を進めた。


「ねえ、あんた、なんでここにいるのかわかんないけど。とにかく、来ちゃったものは仕方ないし、呼んだ人もわかんないんじゃ仕方ないよね」


何をいってるだろう??


希誌は、あまりの唐突な話の展開についていけていない。


「とりあえず、そのままでいて。私が、今、元の国に送り和えしてあげるから。ラッキーだよ、もし、その円から出てたら手遅れで帰れないとこだったよ。時々いるんだよね。なんかの弾みで着ちゃう人。まあ、戻ったらこのことはすっかり忘れてるから心配しなくてもいいよ」


ひとしきり、理解不明な言葉をはなち、おさは、次々に指を組み替えながら、なにやら呪文をつぶやきだした。そのとたん、うす青白く光っていた線が、急に力を取り戻したように光だし、希誌の視界も青白く染まった。急に、自分の存在が薄くなっていくのを感じた。自分がいるのかどうかわからなくなる。立っているのか、座っているのかそういう感覚が不確かになり、自分と他を分ける境界線が薄らいでいく感覚だ。


「なに?なに?なんなの?????」


希誌は、状況についていげす、力いっぱい声をふり絞った。


「大丈夫。もうすぐ全部忘れて元どうりに戻れるから」


おさは、やさしく微笑んだ。希誌は、自分の境界線が消える寸前で最後の力を振り絞って叫んだ。


「いやだっっっ!!!」


自分が消えていくのが嫌だった。自分が自分でなくなる感覚は、奥にある『無』というものを突きつけられるようで恐怖を掻き立てた。怖くて、不安で、耐えられなくて、何かに捕まって踏みとどまろうと無意識にした。無駄とわかるような絶対的な力に引きずり込まれているが、もがかずにはいられなかった。


青白い光は、あたりを光で埋め尽く、まるで小惑星ほど輝き、そして、一瞬にして消えた。


希誌は、一瞬意識が遠のいた気がして、必死で瞳をこじ開けた。ここで、あけなかったら自分が消えてしまう気がしたからだ。





「どうして?」




<2へつづく>


序章 どうでしたでしょうか????


始まりは、なんでも案外普通なものです。

例外なく、このお話もそうだと思います。

『するめ』のようにかめばかむほど・・・を目指して書いていけたら・・・と思います。


*呼んでいただけた方に心からの感謝を*



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